2018年10月19日 1547号

【MDS集会 基調講演要旨 山川 よしやす MDS書記長 沖縄知事選勝利、東アジア平和の力で 安倍戦争改憲路線にとどめを】

 10月7日大阪市内で開かれたMDS(民主主義的社会主義運動)集会の山川よしやすMDS書記長講演要旨を紹介する。(まとめは編集部、4・5面に関連記事)

デニー勝利の巨大な意義

 9月30日投開票の沖縄県知事選挙で辺野古新基地建設反対の玉城(たまき)デニーさんが、自公維新の推す佐喜真淳(あつし)候補に大差で勝利した。玉城さん39万6632票、佐喜真候補31万6458票と8万票差。玉城デニーさんの得票数は前回知事選の翁長雄志(おながたけし)さんの得票を超え、これまでの県知事選最多得票だ。沖縄県民の新基地建設反対の強い意思が玉城さんの勝利をもたらした。

 これは戦争改憲路線を進める安倍政権にとって大打撃で、「安倍1強」が砂上の楼閣にすぎないことが明白となった。

 安倍政権は、沖縄県知事選勝利のためにありとあらゆる手段を講じた。辺野古新基地建設を争点とせず、経済の活性化を打ち出した。それは県民の意思とはまったく異なるものだった。【図表1】の投票前世論調査によれば、知事選の争点として基地問題重視が54・4%と最大であり、経済振興・雇用は22・1%。辺野古への移設について63・8%が反対であり、賛成の27・9%を大きく上回った。また、辺野古埋め立て承認の撤回も60・1%が支持していた(9/24琉球新報)。基地問題の争点隠しは成功しなかった。

 自民は業界団体を締め付け、各会社には期日前投票報告を求め投票用紙の撮影報告を強要する例まであった。公明は創価学会員を本土から5千人以上投入し、レンタカーで投票所までピストン輸送し期日前投票で勝利を狙った。

 県民の気持ちは、9月22日うまんちゅ大集会での翁長樹子(みきこ)夫人の発言に示されていた。

 「今回は静かに見ていよう、県民が出す結論を待とうと思っていたが、日本政府のやり方があまりにひどい。権力をすべて行使して私たち県民を愚弄(ぐろう)する。民意を押し潰そうとする」「県民の心に1_も寄り添おうとしない相手の方に私は譲りたくありません。翁長前知事の心をデニーさんが継いでくれるのかと思ったら涙が止まりませんでした。マグマを噴出させてでも必ず勝利を勝ち取りましょう」

 この発言が、安倍政権が抑えようとしてもごまかそうとしても不可能な沖縄県民の強い感情であった。実際の投票でも、最も重視したこととして「基地問題」が46%と最も多く、辺野古新基地建設反対は57%、うち8割が玉城さんを支持(10/1沖縄タイムス)。無党派層の71・4%、自民支持の24%、公明支持の27%が玉城さんに投票した【図表2】。創価学会員も公然と反旗を翻し、玉城さんを支持する会員が続出。厳しいと言われていた若者たちの中にも、SNSで「デニってる」などと発信し、ともに闘い勝利するという新たな胎動が生まれた。

 結果、大差で玉城さんが当選。沖縄県民は基地建設拒否の強い意思を示したのである。

 
【図表1】 『琉球新報』 9月24日   【図表2】 『琉球新報』 10月1日

辺野古阻止の展望開く

 しかし安倍政権は、辺野古新基地建設を推進しようとしている。菅義偉(よしひで)官房長官は10月1日、「政府としては早期に辺野古への移設と普天間飛行場の返還を実現する考えは変わりはない」と明言した。

 政府は、県が行った「埋め立て承認の撤回」の取り消し訴訟、撤回処分の執行停止を裁判所に訴えるとしている。政府は裁判勝利を当然と考えているが、裁判で徹底的に闘い新基地建設のでたらめさを暴くことができる。仮に政府が裁判に勝っても、埋め立て予定の大浦湾にはマヨネーズのような超軟弱地盤がある。計画変更は不可避であり、それには公有水面埋立法に基づく知事の承認が必要となる。

 玉城新知事の姿勢は明確だ。9月30日夜、「平和の最たる行動は、これ以上新しい米軍基地を作らせない、辺野古の新基地建設は絶対に認めないことです」と断言。新基地阻止の展望は大きく切り開かれたのである。今後予定される裁判闘争を闘い、同時に県民投票でとどめを刺さなければばならない。

 自公維新が総力戦で臨んだ知事選勝利の意義は巨大だ。安倍の沖縄知事選勝利から改憲案提出というプログラムに痛打を与えた。自民党石破派議員が言うように「締め付けてもあの結果なら国政選挙はどうなるのか。野党が協力すれば参院選の1人区は目も当てられなくなる」(10/2毎日)。そうしてやろうではないか。

安倍改憲は阻止できる

 安倍首相は総裁三選後、「選挙は勝利を収めた以上、約束したことを実行に移す責任がある。いったん結論が出れば実現に全力を尽くすのが、自民党の伝統だ」と改憲への強い意志を示した。

 内閣改造においても改憲シフトを明確に敷いた。自民党改憲案をまとめる憲法改正推進本部長に下村博文、その改憲案を了承する総務会長に加藤勝信を充てた。二人とも安倍側近である。

 しかし、世論は改憲に賛成していない。自民党総裁選後の共同通信世論調査(9/20〜9/21)で、秋の臨時国会に自民党憲法改正案の提出を目指していることに反対が51・0%、賛成は35・7%であった。

 総裁選後、石破茂は「改憲の優先順位は低い。国民の気持ちとあまり違うことをやるべきではない」と主張し、公明党山口奈津男代表は「憲法改正の優先順位が高いとは言えない」と述べた。急テンポの安倍改憲路線に与党の有力者が反対しているのである。

 安倍にとってみれば、ここで改憲の旗を降ろせば安倍内閣はただちに終わりを迎える。なんとしても改憲の旗を掲げていくのが安倍である。

 支配階級内部の意見対立を踏まえれば改憲は阻止できる。

平和への道は止められない

 9月19日、今年3度目の南北首脳会談において「9月平壌(ピョンヤン)共同宣言」が発表された。

 「両首脳は民族自主と民族自決の原則を再確認し、南北関係を民族的和解と協力、確固とした平和と共同繁栄に向け、一貫して持続的に発展させていく」「南北は非武装地帯をはじめとする対峙(たいじ)地域での軍事的敵対関係の終息を、朝鮮半島全地域の実質的な戦争の危険除去と根本的な敵対関係解消につなげていく」と、韓国、朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の事実上の終戦宣言である。また、朝鮮半島非核化への決意が表明された。さらに「板門店(パンムンジョム)宣言(4/27)軍事分野合意書」において、きわめて具体的に軍事的緊張緩和の措置を取ることに合意した。

 韓米の政府、国連、世界の平和勢力はこれを歓迎した。ところが、日本のメディア、政府の対応は異常だ。読売新聞(9/20)は「非核化したとみるのは早計だ」「核兵器を温存したまま、米国から見返りを引き出そうとする戦術」「北朝鮮包囲網の引き締めを図ることが求められる」。朝日新聞(9/26)も米朝再会談を歓迎するのではなく「再会談の意義が見えにくいのが現状だ」と報じた。

 日本政府は、さすがに対話より圧力とは言わないものの、「朝鮮戦争終戦」を警戒し「トランプ大統領に懸念を伝え、安易に宣言に応じないよう働きかけるとみられる」(9/24東京新聞)と評価されている。安倍政権、日本のマスメディアは南北、米朝首脳会談が開かれ東アジア平和への道が大きく進んでいくことを認めたくないのである。

 韓国、朝鮮は10月1日、板門店の共同警備区域の地雷除去に着手し非武装地帯でも地雷撤去を開始。南北合意が着実に実行されている。今必要なことは米韓日の戦争軍拡勢力を抑え込み、朝鮮戦争終結宣言をかちとることである。

安倍は打倒しかない

 安倍が自ら書いたシナリオ―総裁三選、沖縄知事選勝利、臨時国会での改憲案提案、改憲発議―はそのスタートでとん挫した。安倍は改憲へと走り続けなければ倒れてしまう自転車操業≠ノ入ったということができる。

 安倍は打倒できるし、打倒しなければならない。沖縄県知事選勝利がその展望を示している。辺野古新基地建設工事の技術的困難を隠し、工事が進んでいると宣伝を行い、県民のあきらめを作ろうとした。知事選で辺野古新基地建設に全く触れず、携帯料金4割値下げなど県民をバカにした政策を打ち出した。しかし、沖縄の闘いはあきらめず、誇りを持って「県民を愚弄し、民意を押し潰そうとする」安倍政権と闘って勝利したのである。安倍の弱さは明白となった。人間としての尊厳をもって安倍と闘えば勝利する。

 沖縄知事選だけではない。東アジア情勢の転換の中で、安倍の戦争改憲路線そのものが情勢に適合しなくなった。対話を否定してきた安倍が日朝会談を進めざるを得ないことはその明白な証しである。したくもないことを、したいふりをしなければならない。安倍は自らの戦争路線を正当化することができなくなっているのである。

 今、安倍内閣は生活保護を切り下げ、介護サービスを制限し、社会保険負担を増やし、年金受給開始年齢を遅らせようとしている。一方、軍事費は来年度予算概算請求で5兆3000億円となり、総額6000億円を超えるイージス・アショアを導入する。防災対策費用は出さず、軍事費のみを増やす。オスプレイを横田に配備し日本全土をオスプレイ訓練の場に変える。

 東アジア平和構築の妨害者、市民生活を悪化させ労働者を過労死させる張本人、安倍を打倒し、消し去る時である。

 東アジアの平和を求める市民と連帯し、辺野古新基地建設や南西諸島への自衛隊配備に反対し闘う沖縄の人びとと連帯し、粘り強く闘うならば安倍内閣を打倒できる。安倍9条改憲NO!3000万人署名、東アジアの平和を求める署名を集め、改憲提案―発議を阻止しよう。東アジア平和を確固たるものにしよう。
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