2018年07月20日 1535号

【みる…よむ…サナテレビ(490)/2018年7月7日配信 イラク平和テレビ局in Japan/国民議会選挙をどう思うか ―バグダッド市民に聞く―】

 5月12日、イラクでは国民議会選挙が行われた。しかし、この選挙でイラク社会が良くなる展望は全くない。選挙を前にして、サナテレビは民衆の立場でイラク社会を変えるにはどうしていくべきなのかをバグダッド市民に聞いた。

 まず、インタビューが行われた背景を思いおこしたい。2003年のイラク占領から15年もたっているのに、イラク社会は大きな問題を多く抱えている。水や電気がまともに来ない、社会サービスがまともにない、若者には仕事がなく多くが失業したままという状況だ。

 最初に登場する市民は「イラクの状況がまともなものではなく、人びとが立ち上がる必要がある。抗議行動を行うことは積極的なことだ」と指摘している。

 サナテレビのコメンテーターが語るように、社会を変えることについて世論は分かれている。「抗議行動による」と言う人もいれば「選挙によって変革がやってくる」と主張する人もいる。その背景にあるのは、「抗議行動」と言っても、イスラム政治勢力のサドル派(シーア派)やムスリム同胞団(スンニ派)が自らの勢力を増やすために米軍や政府に対して抗議行動を行ってきた経過だ。

 ある市民は「ムスリム同胞団が座り込みを組織するのが正しいと信じても、それで変革は起こりません」と断言する。実際にそうした諸政党は国会議員などの公職を得ても、市民の苦しい生活を顧みることもなく汚職に明け暮れている。

 「デモそのものは否定も肯定もできない」と言う市民もいる。単にデモなどの抗議行動を起こすのではなく、どういう目的を持って社会変革に結びつけていくかが重要ということだろう。

 サナテレビは「イラクで変革という言葉は人びとの団結である」と言っている。今回の総選挙は、実質投票率が33%以下で国民の3分の2が投票を拒否した。宗派主義勢力や民族主義勢力が投票所さえも支配している状況で、汚職だらけの政府を変えられないことが明らかだからだ。

 今、イラクでは、そうした勢力が実権を握って汚職を続け市民の生活を困窮化させていることに対し、特に若者が政教分離の政府をめざして立ち上がり始めている。サナテレビは、宗教や民族による分断ではなく、民衆の団結で社会を変えていこうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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