2018年08月17日 1539号

【みるよむ(494)2018年7月28日配信 イラク平和テレビ局in Japan 燃やされた投票用紙―イラクの総選挙―】

 5月12日に実施されたイラク国民議会選挙では電子投票の不正など選挙違反が続出し、議会は投票を手作業で再集計すると決定した。その上、保管された投票用紙の一部が燃やされる事件が発生した。サナテレビは6月、この不正選挙についてバグダッド市民にインタビューを行った。

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 映像が作成された時点で選挙から1か月以上が経過している。ところが、6月になっても、7月になっても、各候補者の得票数すら確定できていない。

 直接には機械投票の集計で不正があったとされるが、手作業による票の数え直しは1100万票という膨大な数に上っている。ところが、今度は保管されているはずの投票用紙が燃やされた。保管場所が火事で煙を上げている写真が挿入されている。

 さらに、サナテレビの報道によれば、票を保管している場所で投票箱やコンピューターが落下し、それに当たった職員が亡くなる事件まで起きたという。市民は「こんな不祥事の続出は、独立選挙委員会がごまかしを非難されるのを避けるために仕組まれたものだ」と批判する。

 選挙でこれほどの不正がまかりとおっている背景には、政府高官や国会議員が「社会サービスの資金」「インフラの建設資金」「復興事業の資金」をあたり前のように盗んでいる状況がある。利権獲得のために国会議員に当選しようと、選挙でもありとあらゆる不正を行う構図ができあがっている。

 グローバル資本の利権のために福祉も社会サービスも破壊され、政治家は利権を得ることのできる議員になるために不正選挙、不正な投票集計をやり、数え直すべき投票用紙まで焼いてしまう。

 市民は「私たちの投票は燃やされ、無駄になったか、砂漠の中に消えたのです」「誰が投票用紙を燃やしたのですか? これはイラク国民の投票なのですよ。彼らはイラク国民を奈落の底に落としたいのです」と痛烈に怒りをぶつける。

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 国民議会選挙では、投票所はその地域の有力な政党や政治勢力に支配されていた。不正な選挙に市民は怒り、実際に投票した有権者は3分の1以下だ。サナテレビは、不正な選挙の実態を暴くとともに、それを生み出す社会全体を変革しようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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