2018年08月17日 1539号

【労働法改悪 賛美する財界 高プロの次はまたも裁量労働制拡大】

 労働者の命を奪う残業代ゼロ法=高度プロフェッショナル制度をはじめとする働かせ方改悪関連法は6月29日、成立が強行された。

 国会での野党の追及に政府はまともに答弁できず、「働く人のニーズ」「時間でなく成果で評価される」といった政府の言い分が成り立たないことが次々と明らかになった。過労死家族や労働団体がこぞって反対する中、立法の根拠さえ崩れた法案を数の力で成立させた安倍自公政権、維新の暴挙を改めて糾弾する。

労政審・厚労省監視を

 国会で成立した法案は直ちに動き始めるわけではない。「働き方」関連法は、少なくとも90にわたる省令や指針などを定める作業が残されている。この作業は、労働政策審議会労働条件分科会で進められているが、一定の労働者保護規定など国会での附帯決議がどこまで反映されるのか、監視を緩めてはならない。

 安倍首相が売り物にする「残業時間の年間上限規制」も、過労死ラインの残業時間を合法化するもので、長時間労働が一層広がる恐れがある。

 損保大手の三井住友海上火災保険は年間の残業上限時間(「三六<サブロク>協定」<法定労働時間を超えて時間外労働させる場合の労使協定>の特別条項)を、これまでの350時間から540時間に引き上げた。

 厚労省調査(13年)では、特別条項付き「三六協定」の約8割が上限は年360時間、1か月の上限も月45時間が約8割となっている。安倍や連合幹部が自賛する「残業時間の年間上限規制」は、こうした異常な長時間残業を他の企業にもはびこらせ、過労死を多発させかねない。

あくなき労働者搾取

 国会での強行採決当日、経団連、日本商工会議所、経済同友会は、歓迎の意向を表明。経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は「成立を評価する」とコメントした上で「残念ながら今回外れた裁量労働制の対象拡大については、法案の早期の再提出を期待する」。経済同友会の小林喜光代表幹事(三菱ケミカルホールディングス社長)は「時間や空間に縛られない、より多様で柔軟な働き方の実現に向け、政府には労働法制の抜本的見直しなど、より一層の改革推進を求めたい」とした。

 まさに、グローバル資本のあくなき労働者搾取の欲望表明だ。こうした資本の要望に、厚労省は今秋にも「裁量労働制」について対象拡大のための検討を行うとした。

 裁量労働制とは実働労働時間ではなく、何時間働いてもあらかじめ決めた時間働いたとみなす$ァ度のこと。みなし労働時間を8時間に決定した場合、10時間働いても2時間分の残業代は出ない。いくら残業してもみなし労働時間しか働いていないことになる。ブラック企業が待ち望む制度だ。

 00年から導入された企画業務型裁量労働制は適用される労働者数が7万5千人。14年度の約6万7千人から急増傾向にある。グローバル資本は、それをこれまで禁止されてきた営業職に拡大することを狙ってきた。安倍の「裁量労働制の方が労働時間が短い」とのうそ答弁で、今国会では断念に追い込まれたが、衝動は一貫している。

高プロ廃止とともに

 論議の起点は、14年1月の労政審労働条件部会に厚労省が示した労働者アンケートだ。裁量労働制について「満足」「やや満足」70・5%、「今のままでよい」が71・3%となっていた。なぜこんな結果なのか。調査を請け負った労働政策研究・研修機構の調査方法が問題だ。抽出した企業の人事担当部署に調査票を郵送、労働者に配布を依頼し、回答労働者から個別に回収したとある。アンケートは人事が1事業所あたり10人の労働者を選別して渡した。裁量労働制に批判的な労働者をあらかじめ除くことは間違いない。管理職に書かせることもあるかもしれない。

 まさに「高プロ」のニーズねつ造≠ニ同じ手法だ。厚労省が企業に協力依頼して同意を得た企業を厚労省職員が訪問。企業側が選んだ労働者と企業側同席で意見交換した。

 厚労省は裁量労働制について再調査を行うとするが、こうしたねつ造を絶対に許してはならない。「高プロ」廃止とともに裁量労働制拡大策動の根を断ち切ろう。

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