2018年10月19日 1547号

【ミリタリー・ウォッチング 今あえて対中国訓練を公表 緊張緩和に逆行する戦争挑発】

 沖縄県知事選挙は、自民・公明・維新によるなりふり構わぬ「総力戦」をはねのけ、玉城デニー候補の圧勝となった。

 玉城デニー知事の誕生を阻止するために、彼らはあらゆる策を弄した。悪質なデマの大量生産は代表的な手口の一つだった。「翁長も玉城も中国のスパイ」「玉城が知事になれば、中国の侵略、領有化の動きは一気に進む」等々。朝鮮半島の緊張緩和が進む中、沖縄をめぐる「北朝鮮の脅威」が使いづらくなった今、デマの中心は「中国の脅威」というわけだ。

 玉城圧勝≠ナ決着がつくと同時に、これらのデマはインターネット上から一斉に「撤退」したという。だが、中国との緊張関係を温存し、あえて軍事的緊張激化をつくり出そうとする政府、防衛省・自衛隊の動きはむしろ加速している。

南シナ海で対潜水艦訓練

 知事選の最中、海上自衛隊は、南シナ海の公海上で呉基地所属の潜水艦「くろしお」とヘリ搭載護衛艦「かが」など護衛艦3隻が対潜水艦戦の訓練を実施したことをわざわざ公表した。訓練は「くろしお」が「かが」などと合流。潜水艦の捜索訓練や、潜水艦が護衛艦に接近して攻撃する訓練など、中国海軍との海洋戦争を想定した訓練である。

 安倍首相は「南シナ海での潜水艦の訓練は15年前から、昨年も一昨年もやっている」と明かしたが、今年発表した理由については「十分承知していない」とはぐらかしている。海自潜水艦の南シナ海での訓練が公表されるのは初めてで、秘匿が原則とされる潜水艦の行動を公表するのも異例。

 中国と周辺諸国との緊張が高まる南シナ海、しかも中国が権益を主張する「九段線」内に奥深く入った海域まで日本の戦力(海自の潜水艦戦力は世界トップクラスで中国を凌駕<りょうが>すると言われる)を派遣して軍事力を誇示すれば、中国を刺激し軍事的緊張が高まる恐れがあることを十分承知しての行動、公表である。

 また、米軍が、中国が「領海」と主張する「12カイリ(約22`)」内をイージス艦などで航行する「航行の自由」作戦を繰り返し、ハワイでの多国間訓練への中国海軍招待を今年は取りやめ、南シナ海上空で戦略爆撃機を飛行させるなど、挑発行動を行っている中で「連携作戦」の公然化とも言える。

B52爆撃機と共同訓練

 さらに、中国との緊張激化を招く行動は、航空自衛隊でも行われ、エスカレートしている。米空軍の戦略爆撃機B52と空自の戦闘機16機が東シナ海と日本海上空で共同訓練を行った。グアムから飛来したB521機が9月27日、東シナ海から日本海上空を飛行。空自の那覇(那覇市)、築城(ついき)(福岡県)、小松(石川県)、千歳(北海道)各基地の戦闘機が4機ずつ入れ替わりでB52と編隊飛行などの訓練を実施した。東シナ海上空では中国の防空識別圏内も飛行したという。米軍は23日と25日にも南シナ海でB52を飛行させたばかりで、尖閣諸島のある東シナ海上空でのB52との訓練が公表されるのも初めてだ。これは、中国へのけん制≠ヌころではなく、挑発≠ニいえる危険な行為だ。

 南西諸島へのミサイル基地建設を軸とした自衛隊配備強化や東シナ海・南シナ海での自衛隊の行動は、自衛隊が中国との戦争を「本気で構える」軍隊に変貌しつつあることを示している。

 日本政府は、軍事対決ではなく、軍縮の行動を。政府に対し、全国から声を大にして要求しよう。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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