2018年08月17日 1539号

【辺野古 知事「撤回」手続き開始に歓声 時間稼ぎの聴聞延期策動 土砂投入の強行は許さない】

県、撤回手続き開始

 7月27日、沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事は臨時の記者会見で、名護市辺野古の新基地建設をめぐり前知事による埋め立て承認の撤回手続き開始を表明した。撤回の根拠に、承認の条件とした県と国の環境保全策などの事前協議に応じないことや、大浦湾に超軟弱地盤が存在し活断層の疑いがあること、国立沖縄高等専門学校校舎等が飛行禁止の高さ制限に抵触することなど、埋め立て承認後に判明した事実も撤回の根拠に挙げた。

 翁長知事は東アジアの緊張緩和の流れに触れ、「20年以上も前に決定された辺野古新基地建設を見直すこともなく強引に押し進めようとする政府の姿勢は、到底容認できず、平和を求める大きな流れからも取り残されている」と指摘。「そういう中で美しい海を埋め立てる理由がない」と言い切った。また、県による再三の工事停止の求めに従わず工事を強行する政府・沖縄防衛局について「傍若無人だ」と怒りをあらわにした。

 翁長知事の撤回表明を待ち望んできた市民からは歓喜の声があふれた。辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前では「やったぞー、翁長さんがんばれー」とスイカで乾杯。喜びを分かち合った。沖縄平和運動センターの山城博治議長は「今こそ知事を支え、私たちは共に現場でがんばろう」と訴えた。那覇で開催されたオール沖縄会議主催の緊急集会には300人以上が参加し、「翁長知事がんばれ、県民がついているぞ」と知事にへエールを送った。

国の聴聞延期要求を拒否

 沖縄県は7月31日、沖縄防衛局に対して、言い分を聞く「聴聞」を8月9日に実施すると通知。撤回の手続きが始まった。ところが、防衛局側は8月3日、県に「聴聞等変更申出書」を提出。聴聞を9月3日以降に延期するよう要求した。「反論のための調査や書面作成に相当な時間を要する」と理由を挙げるが、本当の狙いは時間稼ぎをして土砂投入を先行させることにある。8月17日の土砂投入強行を決断したことを示すものだ。そこには、何が何でも新基地を造ろうとする安倍政権の強い意向が働いている。しかし6日、県は「期間は妥当。(防衛局の理由は)やむを得ない理由にあたらない」として聴聞延期を拒否した。

 一つ一つの手続きをめぐり、県と国がせめぎ合う緊迫がいっそう強まっている。

護岸の閉鎖で海が死ぬ

 沖縄防衛局は土砂投入に向けて工事をさらに加速させている。1日約300台だったダンプカーなど工事車両が450台以上、8月3日には過去最多の508台が入構。駆け込み乗車のような勢いで砕石投下を急いでいる。

 防衛局は7月30日、K4護岸の一部に開口部50b程度の幅で開けていた部分への砕石投下を開始。8月2日、ついにK4護岸の開口部を閉鎖。K1からK5までの護岸が「コ」の字型に囲われる形で広範囲の海域が閉じられ、辺野古の海の一部が死の海≠ニなる。護岸が規定の高さになれば土砂投入が可能になる。

 ヘリ基地反対協は8月4日、「土砂投入を許さない辺野古海上大行動」を実施。カヌー43艇、抗議船8隻の100人以上が参加した。「サンゴを殺すな、違法工事やめろ」と、海を破壊する護岸接続に抗議の意思を示した。この日はオール沖縄会議による土曜大行動も行われ、ゲート前には600人が結集した。8月6日〜10日のゲート前連続集中行動、11日、3万人規模の県民大会と、土砂投入反対の行動が続く。


10万超えた県民投票署名

 辺野古新基地建設の賛否を問う県民投票の実現をめざす「辺野古」県民投票の会は7月30日、最終署名総数を発表した。2か月間で10万979筆に上り、県民投票条例の直接請求に必要な2万3千筆を大幅に上回った。

 新基地建設に反対する市民でも賛否が割れていたが、最終盤は県政与党や労組などの協力もあり、徐々に署名に協力する人が増えた。若者を中心として取り組まれたこの運動は、新基地反対の意思表示をしたくても辺野古の座り込み現地には行けない多くの県民の思いを示すものとなった。

 同会は有効署名数の確定後、8月下旬にも知事に県民投票条例制定を直接請求する。実施は12月以降とみられる。翁長知事も撤回表明の会見で「(政府は)多くの県民が署名した重みをしっかり受け止めるように」と言及した。

 辺野古現場での阻止行動、承認撤回、県民投票、県知事選勝利。新基地阻止のためにそのすべてで勝ち切ることが必要だ。   (8月6日)

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【追記】 8日、翁長知事が逝去された。心から追悼するとともに、知事選勝利、辺野古新基地阻止で遺志に応えることを誓う。(8月8日・A)

 
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