2018年08月17日 1539号

【ミリタリー 5000億円の超高額兵器 イージス・アショアの本当の狙い】

 「北朝鮮の核・ミサイルの脅威」を口実に、導入が強引にすすめられてきた陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。朝鮮半島の緊張緩和の動きが大きくすすむ状況が生まれているにもかかわらず、政府は「北朝鮮の脅威は変わっていない」と配備強行の動きを加速させている。

 当初の1基約800億円が1基1340億円に跳ね上がり(システムを収納する建物やミサイルの垂直発射装置を含めると2基で3000億円を超えるとも)、防衛省は配備後30年間の運用経費は約4664億円に上る試算を明らかにした。

 そもそもミサイル迎撃については、「ピストルの弾をピストルで撃ち落とす」「迎撃実験成功といってもノックでの守備練習のようなもの」との批判的指摘が一貫してあり、迎撃ミサイルシステム自体、「完成」した武器製品とは言い難いのが現状だ。実際、日本がイージス・アショアに搭載予定の新型ミサイルSM3ブロックUAの迎撃実験は、今年2回連続で失敗した。

 導入への壁は、これ以外にもいくつもある。重要なのは、配備先(秋田市・新屋演習場、山口県萩市・むつみ演習場)住民の不安だ。「攻撃対象になるのではないか」「レーダーが発する電磁波の影響が心配だ」といった声に防衛省はまともに答えることができない。

 さて、政府がイージス・アショアの導入の必要性として挙げるのは「北朝鮮のミサイルへの迎撃態勢に厚みを持たせる」というもの。イージス艦に搭載する海上配備型のSM3と地上配備型のPAC3に加え、イージス・アショアによる3重、3段による弾道ミサイル防衛とのふれ込みである。しかし、ミサイル防衛システム自体の不完全、不安定性に加え、潜水艦発射ミサイルや多弾頭の同時発射には対応しえないというのが大方の見方だ。

実は中国・ロシアが照準

 「コストパフォーマンス(対費用効果)」が極めて低いにもかかわらず、とてつもない巨額の費用を投入するのは、軍需産業を潤すためだけなのか。今回、導入費用が跳ね上がった理由の一つは、搭載するレーダーをロッキード・マーチン社の最新式レーダーLMSSRとしたことだ。このレーダーによって、探知能力は海上自衛隊イージス艦の現システムの倍以上、千数百`に強化される。朝鮮だけでなく、中国やロシアのかなりの部分が探知されるということだ。さらに「巡航ミサイルなど、様々なミサイル防衛に総合的に役立つインフラに発展させたい」と公言し、対「巡航ミサイル」に計画の重点を移しつつある。

 弾道ミサイルと巡航ミサイルの双方に対応可能な多機能型迎撃ミサイルSM6の導入も浮上してきた。巡航ミサイル迎撃が中国とロシアへの対抗であることは明らかだ。イージス・アショアの導入を急ぐ政府・防衛省のほんとうの狙いがここにある。

 イージスアショアよりも災害対策や貧困対策に予算を=\市民の声は確実に高まっている。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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