2018年07月20日 1535号

【国免罪の一審判決逆転をめざして 千葉原発被害集団訴訟 控訴審始まる】

 福島原発千葉集団賠償請求訴訟の第1回控訴審が7月6日、東京高裁で開かれた。集団訴訟では、千葉を除く群馬・生業(なりわい)(福島)・京都・東京の一審判決はすべて国の責任を認めており、「千葉地裁の不当判決を控訴審でなんとしても覆そう」と各地から約100人がかけつけた。

 意見陳述で原告側代理人の藤岡拓郎弁護士は、地震調査研究推進本部の2002年「長期評価」の信頼性を展開。「事故は回避できた。4つの判決からも千葉判決の誤りが浮き彫りにされた」。足立啓輔弁護士は、少額慰謝料の背景に避難継続の合理性につながる低線量被ばくの無視があると指摘し、「受忍すべき線量があるとしても、年間線量1ミリシーベルト以下と考えられるべきだ」と主張した。

 原告の意見陳述は飯舘村の男性。「9人の大家族の幸せな生活は事故で一変した。3か所にバラバラに別れ、両親はふるさとに戻れないまま亡くなった。村はフレコンバッグの山、放射能は高く、お店はコンビニとうどん店だけでとても復興とは言えない。そんな中で、福島市内に住む苦渋の選択をした。裁判長はぜひ村に来てみてください」と訴えた。

 これに対し、被告側代理人は事故の責任も被ばく問題もすべてあいまいにし、「事故は想定外」の結論を引き出すために「決定論でなく確率論の見方を」「絶対的安全性ではなく相対的安全性の考え方を」と主張。加害者としての反省は全く見られない。「中間指針に基づく損害賠償で十分」との見解を繰り返した。

 裁判後の報告集会で、弁護団事務局長の滝沢信弁護士は「中間指針以上は払わない、(裁判で争わず)ADRで大多数の人が受け取っている、との被告主張は許せない。仕方なく、いやいやながら受け取っているのを逆手に取るとは」と怒った。

 福武公子弁護団長は名古屋高裁金沢支部判決に触れ、「原発の当否は司法の判断を超え、政治的な判断に委ねるとして司法の役割を放棄した。千葉訴訟の一審も国の責任をただす司法の役割を果たさなかった」と“忖度判決”を批判。法廷で応援の意見を述べた生業弁護団幹事長の南雲芳夫弁護士は「被害を直視しろ、被害の裏には加害がある、全国が注目している、と言いたかった」とエールを送る。

 原告7人が紹介された。団長の遠藤行雄さんは「富岡町の自宅を取り壊した。すでに6名の原告が亡くなっている。責任逃れの態度を続ける被告に怒りがこみ上げた。限界に来ているが、原告に希望の光が射すよう決意を新たにした」。原告の一人は「国が原発を許可しておいて責任がないとは。裁判官は浪江町の小丸(おまる)と南相馬市の小高(おだか)をずっと間違えていた。その程度だ」と怒りをあらわにした。

 次回期日は11月16日。

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