2018年09月07日 1541号

【安倍骨太方針2018の自治体攻撃 公共施設切り捨てと丸ごと民営化 命より市場=もうけ優先にノー】

 安倍政権は「経済財政運営と改革の基本方針2018」(「骨太の方針」6/15閣議決定)で、消費税10%への増税、社会保障費等の削減を進める一方、軍事力の大幅な強化と大企業のもうけ口の確保を方針化した。改憲をめざし戦争国家づくりと一体だ。安倍はこの方針の下、自治体分野では、公共施設切り捨てと業務丸ごと民営化を強力に推進しようしている。

公的責任の解体

 自治体業務の民営化は、主に一部業務の民間委託方式で進められてきたが、この十数年、新たな制度により業務丸ごと≠フ民営化へと進んできた。民間資本で公的施設の建設・運営を行うPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)、図書館等公的施設の運営を民間に委託する「指定管理者」制度、公立病院等を民営化する地方独立行政法人化などである。

 こうした動きを踏まえ、安倍政権は「骨太方針2015」で初めて「公的サービスの産業化」を打ち出した。これは「非営利の公共サービス」が「営利の経済活動」になることであり、市民の利益が優先されることはない。50兆円規模と言われる公共サービスの市場化で大企業にもうけ口を提供し、自治体の公的責任を縮小・解体することをあからさまに宣言したものだ。

 「骨太方針2018」では、「歳出効率化等に頑張る自治体の支援」「業務のデジタル化・標準化・広域化等を後押しする。この観点から地方交付税制度をはじめとする地方行財政改革を進める」とし、公共サービスの産業化を強力に推進するため、政府による推進策と財政面での自治体統制を強化した。

水道民営化後押し

 政府の推進策は、自治体間での業務の共同・統一化の推進とそのための環境整備だ。戸籍事務などの窓口丸ごとの民間委託は、届出の受理・不受理判断など法令の趣旨に沿った専門的知識・経験が必要なため、全国的にも政府の思惑通りには進んでいない。特に小規模自治体では導入されていない。規模が小さく企業のもうけがないためだ。

 政府は、「スケールメリットの拡大による民間事業者の参入」を促すため、極力判断業務を排除しようと自治体窓口業務の標準化・規格化を無理やり推進し、内閣府自らが標準委託仕様書を作成・拡充し活用を促すというのだ。そこには市民の権利保障の観点は全くない。

 さらに、窓口分野にとどまらず「すべての行政分野において、…公共サービスの広域化・共同化の取り組みを着実に推進」として、「公営企業の広域化・統合・民営化を推進」を打ち出す。とりわけ、水道・下水道については「具体的方針を年内策定する」とした。次期臨時国会で成立が狙われている水道事業の民営化に道をひらく水道法の改悪と軌を一にした動きだ。

 水道民営化については、安倍が議長を務める「未来投資会議」の「未来投資戦略2017」で、「民間参入や民間の業務運営に関する規制改革」として「水道事業でPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ=公民連携)/PFIをすすめる自治体に交付金や補助金を措置」「上下水道事業において…料金への転嫁を可能とする仕組み(料金値上げの容認)」「(民間事業者に)過度のリスクを負わせない」と検討方向が示されている。市民の命にかかわる水道の安全より資本のもうけのために至れり尽くせりの内容なのだ。

財政で自治体統制

 安倍政権は、推進策に自治体を従わせるため財政面での自治体統制を方針化した。(1)「改革努力等に応じた配分の強化」として、自治体運営に欠かせない地方交付税の算定について、政府方針の実行状況を要件にするトップランナー方式に窓口業務委託を加えることを検討する(2)自治体に策定を義務づけている「公共施設等総合管理計画」の内容を自治体への交付金算定の要件にし、公共施設統廃合に民間資本を活用させる(3)PPP推進へ、目標の達成度等の取り組みの成果に応じた配分を行うインセンティブ(刺激策)を導入する―である。

 これらは、本来、国が自治体に保障すべき財源を政府が勝手に増減させるもので言語道断だ。特にトップランナー方式では、旭川市に対して2016年に1億6千万円の減額措置を行い、全国の自治体が衝撃を受けたという。自治体の政策決定権と地方自治を侵害するもので許されない。

 現在の民営化(民間委託)は、自治体業務丸ごとの市場化というべきものだ。自治体の公的責任を放棄させ、市民生活にかかるコスト削減を推し進め、グローバル資本のもうけとその権益確保をめざす軍拡・戦争国家づくりと一体である。地域から市民自治の強化で反撃しよう。





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