2018年09月07日 1541号

【金学順さんから始まった#MeToo/性暴力被害者を侮辱する日本社会】

 8月12日、「日本軍『慰安婦』メモリアルデーinTOKYO〜金学順さんから始まった#MeToo」に参加した。

 1991年7月、韓国の金学順(キムハクスン)さんは「神様が私を今まで生かしてくれたのは、これに対して闘えという意味だったのだと思う。私に話す機会を与えてほしい」と自ら挺身隊問題対策協議会を訪れた。翌8月14日、金学順さんは記者会見を行い、日本軍「慰安婦」だったと名乗り出た。

 1992年1月、情報ホットライン「慰安婦110番」が開設され、宮城県在住の宋神道(ソンシンド)さんが「恥ずかしくて、『慰安婦』にされたこと、誰にも話したことはない」と連絡してきた。それから、国境を越えアジアなど各国の女性が声を上げた。アジア各地で、取り乱し、泣き叫び、身もだえしていた被害者たちの言動は、時には奇異な目で見られ、排除されていた。その女性たちの訴えが「声」として受けとめられるには、「受け皿」が必要だったのだ。

 私は、日本人「慰安婦」の存在を漠然と考えていた。「慰安婦110番」に情報をよせた一人が、田中タミさんだ。1944年4月、千葉県茂原市早野新田に6軒の海軍慰安所が完成。東京の洲崎遊郭の5軒、船橋の1軒の妓楼に軍は慰安所開設を要請している。そこにタミさんはいた。タミさんは「韓国の人は強制連行だが、自分は父に売られた」と話す。「慰安婦」にされたのは、日本の侵略地の子どもと女性。日本人は娼妓、芸妓、酌婦等だった。繰り返される「慰安婦は公娼」論の背景には、日本の公娼制度があり、性の売買を公許した行政府、業者、女性の性を買う者―脈々と繋がる女性蔑視と人権蹂躙、差別がある。

 そして今も、伊藤詩織さんがバッシングされ、「被害者の女性にも落ち度がある」と攻撃される。日本の司法は性暴力被害者をどう見て、どう扱ってきたのかを少し理解できた。性被害では「女は嘘をつく」「“いやよいやよ”も“いい”のうち」との思い込みがある。刑法177条(強制性交等)の構成要件として執拗に「暴行・脅迫」の存在を要求し、被害者の訴えが届かないことが多い。民事裁判では、被害者の「落ち度」が認定され、その分損害賠償金が差し引かれる。民法709条(不法行為による損害賠償)しか使える法律がないことの問題も指摘された。

 日本で「#MeToo」が拡がらないのは、「慰安婦」問題を否定し、性暴力被害者を侮辱することに平気な国家・社会の在りように起因する。

 女性、障がいがある人、LGBT、在日外国人の人権が踏みつけられ、ヘイト、パワハラ、セクハラが横行する社会は終わりにしたい。セクハラ裁判支援も大事だ。闘っていこう、と思う。

    (東京 Y)

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