2018年09月21日 1543号

【ミリタリー・ウォッチング ぼったくりのFMS調達 「爆買い」し放題の安倍政権】

 9月7日、政府は各省庁が提出した2019年度予算編成の概算要求総額を発表した。一般会計総額は102兆7658億円で過去最大。防衛省関係は5兆2986億円で、これも過去最大。18年度より2・1%の増額である。ただし、省庁として予算要求はするが概算要求には金額を示さない「事項要求」というものが別にあり、この5兆2986億円には米軍再編経費と政府専用機導入費などは含まれていない(2件で3000億円近い)。したがって実際の要求額はもっと大きくなる。

 ところで、昨年からしばしばメティアでも取り上げられていた問題に、防衛装備の「FMS調達」がある。米国からの装備品調達にはDCS(Direct Commercial Sales=直接商業売却)とFMS(Foreign Military Sales)がある。前者は日本の防衛省が商社などを通してメーカーの米国企業から直接兵器を購入する方法。後者はメーカーではなく、米国政府が自国の武器輸出管理法に基づいて同盟諸国などに装備品を有償で「提供」する制度だ。日米間では「日米相互防衛援助協定」(1954年)に基づくとされており、防衛省は「有償援助調達」と称している。

 このFMSの特徴は、(1)契約価格は米国の見積価格(つまり米国の言い値)(2)代金は前払い(3)出荷予定時期は単なる「目標」時期(しばしば遅れる)(4)米国は前払いで受領した額の総費用超過分を装備購入国に返還(実際は返還が遅れたり、返還されていないケースもある)。米国にとっては圧倒的に有利で、装備購入国の日本は米国に相当ぼったくられていると言わざるを得ない。とくに(4)の返還金問題については、会計検査院が防衛省に改善の指示を行っているほどだ。

安倍政権下で4・5倍に

 にもかかわらず、このFMS装備品を次々と「爆買い」したのは安倍政権だ。主要な装備品だけでも、F-35戦闘機42機、オスプレイ17機、グローバルホーク3機、E2D早期警戒機4機、そして今回概算要求に盛り込んだ地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」2基などもすべてFMS。第2次安倍政権発足後の5年間(13〜17年)、「防衛費」は上昇し続けている。とくにFMSによる購入総額は政権発足前5年間の4・5倍にもなる。

 このFMS問題は、防衛省自身が納税者である市民に対して明らかにすべきことであるにもかかわらず、昨年の「防衛白書」には「FMS」という言葉すら出てこない(ちなみに08年福田政権下での防衛白書には曲がりなりにも「FMSの一層の改善」という個所が見られる)。


問われる軍縮の闘い

 今、日本政府が遂行しなければならないことは、6月12日に行われた米朝首脳会談での共同宣言を支持し、東アジアの非核化、平和の構築をめざして積極的な対応を創り出すことである。力による制裁ではなく、対話による解決を創りだすこと。間違っても、戦争のための武器を爆買いしたり、これ見よがしに戦闘訓練を繰り広げたり、繰り返したりすることではない。

 私たち市民には、政府に確たる軍縮を迫る粘り強い闘いが問われていると思う。

藤田 なぎ
平和と生活をむすぶ会
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