2018年08月17日 1539号

【福島原発事故の巨悪を裁く刑事訴訟 公判23回 証人尋問15人 津波は予見できた 事故は回避できた 東電旧経営陣の責任明らか】

 東京電力旧経営陣3人を被告とする福島原発刑事訴訟は昨年6月30日から今年7月27日まで23回の公判が開かれ、東電社員や学者・専門家ら15人の証人尋問が行われた。秋には、残る数人の証人尋問と被告人質問に移る。

 第23回公判(7/27)では、東電から日本原子力発電(原電)に出向し東海第2原発の津波対策を担当していた元社員が重要な証言をした。国の地震調査研究推進本部が02年に公表した巨大津波地震予測の「長期評価」について「とり込まざるをえない方向だった。原電としてもその方向で対策を進めていた」という。実際、原電は最大12・2bの津波が東海第2に押し寄せるとの計算結果を受け、原子炉冷却に必要な海水ポンプの側壁のかさ上げや建屋入り口扉の水密化、海沿いの土地の盛り土などの対策を実施。これにより、福島第1原発のような事故を免れた。

 検察官役の指定弁護士は、元社員が東京地検の調べを受けた際、東電の対策先送り決定を原電の上司が「こんな先延ばししていいのか」と批判したと述べていた点をただした。元社員は「そんなふうに言ったと感じる」と答え、否定しなかった。また、東電の担当責任者が「柏崎刈羽も止まっているのに、これに福島も止まったら経営的にどうなのかって話でね」と言ったと地検の調べで述べていたことについても「記憶があまりない。その時はそういうふうに思ったということだと思う」と言葉を濁しつつ、否定はしなかった。

 同じ太平洋岸に原発を保有し、同じ長期評価を示されながら、原電ができるだけの津波対策を進めたのに対し、東電は対策を先送りした。被告の過失責任はきわめて重い。

「厳正判決署名」広げよう

 第22回公判(7/25)では検察官役の指定弁護士が、福島第1原発と周辺を「裁判官の五官によって検証する」よう求める意見陳述。「書証だけでは原発の規模や津波の痕跡などを立体的・全体的に把握することはできない。裁判官が現場に臨んで対象を眼で確認し、状況を実体験することが必要不可欠」と強調した。

 被害者参加人代理人の海渡雄一弁護士は「(検証請求に応え)現地に行くと裁判官が判断してくれれば、有罪判決の可能性は相当高まる」と期待する。「裁判長はあまり質問しないが、右陪席の裁判官は『長期評価を採り入れなければ安全審査が通らないのではないか』などポイントをつく質問をし、争点について一所懸命フォローしている」

 有罪判決を獲得するためには、裁判所に対する働きかけの強化が不可欠だ。福島原発刑事訴訟支援団と福島原発告訴団は裁判長宛て「厳正な判決を求める署名」の集中を広く呼びかけている。

◆今後の公判期日―9月5日、7日、18日、19日、21日。

◆東電刑事裁判報告会 9月2日14時〜ビッグアイ市民プラザ(郡山駅西口)/9月30日14時〜専修大学神田キャンパス7号館3階731教室
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