2018年08月10日 1538号

【非核・核廃絶が世界の潮流/朝鮮半島から東アジアの非核化へ】

 南北・米朝首脳会談を大きな転換点とした朝鮮半島非核化への歩みは、安倍政権やメディアがどれほど否定的に描こうとも、着実に進んでいる。緊張緩和を忌み嫌う戦争勢力の妨害を許さない運動の力がその原動力となる。

進む非核化プロセス

 米国の朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)分析サイト「38ノース」は7月22日、23日の衛星写真分析結果として、朝鮮が北西部・東倉里(トンチャンリ)にある大陸間弾道ミサイル発射台の解体に着手したと伝えた。これを受けトランプ米大統領は、謝辞とともに「9か月の間、北朝鮮はロケットを発射していない。同じように核実験もない。日本は喜んでいる。アジア全体が喜んでいる」とした(7/24時事)。この施設は、米朝首脳会談で金正恩(キムジョンウン)朝鮮国務委員長がトランプに破壊を約束していた。

 1993年の朝鮮のNPT(核不拡散条約)離脱に端を発する朝鮮半島核問題は、25年の時を経て着実に動き出した。政府やメディアがいくらけなそうとも、米朝会談以降のわずかひと月半で急速に進展していることは疑いない。

世界を覆う非核地帯

 朝鮮半島の非核化はそれのみに止まらない。東アジアの非核化、世界の非核化へとつながるものだ。

 核保有国(米・ロ・英・仏・中・印・パキスタン・イスラエル―実質的核保有を含む)などが頑なに「核抑止力」論にしがみついているが、大多数の非核保有国は地域の非核化へと歩みを進めてきた。

 古くは南極条約(61年発効―以下同じ)に始まり、ラテンアメリカおよびカリブ地域における核兵器禁止条約(69年)、南太平洋非核地帯条約(86年)、東南アジア非核兵器地帯条約(97年)、アフリカ非核兵器地帯条約(09年)、中央アジア非核地帯条約(09年)が次々と調印・発効している。また、ロシア・中国という核保有大国に囲まれたモンゴル人民共和国も「モンゴル非核兵器地帯地位」(88年国連総会決議)を得ている。

 それらの条約に共通するのは、日本の非核三原則と同様の「(核兵器を)持たず、作らず、持ち込ませず」に加え、「使用せず」も定めていることだ。核保有国が締約国になっている条約もある。域内で核兵器が使えないなら、その地域では「核抑止力」論者にとっても核兵器は無価値となる。

 朝鮮半島でも、1991年南北基本合意書で、核兵器の実験・製造・生産・接受・保有・貯蔵・配備・使用を行わないことを宣言した。2005年、6か国協議共同声明で南北基本合意の順守が記されたが、協議の中断で実現はしていない。南北・米朝首脳会談で急に現実性を帯びたように見える朝鮮半島の非核化は、長い歴史の上に今日の姿を現したものだ。後戻りはしないし、させてはならない。

 非核化を宣言する地域取極(とりきめ)は、南半球のすべてと、核保有国の影響が顕著なNATO(北大西洋条約機構)諸国などの地域以外に大きく広がっている。


安倍退陣、維新退場を

 2002年の日朝平壌(ピョンヤン)宣言は「北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した」とする。朝鮮が核・ミサイル実験を凍結している今、安倍は同宣言に基づき、「圧力」ではなく協力に方針転換しなければならない。朝鮮・韓国・日本が非核地域を宣言すれば、モンゴルを含めて北東アジア全体の非核化が実現する。核保有国であるロシア・中国を孤立させ、韓国内への米軍核兵器再配備を封じることにつながる。

 だが、非核化を求めるアジア民衆の声に背を向けて歴史に逆行し、朝鮮への不信と敵意をあおって軍事大国化に利用しているのが安倍政権だ。

 世界の非核地域取極に盛り込まれている「非核三原則」を持つにもかかわらず、自民党もアベ友≠フ維新・松井大阪府知事も、核武装を選択肢の一つとして検討すべきと言う。原発による核燃料廃棄物から核兵器原料のプルトニウムを抽出・保有し続ける日本は、核拡散の脅威として国際的批判を受けている。

 世界の圧倒的多数は非核であり、2017年国連総会でついに核兵器禁止条約も採択された。「核抑止」を唱える連中こそ、この現実を直視すべきだ。まして戦争被爆国として今も20万人におよぶ被爆者が現存する日本。核兵器保有検討の余地などなく、直ちに核兵器禁止条約を締結することが平和への貢献だ。

 安倍退陣、維新退場で東アジアの非核化を進める時だ。

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