2018年08月03日 1537号

【市民が自治する自治体へ 世論と議会の力で給付型奨学金】

足立で段階的給付制へ

 足立区で画期的な変化がおこった。区がこれまで行ってきた奨学金事業は貸与型制度だったが、今後段階的に「給付型」へと移行することが打ち出された。

 議会でも現行制度の欠陥が多々指摘されてきた。足立区の育英資金貸付は、他の制度との併用を認めず、連帯保証人は2人必要とされ、募集枠高校大学各50人のところ、応募が少ない時では高校16人、大学15人などにとどまる年もあった。条件が厳しいことは与野党ともに指摘してきたが、根源的な問題は「奨学金を返したくても返せない」若者が増えている点にこそある。経済的給付策への根本的転換をすべきと訴え求めてきた中で劇的な変化となった。

 まず、第一段階として、現行の貸与制度は2019年度募集をもって終了となるが2016年度より一部償還免除制度が創設され、春に10人、秋に10人枠が作られた。

 第二段階として、昨年度より大学等入学準備金支援助成制度が創設され、大学等入学準備金としての借り入れ返済助成として15万円を200人へ助成する制度が始まった。

 第三段階として、今年度秋より奨学金返済支援助成制度が始まる。国の第一種奨学金利用者に対し、半額(最大100万を上限)の返済助成を支援するもので、対象は40人規模だ。

 入学準備金助成は全国初の大型事業、半額返済助成は都内初の事業と大々的に触れこんでいる。

 しかし、よく見なければならない。6月議会の質問で明らかにしたが、入学準備金助成は200人の予算枠でありながら、実際に申請できたのはたった7人にとどまった。なぜか。政策金融公庫の教育貸付利用者を対象としたものであり、ある程度安定収入を求められる教育ローンは、経済的困難世帯で利用できる世帯が圧倒的に少ないからだ。

 区は質問に対し、「条件を厳しく設定しすぎたので緩和する」と言うが誤りだ。この場合の緩和とは、所得の高い層にまで利用を広げることを意味し、本当に困窮していて制度の利用を必要とする人が利用できるようにすることでは決してない。

 区民の福祉要求にはやらずぶったくり=\与えることはせず、取り上げる一方という足立区らしいやり方だが、今回質問で取り上げたことにより与党会派へも関心を広めることができた。「給付型」として生み出された画期的な制度であるから、困っているところへきちんと届く制度となるよう、引き続き改正を求めていきたい。

全国で給付型への転換を

 足立区が重い腰を上げた背景には、議会の追及もあるが、就学費用の高騰、給付型奨学金の必要性を求める社会的世論の高まりがある。区の試算では公立大学1年で81万7800円、私大1年で114万6820円もの就学費用となる。「高校生ワーキングプア」のテレビ番組でも報じられたが、学資金のために高校生がバイトをし、毎日夜遅くまで働き家計を支える実態が深刻化してきている。

 国も教育費無償化の一部として2兆円規模を投じ、幼児教育・保育の無償化が2019年度10月より開始され、昨年閣議決定された経済政策パッケージでは「人づくり革命」として幼保に加え高等教育無償化も打ち出された。大学など高等教育は住民税非課税世帯に対し「国立大は授業料免除・入学金免除」「私立大は一定上限を設け授業料免除」「給付型奨学金の拡充」、非課税世帯に近い低所得世帯も「非課税世帯に準じた支援を段階的に行う」とされた。私立高校の無償化も、年収590万円未満世帯に対し平均授業料約39万円を補助する。

 足立区で先日開催された中学生らによる「子ども議会」でも、当事者の中学生議員から「税金の使い方を見直して、保育所から大学まで無償化する」ことが提言された。

 奨学金の返済に悩む若者当事者の運動が、ここまで世論を押し上げてきた。全国の自治体でも給付型制度への転換を求め、経済的給付策の拡充を勝ち取ろう。

(東京都足立区議・土屋のりこ)



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