2018年10月05日 1545号

【「月桃の花」歌舞団 ガマ人間あらわる 地域に命が大事″ェ付かせたい 新たな出会いとつながりつくる 千葉・浦安公演】

 千葉県では初めての「月桃の花」歌舞団ミュージカル『ガマ人間あらわる』。9月23日の浦安公演は、地域に「命が大事」のメッセージを広げ、出演者・参加者ともに新たな出会いとつながりを形づくった。

 公演実行委員会は、300人を観客動員目標とした。東日本巡回公演担当の竹内さんは「初めて試みた歌舞団無名≠フ地で席を埋められたというのは大成功に値する」と喜ぶ。

 竹内さんは仕事の合間をぬって、あるときはレンタカーで、あるときは1日1万歩いて、公演案内チラシを市内20団体以上に配り勧誘して回った。週1回ペースで、会場付近の駅前宣伝も続けた。

 当日開演前、会場入口で来場者一人ひとりに会釈する。顔見知りになった人には「よく来てくれました」とあいさつし、スタッフらに紹介。見知らぬ人にも声をかけ会場内に誘導する。

 「千葉朝鮮学校では校長にお願いし、若い教員が2人来てくれ感動した。ほとんど見知らぬ方で、地元の方が多かったと思う。歌舞団の『ガマ人間あらわる』全国公演のモットーは、公演する各地域に『命が大事』を根付かせたい。その意味でよかった」

 公演の練習風景を見て出演を希望する人も現れた。「若い人2人がエキストラ役として出演してくれた。新しい出会いはすごくうれしい」

気持ちは2月成田公演へ

 福島公演で実行委員会に参加し、組織化の経験は今年に入ってからという竹内さん。東日本巡回公演担当として大役を果たしたのも束の間、気持ちは来年2月24日の千葉・成田公演成功へと向かう。「大きな労働組合を回ってもなかなか動いてくれないので、地域の市民団体をていねいに回りたい。実行委員会段階から市民の方が参加できるよう考えている」

 地元のスタッフとして参加を広げたのは、広瀬明子市議(無会派)。浦安市在住で福島原発事故被害者支援を続ける稲井邦利さんから声をかけられた。「市民のための市政が行われていない。地域に民主主義を根付かせるのが私の基本」という広瀬さん。「平和とか沖縄問題とかをミュージカル、歌や劇など感性に訴えることで広めていければ」と共感し、支援者らにチラシを渡し勧誘した。「若者は政治に無関心ではなく、確かな情報を伝えることが大事。誘った人が観てよかった、と言ってくれたのでよかった」

 千葉朝鮮学校の教員2人や「千葉朝鮮学校を支える会」メンバーも参加した。若い女性教員は「校長から言われて参加」と語りながらも「沖縄や平和の問題など今日のような舞台を見るほうが、勉強するより知るいいきっかけになる」。米朝共同声明にふれて「うれしかった。南北の統一が進めばいい」と話す。

人として生きたい思い

 「北のシマ」から「南のシマ」に避難した「のぞみ」役を演じた岡野さんは、次回公演予定の成田市在住。この日も成田から女性市議や畜産業を営む知り合いらが参加した。「女性市議は『私、ガマ役がやりた〜い。女性社員役もいいか』と乗り気。母も『私、手踊りやりたい』と言い出した。母が目覚めていく姿はいいな」と照れくさそうに語った。

 岡野さんは演劇に携わっていたが、観客として歌舞団を知り、「この舞台、もっともっとよくなるな」と今年から関わり始めた。「これまでお芝居をやって生きてきたが、集団が苦手でひとりドブネズミのように徘徊していた。その中で、福島は事故後に何もされていない、沖縄では日本の正体を見た。この日本ヤバイと思うようになった。このままお芝居をするにしても、ちゃんと問題意識を持ってやらないと芝居にのまれる人生になってしまう。人としてちゃんと生きたい」。その時、歌舞団に出会ったと言う。

 「文化・演劇の世界で社会問題を扱うにしても、役者さんの問題意識が足りない。セリフだけ並べたり、原作を読んでなくても、(テクニックで)お涙≠取れる。しかし文化を通して、相手が痛いと思ったらその痛みを聞きたい、痛みを一緒に考えたい―とつながっていく出発点になることが大事。私も、福島で出演したあと、放射能がばらまかれている中で、放射能のことを知らない私でいいのか、考えさせられた。『ガマ人間』上演を通して、交流でき、学ばされ、ほんとうにありがたい」。目を輝かせた。



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