2018年07月27日 1536号

【平和の敵 安倍―ドゥテルテ フィリピン民衆と連帯し 加速する軍事・経済連携NO】

 安倍政権によるフィリピン・ドゥテルテ政権への軍事・経済協力が加速している。

ODA、武器供与も

 2016年の円借款「フィリピン沿岸警備隊海上安全対応能力強化計画」で巡視船(全長44b、1000d級)10隻と高速ボート等の供与を決定し、3月までに5隻が就航した。陸上自衛隊ヘリコプターUH1Hの中古部品、海上自衛隊の練習機TC50も5機無償譲渡。フィリピンは初めての「防衛装備品」=武器無償譲渡先となる。

 昨年6月、千葉の幕張メッセで「海上防衛技術国際会議/展示会」が開かれた。米ロッキード・マーティンなどと並び日本からも三菱重工、川崎重工、新明和工業など軍需産業16社が参加。防衛省は日本の企業に対して防衛装備庁展示ブースへの出展を呼びかけた。展示会翌日には東南アジア諸国の軍関係者を対象にセミナーを開催。フィリピンを突破口に武器輸出を拡大しようと躍起だ。

 安倍は、17年1月のフィリピン訪問で南シナ海での連携強化を呼びかけ、「5年間に1兆円のビジネス機会を作る」と約束。11月にはドゥテルテ大統領の経済政策ドゥテルテノミクス≠フ目玉「メガマニラ圏地下鉄計画」を円借款事業として調印した。ドゥテルテノミクスとは、22年までに上位中所得国への転換をめざすとして3年で3・6兆ペソ(約8兆円)をインフラ整備に投入、雇用を生み出し貧困をなくすとするものだ。

 フィリピンにとって、日本はODA(政府開発援助)約473億jで援助全体の34%を占める最大の援助国(14年)。日本からの二国間ODAでも累計第4位となる。

 大規模なODA投入、武器供与に加え、ここ数年、自衛隊が米比合同演習に公然と参加している。グローバル資本の権益確保のために、経済・軍事連携が一体となって進行しているのである。

高支持率背景に人権抑圧

 16年7月、大統領に就任したドゥテルテは、麻薬撲滅を名目に8千人以上を法的手続きを経ることもなく殺害した。かつての独裁者マルコスの一族など既存の支配勢力やエリート層を取り込む一方で、共産党系勢力を農地改革相、社会福祉相、国家貧困対策委員長の3つの閣僚級職に招き入れ批判を封じて権力基盤を固めた。反政府勢力と和平交渉を開始し、一時は米軍を追い出すとも公言した。就任直後の支持率は91%に上った。

 しかし昨年、入閣していた左翼系閣僚は辞職に追い込まれた。農地改革相が進めていた22年までに6210平方`の農地を対象者に分配する方針は頓挫。契約労働をなくす政策も進展していない。

 中止を約束していた米比合同演習は、人道援助・災害救援・テロ対策などの演習に形を変えて復活。事実上米軍駐留を認める米比防衛協力強化協定も健在だ。昨年からはカマンダグ(海の戦士たちの協力)演習も始まった。

 ドゥテルテの正体があらわになってきた。超法規殺人≠ヘ人権活動家にも及んでいる。1月の税制「改革」で物品税が上がり、貧困層をはじめ市民の生活を直撃している。

 ドゥテルテは、新自由主義路線を踏襲し、規制緩和、民営化、労働者の非正規化をすすめている。フィリピンの社会学者ウォルデン・ベローは「大規模な超法規的な行動―法手続きなしの処刑―から始めて、市民的権利の侵害と権力奪取に至るという『オリジナル版のファシスト』だ」と批判する。

市民の反撃が始まる

 「超法規殺人をただちにやめろ」「マルコスを英雄墓地に埋葬するな」「税制改革は貧困層を苦しめるだけだ」。多くの市民、NGOなどが声をあげ始めた。7月のドゥテルテ支持率は69%に下がっている。

 2月、マニラでフィリピン、日本の市民の共催で行われたピースフォーラム(本紙1516号参照)には、多くの学生も参加した。フィリピン大教授ローランド・シンブランは「フィリピンでは、ファシズムが復活している。真理のために闘おう。人権を守ろう」と参加者に呼びかけた。

 このピースフォーラムの中心となった音楽家ポール・ガランが第48回平和と民主主義をめざす全国交歓会(ZENKOin大阪)に参加する。フィリピン民衆とともに日比軍事協力に反対し、戦争のない平和なアジアをめざそう。



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