2018年07月27日 1536号

【安倍政権の豪雨対応/酒盛り、カジノ優先も「問題ない」/無責任、人命軽視、それが安倍】

 「政府一丸となって発災以来、全力で取り組んできた」。西日本を中心とする豪雨被害への対応について安倍晋三首相はこう語った。11万人に避難指示が出た夜に首相が酒席を囲んでも、被害が続いている最中にカジノ法案の審議を強行しても、初動対応に問題はなかったというのである。何という人命軽視―。これが安倍政権の本性だ。

「誤解」と強弁

 気象庁が「記録的な大雨の恐れがある」として厳重警戒を呼びかけた7月5日の夜。災害対策の陣頭指揮にあたるはずの安倍首相は議員宿舎で酒盛りに興じていた。「赤坂自民亭」なるこの宴会、自民党の中堅・若手議員が定期的に開いている懇親会で、安倍首相が参加したのは初めてだという。9月に予定されている自民党総裁選をにらみ、票固めをしておきたいとの思惑があったのだろう。

 バカ騒ぎの様子を嬉々としてアップした西村康稔官房副長官のツイッターはたちまち炎上した。こんな人物が安倍政権では「防災・危機管理のエキスパート」なのだそうだ。「おわび」の言葉がまたひどかった。いわく「大雨による災害発生時に会合をしていたかのような誤解を与え、多くの方が不愉快な思いをされた。反省している」(7/12参院内閣委員会)。

 「誤解」とはどういうことだ。「会合は人的被害が出る前のこと。だからセーフでしょ」と言いたいのか。バカげている。世の人びとは宴会を開いたことだけに怒っているのではない。災害の初動対応が遅れに遅れたことを問題にしているのである。

人命より賭博が大事

 宴会翌日の7月6日。「首相動静」で確認する限り、安倍首相は何の災害対応もしていない。この日のうちに8府県で大雨特別警報が発令され、河川の氾濫や土砂崩れなどの被害が各地で起きていたにもかかわらず、だ。

 7日午前10時、豪雨被害への対応を協議する関係閣僚会議が開かれたが、わずか15分で終了。安倍首相は記者会見を行うこともなく官邸を離れ、正午前には渋谷の自宅に帰っていた。被害の拡大を伝えるテレビ報道をどんな思いで見ていたのだろうか。

 翌8日午前8時、非常災害対策本部がようやく設置された。過去の大災害と比べ、時間がかかり過ぎている。それなのに、安倍首相は「先手先手で被災者救援にあたってほしい」と語った。この時点で後手に回っているという自覚がないとは恐れ入る。

 7月11日から出発するはずだった欧州・中東訪問は中止となったが、官邸サイドは最後まで実現を模索していたという(7/10)。14日のフランス革命記念日にパリで行われる軍事パレードに、安倍首相は自衛隊の儀仗隊員とともに参加しようとしていた。それで非常災害対策本部の設置を渋ったのか。本物の戦争バカならやりかねない。

 さらに、野党側の「政治休戦」提案を無視し、カジノ法案を通すために国会審議を強行した。河川や道路の復旧を所管する石井啓一・国土交通相を国会に張り付かせ、カジノ解禁の意義を説明させたのである。「人命よりも賭博を優先か」と批判されても馬耳東風だった。

災害対策にカネ出さず

 「国防」には異常に熱心な安倍首相。「北朝鮮の脅威」を煽り、米国製の高価な兵器を次から次へと購入している。その一方で災害対策にはカネをかけてこなかった。

 愛知県岡崎市から岡山県の被災者救助に出動した消防庁の特殊車両がある。通称レッドサラマンダー。浸水地やがれきの上でも救助活動ができるように、東日本大震災の教訓から導入された。初配備は5年前。今も全国に1台しか配備されていない。

 購入価格は1台約1億1千万円(17年度補正予算で2台分が計上された)。たしかに高価だが、地上配備型ミサイル迎撃システム(2基2000億円)、欠陥輸送機オスプレイ(17機3400億円)などと比べれば微々たる金額といえる。それを安倍政権はケチってきた。

 避難施設のあり方にしても、自然災害をこれだけ経験してきた国なのに大きな改善はない。被災者はエアコン設備のない学校の体育館に詰め込まれ、床で雑魚寝というのが定番だ。その結果、劣悪な避難所生活で体調を崩し、死に至る事例が後を絶たない。

 災害や紛争時の避難所について、国際赤十字は次のような最低基準(スフィア基準)を定めている。「世帯ごとに十分に覆いのある生活空間を確保する」「最適な快適温度、換気と保護を提供する」「トイレは20人に1つ以上。男女別で使えるようにする」等々。紛争地域にも適用されるこの国際基準を経済大国ニッポンの避難所が満たしていないことは明らかだ。

 避難者には尊厳ある生活を営む権利があり、国家にはそれを保障する義務がある。世界ではこれが当たり前だが、日本政府の災害対策は違う。大前治弁護士が指摘するように、避難生活も生活再建も原則「自己責任」という考え方に固執している(現代ビジネス・7/10付配信記事)。

 「この国を守り抜く」と安倍首相は言うが、それは戦争国家づくりの方便にすぎない。本当は市民の命を軽く見ていることが、今回の災害対応でよーくわかった。

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 問題の「赤坂自民亭」で締めのあいさつをしたのは上川陽子法相だった。2日前に元オウム真理教幹部7人の死刑執行命令書に署名した人物が、執行前夜に「万歳三唱」の音頭をとっていたとは…。死神の所業と言うほかない。安倍政権の人命軽視体質がここにもあらわれている。 (M)



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