2018年09月21日 1543号

【辺野古 新基地阻む埋め立て承認撤回 喜びのゲート前「闘いはこれから」 9・30知事選玉城必勝を】

県民との約束果たす

 沖縄県は8月31日、沖縄防衛局に「公有水面埋立承認取消通知書」を提出。名護市辺野古の新基地建設に必要な埋め立て承認を撤回した。

 「辺野古に新基地は造らせないという翁長(おなが)知事の強く熱い思いをしっかりと受け止めた上で、埋め立て承認の取り消し処分の権限を有するものとして、公有水面埋立法に基づき適正に判断した」。同日、記者会見に臨んだ謝花喜一郎副知事は、急逝した翁長雄志沖縄県知事の遺志を継ぎ、8月県民大会で決意した通りに承認撤回を実行した。

 撤回の理由として、大浦湾側の超軟弱地盤で護岸を建設した場合に倒壊の危険性があり活断層の存在も指摘されていること、完成後に周辺の国立高専や久辺(くべ)小中学校など多くの建物が米国の高さ基準に抵触することなどを指摘。公有水面埋立法が定める承認の要件である「国土利用上適正かつ合理的」「災害防止、環境保全に十分配慮する」との項目を満たしていないとした。また、埋め立て承認時に交わされた留意事項に基づく事前協議を無視し工事を再開するという違法行為があり、行政指導を重ねても是正しないことを挙げた。

 翁長知事は、病床で謝花副知事に「撤回は私と県民との約束だ。何としても完結させてほしい。もしもの場合は君にお願いしたい」と託していた。その遺志に従い、沖縄防衛局の聴聞延期請求を押しのけ、毅然と撤回に踏み切った。

 「県民のために自らをなげうち、まさに命を削り、その実現に取り組んできた」と謝花副知事は亡き知事を振り返り、県民との約束を果たした。

 待ち望んだ県による撤回の報に、辺野古のキャンプ・シュワブゲート前では新基地に反対する市民たちが歓喜の声を上げた。沖縄平和市民連絡会の上間芳子さんは「撤回を支えるため県民投票で民意を示す必要がある」と力を込めた。翌9月1日のゲート前土曜大行動には約800人が結集し、撤回の喜びを皆で分かち合った。沖縄平和運動センター山城博治議長は「撤回で国は工事を進める根拠を失った。ゲート前のフェンスや山型鉄板をすぐに撤去しろ」と訴えた。参加者は「闘いはこれから」とあらためて決意を固めあった。

 一方、県の承認撤回を受け、新基地建設を進めてきた小野寺五典防衛相は8月31日、今後の政府の対応について「撤回は非常に残念。必要な法的措置を取ることになると思う」と時期は示さなかったものの、争う構えを見せた。

工事中止、なお国は訴訟へ

 今後の展開として考えられるのは、国側による撤回の取り消し訴訟だ。撤回は違法とし、裁判所から取り消しと判決が出るまで執行停止を求める仮処分を提起することが考えられる。また、行政不服審査法に基づき国土交通相に撤回の審査請求と執行停止の申し立てを行う方法、県に対し「是正指示」を出し県が従わなければ高裁に違法確認訴訟を提起することも想定される。さらに、国は、工事の遅れに対する損害賠償請求を起こす可能性もある。菅義偉(すがよしひで)官房長官は、翁長知事が撤回した場合には損害賠償を請求することを会見で述べるなど脅しをかけている。しかし県は、「撤回の処分は適法で損害賠償の対象にはならない」との認識を示している。

 9月4日、沖縄防衛局は承認撤回を受け、キャンプ・シュワブ沖でのフロートや汚濁防止膜など工事資材の撤去を開始した。本部(もとぶ)町の本部港塩川地区でも船に積んでいた埋め立て土砂の陸揚げを始めた。すべての工事を中止しているとしたが、瀬嵩(せだけ)の沖合での潜水調査やK4護岸上に有刺鉄線を設置する作業も見られる。防衛局は環境調査や警備・安全確保のために設置したものと説明するが、完全に工事をストップするまでは油断はできない。

名護市の民意は新基地反対

 翁長知事の死去に伴う9月30日沖縄県知事選に後継候補として玉城(たまき)デニー衆院議員が8月29日出馬表明。玉城予定候補は、翁長知事の遺志を引き継いで辺野古新基地建設阻止を貫徹するとし、1_もブレない姿勢を強調した。「知事が誰よりも望んだ、心を一つにすることへの心ない攻撃がある。民意、地方自治を踏みにじる形で辺野古新基地建設を強行するこの国の姿だ」と安倍政権を強く批判した。

 一方、対立する佐喜真淳(さきまあつし)前宜野湾市長は普天間飛行場の早期返還を強調するが、辺野古新基地建設の是非については「法律的に注視する」と言及を避けている。しかし、安倍政権が総力で支援するという構図であり、新基地推進であることは明らかだ。

 新基地阻止のために何としても玉城デニー予定候補の圧倒的な勝利を勝ち取ろう。

 9月9日投開票の名護市議選で、渡具知(とぐち)武豊市政に反対する野党は残念ながら1人減となったが、与野党同数だ。新基地反対議員は過半数を占め、民意は新基地反対であることが示された。13日告示の知事選で玉城必勝に全力を挙げる意義は、ますます高まっている。

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