2018年09月07日 1541号

【オスプレイ横田基地配備/まかり通る軍事優先、人命軽視/憲法の上に立つ日米地位協定】

 政府は8月22日、米空軍の輸送機CV22オスプレイが10月1日より米軍横田基地(東京都福生(ふっさ)市など)に正式配備されると発表した。重大事故が相次ぐ危険な軍用機が首都圏の上空を日常的に飛ぶことになる。このような人命軽視がなぜ許されるのか。問題の根源には米軍に様々な特権を与えている「日米地位協定」の存在がある。

東京の空に欠陥機

 防衛省によると、横田基地に配備されるオスプレイは5機。2024年頃までに計10機と要員約450人が段階的に配備される計画だ。

 ご存知のように、オスプレイは機体に構造的な欠陥を抱え、重大事故をくり返してきた。普天間基地(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)に配備されている米海兵隊のMV22もしかり。2016年12月には名護市安部(あぶ)の沿岸部に墜落。昨年8月に発生したオーストラリア東海岸での墜落事故では、乗員3名が死亡している。

 横田基地に配備されるのは空軍仕様のCV22で、特殊作戦にあたる部隊の輸送を主な任務としている。よって、敵地への潜入を想定した激しく危険な訓練が行われることは確実だ。実際米軍は、離着陸や人員・物資の投下、低空飛行や夜間飛行の訓練を行うと発表している。

 横田基地周辺では、オスプレイが「一時飛来」している現状でも、夜間飛行訓練が住宅地上空で頻繁に行われている。まさに市民の命と安全が脅かされているのだ。それなのに、政府は「いつどこでどういう訓練をするかは米軍の運用のためわからない」(防衛省)など、傍観者的な態度をとり続けている。

 そもそもオスプレイが沖縄に初配備された際(2012年7月)、当時の野田佳彦首相はこう言った。「配備自体は米国政府の基本方針で、同盟関係にあるとはいえ、(日本側から)どうしろこうしろという話ではない」

 信じがたいことだが、野田の言い分は日米安保条約の下では間違いではない。在日米軍には日本の国内法に縛られない特権が与えられているからだ。この取り決めを「日米地位協定」という。

世界でも異様な協定

 日米地位協定とは、日米安保条約第6条にもとづき、在日米軍の法的地位などを定めた協定のこと。具体的な運用を協議する機関として日米合同委員会が設けられている。

 全28条で構成される地位協定は米軍に次のような特権を与えている。「国内法の適用除外」「日本のどこにでも施設・区域の提供を求める権利」「基地の排他的管理権」「裁判における優先権」等々。これらの規定と日米合同委員会で交わされる密約により、在日米軍は日本の法律に拘束されずに軍事行動を展開できるというわけだ。

 オスプレイの例で言うと、米軍機には日本の航空法の安全基準が適用されない。だから危険な低空飛行訓練ができるのである。また、米軍は軍事演習に使用する専用空域を日本全土の上空にいつでもどこにでも設定できる。これは日米合同委員会で結ばれた「航空機管制・米軍優先密約」があるからだ。

 外国軍にこれほどのフリーハンドを与えている地位協定は国際的にみて異常である。日本と同じ敗戦国であるドイツでは、1993年に改定された地位協定により、米軍機にも飛行禁止区域や低空飛行の禁止を定めるドイツの航空法が適用される。米軍が訓練を行うにはドイツ航空管制の事前許可が必要だ。

 イタリアでも駐留米軍の活動は、イタリアの法律と政府が認める範囲内に制限されている。訓練中の米軍機がロープウェイ切断事故を起こした際には、イタリア政府は最低飛行高度を引き上げ、低空飛行訓練を事実上禁止した。オスプレイが墜落事故を起こしてもノーチェックの日本政府とは全然違う。

 イタリアのディーニ元首相は、地位協定の調査に訪れた沖縄県の職員にこう話したという。「米国の言うことを聞いているお友達は日本だけだ。沖縄が抱える問題は、日本の政治家が動かないと解決が難しい」(7/3東京)

知事会が見直し提言

 全国知事会は7月22日、日米両政府に地位協定の抜本的な見直しを求める提言を全会一致で採択した。提言は、航空法や環境法令など国内法の適用や、事件・事故時の基地への立ち入りなどを地位協定に明記するよう要請。米軍基地の整理縮小を進め、返還の促進を求めている。

 この提言は、先日急逝した翁長雄志・沖縄県知事の「基地問題は一都道府県の問題ではない」との訴えを受け、2年近くかけてまとめられたもの。全国47知事の「総意」はきわめて重い。

 生前の翁長知事は「日米地位協定の下では日本は法治国家と言えない」「日本国憲法の上に日米地位協定があって、国会の上に日米合同委員会がある」と再三訴えてきた。一方、安倍政権は「法治国家崩壊」の現状を恥とも思わず、自ら進んで受け入れてきた。戦争国家づくりに突き進む安倍政権にとって、軍事最優先の論理が日本国憲法を無力化する事態は好ましいことだからである。

   *  *  *

 日本政府は陸上自衛隊にオスプレイ17機を導入することを決めている。「南西諸島の防衛体制強化」が目的だという。8月24日には、防衛省と佐賀県が県営の佐賀空港に配備することで最終合意した。

 朝鮮半島情勢の緊張緩和、平和への流れに逆行するように、日本列島の総基地化が進められている。日米両政府のオスプレイ配備策動を許してはならない。    (M)



ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS