2018年10月05日 1545号

【みる…よむ…サナテレビ(497) 2018年9月22日配信 イラク平和テレビ局in Japan/イラクの大河に水がない】

 イラクは今、大変な水不足に悩んでいる。世界的な大河のティグリス川とユーフラテス川を流れる水の量が大幅に減っているのだ。市民は飲料水の不足に苦しみ、農業も大きな被害を受けている。2018年6月、サナテレビはこの問題についてバグダッドの市民にインタビューを行った。

 映像の最初は、イラクの真ん中を通る大河の姿だ。歴史を振り返れば、人類の文明が始まった頃からこの地はティグリス・ユーフラテス川の豊かな水を利用して灌漑(かんがい)を行ない、農耕を始めていた。その膨大な水を、川の上流のトルコが奪ってしまっている。

 イラクの6月〜8月は摂氏45度から50度にも達する。そんな炎暑の下で、飲料水が確保できず、農業用水も不足してコメなどの穀物生産が大打撃を受けている。ユネスコの世界遺産リストにも上がった豊かな自然で知られる湿地帯の近辺でも全く水がないところができている。人びとの生活が脅され、貴重な自然環境が台無しになっている。

 インタビューに答える市民は、ひどい実態に憤りを隠さない。現在の事態を生み出したのはイラク政府自身なのだ。

水不足放置する政府

 ある政治評論家は「深刻なのは、政府が水の問題を解決できないし、国民の運命を風任せにしていることだ」と厳しく批判する。「失敗続きの政府は、水資源省のレベルでも、外務省のレベルでも、何の行動もしていない」と語る。イラク政府は飲料水や農業用水の確保が難しくなっているのに、全く有効な手立て打っていない。

 これに対してイラク市民は、政府任せにすることなく、問題の具体的な解決策を示そうとしている。「イラクの諸州が合同の委員会を設立して、農民に水の公平な分配を行えるようにする」と主張する市民がいる。トルコが上流で水を奪っていることについても、いたずらに対立を煽るのではなく、「(トルコと)互いに調整しなければならない」と言う人もいる。

 水不足の最大の被害者は市民や農民だ。サナテレビは事態に何の対策も打たない政府に対し、市民が水不足対策を要求として突きつけようと呼びかけている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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