2018年07月27日 1536号

【生活保護削減 国連も警告 生存権破壊する安倍政権 市民生活を窮地に】

 安倍政権は、10月から生活保護費を最大で5%も削減しようとしている。食費や光熱水費などにあてる生活扶助が3年間かけて段階的に減らされていく。生活保護利用世帯の67%が減額となり、前回の見直し(2013〜2015年)による平均6・5%減に続く削減攻撃である。

 今回の見直しでは、消費支出が最も低い10%の世帯(生活保護世帯は除外)における消費支出と生活扶助を比べて削減が決められた。所得が低下している現状は承知の上。まず削減ありきなのだ。

人権専門家が見直し要請

 国連人権高等弁務官事務所は5月24日、「『貧困層の社会保障を脅かす生活保護削減』国連の専門家が警告」と題した文書を発表した。そこでは、国連の人権専門家4人が「貧困層、特に障害者、一人親世帯、また高齢者の最低限の社会保障を脅かすものとして、日本政府に見直しを求め」「(削減は)貧困層が尊厳を持って生きる権利を踏みにじる意図的な政治的決定を反映している」と指摘したことを明らかにしている。

 国連人権専門家とは、特定の国における人権状況やテーマ別の人権状況について事実調査・監視を行う国連人権理事会の「特別手続き」に属している専門家である。4人は、安倍政権の生活保護削減攻撃を批判しており、たとえば「貧困層の人権への影響を慎重に考慮せずに採択されたこのような緊縮政策は、日本の負っている国際義務に違反している」と厳しい。

 保護基準見直し作業で消費支出が最も低い10%の世帯との比較が行われた。生活保護を利用する資格のある人のうち現に利用している人の割合(捕捉率)の検証もなければ、制度利用者の意見を聞く場も保証されなかった。

 厚労省の担当課は「主観を排した科学的検証をした」(2/15朝日)から利用者の意見は聞く必要がない、と言う。当事者をぬきにして何が「科学的」か。これは国際基準である政策を進めるために当事者の意見を尊重する動きを反故(ほご)にする暴論である。削減を前提とした政治的決定でしかない。

 国連の警告文書は「欠陥のある方式に基づく受給額減額によって、日本はますます多くの人々を貧困に陥れることになる」と注意を喚起している。にもかかわらず、安倍政権は削減攻撃を止めない。

国連警告に抗議する独善

 同文書はまた、「この基準に基づいて決定される最低生活水準は、国際人権法で要求される適切な生活水準と合致しない」とも言及している。国連の正当な指摘と要請に対し、厚労大臣は「一方的な情報に基づく発表だ」として国連人権高等弁務官事務所に抗議する暴挙に出た。

 こうした対応は、持論以外は雑音≠ニしてしか受け取らない安倍政権特有の独善的姿勢であり、まさに恥知らずだ。

 国民生活基礎調査の推計によると、生活保護基準以下の所得(税と社会保険料を除外)で生活している世帯は705万世帯(2016年)であり、そのうち生活保護利用世帯は22・9%の161万世帯にすぎない。当然の権利である生活保護を受けていない膨大な世帯の存在こそ問題だ。最下位10%の世帯との比較では基準は下がる一方となる。

制度改悪の影響

 貧困化が止まらない。生活保護世帯が24年連続で過去最多になっているのはその象徴だ。とりわけ高齢者世帯の受給が急増している。預貯金の喪失、病気、配偶者の死亡などにより年金収入だけでは最低生活を維持できなくなっているのだ。高齢化が進む今後、生活保護利用者が増えることは間違いない。

 安倍政権は、生活保護利用者を減らすためにこれまでさまざまな攻撃を続けてきた。そして、保護基準引き下げにまで手をつけてきた。問題はさらに深刻化する。生活保護基準が年金や就学援助など47の制度に連動しており、それら制度の要件の悪化につながるからだ。安倍政権は社会保障費を削れるだけ削ろうと画策しており、それは貧困化に拍車をかけ生存権を破壊する。

 生活保護費削減は社会保障制度全体に悪影響を与える。すべての市民に対する攻撃だ。

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