2018年09月28日 1544号

【辺野古 沖縄県の埋め立て承認撤回/国の違法行為を正す 世界も撤回を支持】

 8月31日、公有水面埋立法(以下、法)に基づき、沖縄県は名護新基地建設の「埋立承認取消通知書」を沖縄防衛局に出した。この取消は、安倍政権の違法行為のために埋め立て承認を撤回したものだ。

 違法行為は大きく次の4点。(1)「国土利用上適正かつ合理的なること」(法第4条第1項第1号)の要件を充足していないこと(2)承認処分の際に付された「留意事項1」の不履行(3)「災害防止につき十分配慮」(法第4条第1項第2号)の要件を充足していないこと(4)「環境保全につき十分配慮せられたるものである」(法第4条第1項第2号)の要件を充足していないこと。

埋め立てに正当性なし

 新基地建設予定地は、埋め立て承認後の土質調査で特殊な地形・地質であることが判明し、いつ動くかもしれない新しい活断層も見つかった。

 対象となっている地質は、「マヨネーズのような軟弱地盤」(鎌尾彰司日本大学准教授・地盤工学)だ。沖縄防衛局の設計概要説明書は、地盤の硬さを表すN値を砂質土で11(硬い)と記載していた。N値が大きいほどその地盤は硬い。大型構造物の場合N値50以上が必要とされる。しかし、実際はN値ゼロ(非常に柔らかい)の個所が多数みられることが明らかになった。砂質土のN値が5以下なら、2階建て木造住宅でも土質改良工事が必要とされるのが通例だ。大型建造物を支えられる地盤では全くない。

 しかも非常に新しい活断層があり、そもそも海上空港が建設できるところではない。

 軟弱地盤上に埋め立てて作った関西国際空港は開港以来地盤沈下対策を繰り返してきたが、すでに海面下の部分も生じて台風21号で冠水した。辺野古新基地が建設されても、液状化・地盤沈下は必至であり、活断層が動けば護岸崩壊・埋め立て土砂の大量流出など深刻な被害が予想される。

 「国土利用上適正かつ合理的なること」「災害防止につき十分配慮」の要件を満たしていないことは明らかだ。

 新基地は米海兵隊が駐留する普天間基地の「代替施設」としての建設だが、米国防総省が定める飛行場周辺建造物の高さ制限に抵触する建物が多数存在する。その中には小中学校、高専、弾薬庫など絶対に航空機事故に巻き込んではならない施設がある。

度重なる違法行為

 安倍政権の違法行為は数え切れない。

 沖縄防衛局は埋め立て承認の前提条件であった「工事の施工について―工事の実施設計について事前に県と協議を行うこと」(前記Aの留意事項1)とされているにもかかわらず、事前協議を行わず2017年2月汚濁防止膜設置海上工事に、同年4月護岸工事に着工した。しかも、13年と14年に作成された土質調査報告書で活断層の存在と軟弱地盤であることを把握していたのに隠して工事を強行した(『世界』10月号)。
 沖縄防衛局は環境破壊も意に介していない。承認取消通知は、その告発に大半を費やしている(前記(4))。

 埋め立て承認の際、防衛局が環境保全策のうち具体策を先送りしていたものがある。そのため、埋め立て承認は「環境保全対策、環境監視調査及び事後調査の詳細を県と協議」「外来生物の侵入防止対策、ジュゴン、ウミガメ等海生生物の保護対策の実施状況について万全を期し、県・関係市町村に報告する」という条件を付けていた。

 つまり仲井真前知事は、絶滅が危惧されているサンゴやジュゴン、生態系の重要な位置を占める海草藻場の保全対策が不十分であるにもかかわらず埋め立て承認を出したのであり、承認そのものが法の趣旨に反し無効だ。しかも、仲井真が無理筋の承認を出すためにつけた条件すら防衛局は無視している。

 国は「県と協議する」とされていた環境保全策を一方的に策定して「協議終了」とし、県の立ち入り調査すら拒否。音響装置の設置などジュゴンを追い散らす手法を「保護策」と主張し、着工前に実施するとしていたサンゴ類の移植・移築も実行しなかった。




新基地は造らせない

 公有水面埋立法は、国が定めた法律だ。その法を安倍政権は自ら踏みにじっている。謝花副知事は「違法な状態を放置できないという法律による行政の原理」に基づくと述べた。埋め立て工事そのものが法に照らして全く正当性がなく、その手段も承認条件に反し、国が違法に違法を重ねたからだ。それは、国家権力の意思があらゆるものに優先する戦争国家そのものだ。

 平和と民主主義の実現を目指すすべての人びとが今回の撤回を待ち望んでいた。9月7日、「世界の識者、文化人、運動家が沖縄の非軍事化を訴える」声明が発せられた。声明は、ノーベル平和賞受賞者から元米国外交官、聖職者など多彩な人物133人が名を連ね、安倍首相、トランプ大統領、世界の人びとなどに向けて「トランプ大統領と安倍首相がすぐさま辺野古の海兵隊基地建設を中止し、沖縄の米軍基地を大幅に削減し最終的には撤去するために交渉を開始することを求める」とのメッセージが込められた。

 内外の力を集め、新基地は造らせない翁長知事の遺志=沖縄の民意を支え、新基地建設の是非を最大争点とする知事選に何としても勝利しよう。
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