2018年10月26日 1548号

【図書館へ指定管理者制度導入 分室廃止の動きも 再直営化目標に市民の声広げる 大阪・枚方】

 大阪府枚方(ひらかた)市では今年4月、利用者や市民の反対、不安の声にもかかわらず、市立図書館などの管理運営を民間に任せる指定管理者制度を導入。建て替えに伴う図書館分室廃止の動きも進んでいる。市民自治の立場から、この問題に取り組んできた「枚方市の図書館行政を考える会」の井上由美さんに報告を寄せてもらった。

 枚方市は、今年4月から6つの「図書館・生涯学習市民センター複合館」に指定管理者制度を導入しました。この制度は2003年に国が地方自治法を改定し、公共施設の管理運営を民間に任せることを認めて推進してきたもの。

 しかし、一方で国も「図書館、公民館、博物館などの教育・文化施設には、司書など経験を積んだ専門職員の安定的な配置が必要なので、そのような施設にはなじまない」(2016年総務省見解)ことを認めています。全国でも8割強の市町村が図書館には導入していません。

 では、社会教育、図書館行政で先進的と言われてきた枚方市がなぜ導入することになったのか。それは、1996年枚方市が「行政改革大綱」を策定して以降、人員削減(人件費削減)を推し進め、その行政改革の中に「図書館・生涯学習市民センターの効率的効果的運営」を位置づけたからです。

市民の反対の声を議会に

 2014年1月、ついに市長が「複合6館へ指定管理者制度を導入し窓口一本化して効率化する」と表明。驚いた私たちはすぐさま「枚方市の図書館行政を考える会」を結成し、反対運動を続けてきました。指定管理者制度の効率化、経費削減はつまるところ人件費の削減で、期限付き、低賃金の非正規労働者を多く雇うことになり、継続的、安定的な運営が危うくなると市に訴え、請願、陳情、質問要請書を何度も提出し、社会教育部、中央図書館との協議も重ねてきました。

 運動を広げるために、他の「会」と連携し講演会の共催、ビラまき、署名活動を行いました。その連携においては、市民、司書職員、「平和で豊かな枚方を市民みんなでつくる会」手塚たかひろ議員や他の議員が各々の立場を生かし、情報交換・共有、開示請求による新しい情報の取り出しなど共に行い、当局に迫っていくことができました。また「図書館友の会全国連絡会」など図書館運動体からの情報提供や直接のサポートにも大きく支えられました。

 スタートが遅かったのですが、資料をもって議員まわりをすることにも力を入れました。3年前の2館試行導入の時の議会では導入のための条例案反対の議員が5名でしたが、昨年の議会では請願賛成、条例案反対の議員が9名に増えました。その議員たちが委員会や本議会で中味のある議論を展開し、当局に問題点を明確に突きつけました。

 残念ながら導入を許してしまいましたが、今後指定管理による図書館を見守り続け、問題があれば指摘し、直営に戻すことを目標に活動を続けていきたいと考えています。

市民自治の町への一歩

 今、香里ヶ丘図書館(単独の分館)の建て替えが始まり、それが竣工すれば指定管理者制度の導入がまた予定されています。周辺の3つの分室の廃止の動きも進んでいます。

 10月28日にはシンポジウムを開催し、行政への要請、分室廃止反対の署名行動にも取り組みます。

 図書館の大切な役割は、市民への本の貸し出し、レファランスサービス(調べ物相談)のみならず、豊富な資料を行政に提供し、町づくりを支え、学校教育を支援し、市の歴史をはじめ様々な資料を編纂(★へんさん)・保存することなどです。市の「知と文化の拠点」としての存在価値をもっと行政や議員の方々に意識していただき、市政に反映されるよう要望していきたいと思っています。

 市民の声が生かされる市民自治の町への一歩となる取り組みにしたいと思います。
 
◆シンポジウム
「枚方の図書館はどこから来て どこへ行くのか?!」
10月28日(日)13時30分〜 枚方市民会館第3、4集会室





 
ホームページに戻る
Copyright Weekly MDS