2018年08月31日 1540号

【日米原子力協定の自動延長/減らないプルトニウム/核燃サイクルの廃止へ】

 7月17日、日米原子力協定が自動延長された。核兵器保有国でない日本が使用済み核燃料の再処理を行える唯一の「法的根拠」であるこの協定をめぐっては、廃止を求める市民の声が強かった。政治問題化を恐れる日米両政府が旧協定のままの再延長を望んだ。だが、プルトニウムため込み問題は何ひとつ解決されずますます深刻化している。

強まる国際的圧力

 今回の延長は、1988年に締結された現行協定が30年期限となっていたことに伴うもの。30年前と大きく異なるのは日本がすでに大量のプルトニウムを抱えている点だ。47dものプルトニウムは原爆6千発分に当たる。ちなみに、安倍政権が「脅威」だと騒ぎ立てる朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のプルトニウム保有量は30`c。中国(1・8d)、インド(5・1d)など核保有国すら大幅に上回る保有量だ。



 2015年10月、核軍縮を議論していた国連総会第1委員会で、中国の国連大使が「日本は大量のプルトニウムを保有しており、核兵器開発が可能だ」として日本を批判している。

 プルトニウムをため込む日本への警戒はアジア諸国ばかりでなく欧米でも高まっている。今年6月、米政府は日本に対し、プルトニウムの削減を要求。オバマ政権からトランプ政権への移行でプルトニウム削減圧力が弱まるとのもくろみが外れた日本政府は、7月に決定された新エネルギー基本計画に「プルトニウム削減の方向性」を明記した。だが具体的削減方法は明記されていない。そもそも削減する方法がないからだ。

破綻した核燃サイクル

 プルトニウムを減らす方法のひとつとして日本が取り組んできたのが高速増殖炉「もんじゅ」の運転だった。MOX(ウラン・プルトニウム混合)燃料を原子炉内で燃やす「もんじゅ」は2016年に廃炉が決定。核燃料サイクルは事実上破たんした。

 「もんじゅ」廃炉と同時に政府が核燃料サイクル延命策として持ち出したフランスの高速実証炉「ASTRID」(アストリッド)計画への参加もここにきて急速に怪しくなっている。計画実施主体であるフランス原子力庁が「実証炉導入に緊急性がない」として計画の大幅縮小を表明したためだ。縮小後の実証炉の出力は15万`hと小さく、もはや実用化を目指した実験に値しないものだ。

 残されたプルトニウムの削減方法は、MOX燃料を通常原子炉で燃やすプルサーマルしかないが、原発2基でようやく1年間に1dのプルトニウムを処理できるに過ぎない。

 日本が大量のプルトニウムを処理できる見通しは立たず、安倍政権も本気で処理を目指す気はない。潜在核保有能力≠保持し、さらには独自核武装の野望のためにプルトニウムが欠かせないからだ。

「もんじゅ」の後始末

 今年5月、会計検査院は「もんじゅ」について、国会からの検査要請に基づいた検査結果報告書を公表した。1971年度から廃炉が決まる2016年度までの45年間、「もんじゅ」に投じられた総費用は1兆1313億円の巨額に上る。費用の大半が建設費と維持管理費だ。今後の廃炉費用も少なくとも3750億円かかると試算されている。廃炉期間を30年としているが、通常の原発の廃炉経験さえない日本が、冷却のためにナトリウムを使用する危険な「もんじゅ」の廃炉を30年で終えられる保証はない。

 報告書の公表は廃炉決定後であり遅すぎるが、国策として強力に推進された高速増殖炉が何らの成果もあげないまま巨額の税金をドブに捨てて終了したことが、公文書として記録に残される意義は大きい。

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 自動延長された日米原子力協定は、これまでと異なり日米両政府のいずれかが打ち切りを通告すれば6か月後に終了できる。「協定が不安定になった」との報道もあるものの、同じように打ち切り規定のある日米安全保障条約を両政府があくまで維持し続けているように、核開発という「死活的利益」に直結する原子力協定を簡単に手放すはずがない。

 日米市民の国際連帯の闘いで、日本の核燃料サイクルと核開発―独自核武装を阻止し、アジアと世界の非核化を前進させなければならない。
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