2018年08月17日 1539号

【軍事費は青天井/命と生活の危機招く安倍軍拡】

 安倍政権は、際限のない軍拡を進めてきた。第二次安倍政権発足以降、毎年軍事費を増加させ、史上最高額を更新し続けている。一方、国民生活に直結する予算は抑え込まれている。軍縮こそが命と生活を守る。

 軍事費の今年度当初予算は5兆1911億円。2019年度予算案概算要求では5兆3千億円に達する見通しだ。

 

 安倍は、集団的自衛権行使容認の閣議決定から戦争法制定へと突き進み、海外派兵の法整備を進めてきた。これに合わせて装備面でも、垂直離着陸可能なティルトローター機オスプレイ、ステルス戦闘機F35A、全通甲板を持つ「いずも」型空母、無人偵察機グローバルホークなど攻撃兵器を次々に購入している。

 これに加えて、19年度予算でもくろむのは、艦船のイージス・システムを陸上に建造するイージス・アショアの導入だ(下段「ミリタリーウォッチング」参照)。

 そもそも、ミサイル防衛システムは冷戦期から敵国の反撃能力を無力化することで、自国の先制攻撃の可能性を広げるものとして導入されてきた。「守りを固める」とは、敵視されている周辺国から見れば「先制攻撃される危険性が高まる」こととなる。

 実際、イージス・アショア導入の閣議決定後、自民党は巡航ミサイルや空母艦載も可能なF35B取得など先制攻撃能力の保有を政府に提言している。自衛隊出撃基地としての沖縄・辺野古新基地建設もその一環だ。「安倍トモ」維新の会もこれに同調している。

 イージス・アショアの導入費用は、当初、1基約800億円とされてきた。その後、2基で3000億円、運用経費は30年で4664億円ともいわれるようになる。小野寺防衛相は「どのくらいの見積もりか一度も言ったことはない」と開き直った。

 常時海外派兵体制確立のための法整備、朝鮮半島危機や中国海洋進出などで不安をあおることを通じた「銃後」社会体制確立。安倍はこれらとセットで軍事費の聖域化をもくろんでいる。自民党の提言は、軍事費の「対GDP(国内総生産)比1%枠」の撤廃も求めている。政府は19年度予算で「1%枠」突破を狙う。「1%枠」は、違憲の戦力保持である自衛隊の存在を合理化するため、歴代自民党政権が持ち出していた軍事費の「上限」だ。提言には明文化されなかったが、目指しているのは倍増の「2%」だ。その金額は10兆円を超える。

軍事費使い「危機」呼び込む

 青天井の軍事費は、アジアの軍事的緊張をあおり、人びとを危険にさらす。

 イージス・アショア導入は、日本政府自らが新たな火種を東アジアに持ち込む。ロシアは「米国の全地球規模のミサイル防衛に組み込まれるもの」と反発。中国も警戒心をあらわにしている。

 辺野古新基地建設の口実としてきた在日米軍基地の存在も同様に市民の命を脅かす。

 例えば、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の核・ミサイル開発。朝鮮が「瀬戸際外交」を仕掛けた相手は、日本ではなく米国だ。朝鮮半島周辺で展開されエスカレートしてきた米韓・日米軍事演習は、金正恩(キムジョンウン)朝鮮国務委員長暗殺作戦も含めて、武力による体制転覆の準備である。朝鮮は米国からの「体制保障」を引き出すことを狙い、核・ミサイル開発を進めてきた。直接のターゲットは日本ではない。ただし、日本各地には在日米軍基地がある。仮に、朝鮮半島で軍事衝突となれば、当然、その出撃拠点である在日米軍基地は攻撃目標となる。沖縄・普天間基地、東京・神奈川にまたがる横田基地など、市街地に近接する基地への攻撃は、直ちに市民の命を奪う。

 安倍政権が繰り返す「北朝鮮の脅威」は、在日米軍基地の存在をはじめとする日米軍事同盟がであるがもたらしている。

 では、米軍の日本駐留は誰が望んでいるのか。

 米国政府は冷戦終結後、「対テロ戦争」を進めるためとして、世界的な米軍のトランスフォーメーション(再配置)を進めてきた。在日米軍基地も整理統合の方向にある。だが、日本政府はいわゆる「思いやり予算」で在日米軍駐留経費を肩代わりしてきた。「日本政府が経費を持つのなら、駐留してやってもいい」というのが米国の本音だ。だから、トランプ政権はより一層の経費負担を安倍政権に求める。それも、米国製の高額侵略兵器の購入とセットでだ。

 多額の軍事費を負担し在日米軍を引き留めているのは、日本政府のほうだ。戦力不保持と交戦権否定の憲法第9条の下で、「自衛隊」という名の軍隊を持ち海外派兵するには、「同盟国の後方支援」「国際貢献」を名分にするしかない。米国は覇権のためのコスト低減策として、日本政府は「いつでもどこででも武力行使」のために、互いに日米軍事同盟を必要としている。

災害・貧困対策出し渋り

 軍事費増は、市民を直接軍事的脅威にさらすとともに、市民生活関連予算の削減をもたらす。政府による2重の人格権・生存権はく奪となる。

 多くの犠牲者を出した西日本豪雨は災害対策をクローズアップさせた。だが、政府やメディアは自助・共助の災害対策を強調するのみだ。7年前の東日本大震災を契機に採用された全地形型特殊車両・レッドサラマンダーはいまだ全国に1台しか配置されていない。1台1億円するというが、イージス・アショアの予算をまわすだけでも全国の市町村に配備できる。安倍は7月20日の記者会見で「この春から新たに2万人の子どもたちが給付型奨学金を手にしました」と述べたが、国公立大学自宅通学者で年間24万円。私学自宅外通学者で48万円。年間授業料の半額にも満たない。予算総額は入学金追加給付24万円なども含め220億円。一方で1機147億円のF35A42機、総額6174億円の購入を決定し、さらに追加購入するという。

 軍備縮小、日米軍事同盟破棄、自衛隊解体こそが市民の命と暮らしを守ることに直結する。
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