2018年08月31日 1540号

【沖縄辺野古 急逝した翁長知事を追悼する 土砂投入阻んだ譲らぬ闘い 遺志継ぎ承認撤回、知事選勝利へ】

闘い続け壮絶な死

 8月8日、翁長雄志(おながたけし)沖縄県知事が逝去された。

 7月27日の「埋め立て承認撤回」表明会見が公の場に姿を見せた最後だった。8月17日からの沖縄防衛局による辺野古の土砂投入を目前にひかえ、臨時の会見で知事が「撤回」を表明し、7月31日に県が沖縄防衛局に「聴聞」を8月9日に実施すると通知。8月3日、防衛局から「聴聞」を9月3日以降にしてほしいとの延期の申し出があり、8月6日に県が「聴聞」延期を拒否したばかりの8月8日の死去だった。会見から12日目に亡くなられた。

 まさに命の炎が燃え尽きる瞬間まで闘い続けた壮絶な死だった。翁長知事の死は、直接の原因は病かも知れないが、知事をここまで追い詰めた日本政府と沖縄防衛局による辺野古新基地建設の強硬策が心身ともに悪影響を与えたことは間違いない。沖縄県からの行政指導を無視し続け、違法の限りをつくした防衛局の工事強行の結果が、海に殺す護岸の現在の姿だ。病死に至るまで翁長知事を苦しめ続けた安倍晋三首相と菅義偉(すがよしひで)官房長官の責任は重い。

 8月13日の告別式には、4500人に上る人びとが県内外から最後の別れに訪れた。

 この日は、14年前の2004年、沖縄国際大学に米海兵隊大型輸送ヘリCH53?が墜落した日でもあった。告別式と同時間帯に開催された大学主催の集会で、前津榮健(まえつえいけん)学長は「辺野古の新基地建設を続ける日本政府に対する県民の不信は増幅するばかりだ」と声明を発し安倍政権を厳しく批判した。

8・17土砂投入は先送り

 翁長知事の死去により、安倍政権は埋め立て土砂投入の8月17日強行開始を断念した。

 沖縄防衛局は、知事死去を受けて「喪に服す期間」として土砂投入を先送りすると県に伝えた。当初、国は沖縄県知事選前に土砂投入を強行することで、埋め立て工事は後戻りできないところまで進んだ、とキャンペーンすることを想定。県民のあきらめと無力感をつくりだし、知事選では「辺野古」を争点から外す戦略を描いていた。

 それが、翁長知事急逝で「作戦」の再検討に追い込まれた。今、土砂投入を強行すれば直後に行われる知事選への影響は必至だ。9月30日の知事選まで土砂投入は延期されるとみられる。まさに翁長知事がその命を賭して、埋め立て工事―土砂投入を阻んだことになる。

知事選にらみ撤回延期狙う

 8月9日沖縄県による国に対する「聴聞」で、防衛局は聴聞手続きの延長を求めた。だが、県は応じず、この日で聴聞は終結した。県が聴聞内容を審理し終えると、埋め立て承認の撤回は可能となる。

 8月13日、国は、今度は17日の土砂投入を延期することで、県に対して埋め立て承認の「撤回」を延期するよう要請した。矢継ぎ早にあの手この手を駆使する防衛局。県議会与党会派など県庁内に、9月30日知事選が終わるまで最後のカードである「撤回」を切らない方がいいという意見が浮上してきた。

 しかし、ここは翁長知事が遺言≠フように語った「撤回は自らの手で行いたい」という思いを受けて、ただちにきっぱりと撤回を行うべきだ。

 8月末まで辺野古キャンプ・シュワブゲート前の工事車輌の入構はないと沖縄防衛局が言ってきたが、海上行動参加者から「護岸での整備工事はどんどん進められており、いつでも埋め立て土砂を投入することができるように段取りを進めている」という情報も伝えられている。承認が撤回されれば、裁判手続きを含めて国が県を訴える段階に入ることになる。否が応でも辺野古埋め立て工事の司法手続きや公判の争点などがニュースにあふれる事態になると、知事選で不利になると国は判断している。新基地建設をめぐって、できる限り県との間を「無風状態」にして知事選を迎えようという魂胆だ。

 休戦協定≠ネどあり得ない。早期に埋め立て承認を撤回し、正々堂々と辺野古工事を止めなければならない。

 沖縄県知事選は、知事急逝によって9月13日告示、30日投開票の日程が決定した。県による埋め立て承認撤回を早期に実現し、来る知事選では、翁長知事の「辺野古に新基地を造らせない決意はみじんも揺らぐことはない」との遺志を引き継ぐ候補者の勝利で、国の辺野古新基地建設計画を断念させ、白紙撤回を勝ち取ろう。      (N)



 
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