2018年10月26日 1548号

【安倍新閣僚がひどすぎる/早速、「教育勅語は使える」発言/改憲の野望支える腰ぎんちゃく】

 第4次安倍改造内閣の評判がすこぶる悪い。安倍首相が改憲実現のおともだち人事を行った結果、過去に言動が問題視された連中が新閣僚に大集合。世間からは「閉店前の在庫一掃」と揶揄され、御用メディアにも「舌禍の不安」を指摘されるありさまだ。案の定、新任の文部科学大臣から「教育勅語は使える」との発言がとびだした。

個人の尊重が大嫌い

 問題の発言は、柴山昌彦文科相の就任会見(10/2)でのもの。柴山は「権利とともに、義務や規律も教えていかないといけない」という持論を展開した後、教育勅語についての見解を問われ、こう語った。「現代風に解釈され、あるいはアレンジした形で、道徳などに使うことができる分野というのは十分にあるという意味では、普遍性を持っている部分がみてとれる」

 本来なら一発退場となる暴言だが、メディアの追及は弱く、柴山は居直りを決め込んでいる。ならば教えてやろう。「良いことも言っている」式の教育勅語擁護論がまったく成立しない理由を。

 教育勅語(教育ニ関スル勅語)は1890年に明治天皇の名前で発布された。戦前、戦中の軍国主義教育の指針となり、国家総動員体制を思想面から支えた。その核心は「一旦緩急アレバ義勇公ニ奉ジ以テ天壤無窮(てんじょうむきゅう)ノ皇運ヲ扶翼スベシ」というくだりにある。戦争になれば一身を捧げて天皇制国家のために尽くしなさい、というわけだ。

 安倍一派が教育勅語に執着する理由はここにある。連中は戦争国家にふさわしい意識、すなわち“国益(実は支配層の利益)は命を投げ出してでも守るべき”という価値観を、学校教育を通して子どもたちに刷り込みたいのだ。

 事実、柴山は「自由や権利に重きを置いた」日本国憲法や戦後教育を批判する文脈で教育勅語の活用に言及している。個人を尊重する考え方は戦争動員の妨げになると言いたいらしい。

 戦後、教育勅語は衆参両議院で「排除」「失効」が確認された(1948年)。衆院本会議での排除決議は「これらの詔勅の根本理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すもととなる」と明快に言い切っている。

 絶対権力者である天皇が特定の価値観や行動を国民に義務づけるという形式自体が、国民主権や基本的人権の尊重を掲げた日本国憲法とは相容れないということだ。教育勅語に「普遍性を持っている部分」などないのである。

反人権・極右が大集合

 それにしても、安倍改造内閣の新閣僚はひどすぎる。総裁選の論功行賞で選んだところ、安倍腰ぎんちゃくの“バカウヨ”だらけになったということか。連中の言動を簡単にふりかえっておこう。

 まず、唯一の女性閣僚として入閣した片山さつき(地方創生相)である。自民党の改憲草案の起草メンバーだった片山は「国民が権利は天から付与される、義務は果たさなくていいと思ってしまうような天賦人権論をとるのは止めよう、というのが私たちの基本的考え方です」との本音を披露していた。

 このように、正当な権利要求を「国家へのたかり行為」とみなす片山は生活保護受給者攻撃の旗を振り、ネトウヨ主催のヘイトデモにゲスト参加したこともある。

 歴史修正主義者は枚挙にいとまがない。桜田義孝(五輪担当相)は日本軍「慰安婦」問題に関する日韓合意のすぐ後(2016年1月)に、「職業としての売春婦だった。犠牲者だったかのような宣伝工作に惑わされ過ぎだ」と言い放ち、被害者及び韓国の世論を激怒させた。

 原田義昭(環境相)は「南京大虐殺や慰安婦の存在自体を、我が国はいまや否定しようとしている時にもかかわらず、(中国が世界記憶遺産に)申請しようとするのは承服できない」と発言。「LGBTは生産性がない」論稿で批判を浴びた杉田水脈(みお)(自民党衆院議員)を「国家の財産」とほめちぎっている。

支持率上昇効果なし

 科学技術・IT担当相に就任した平井卓也は広告代理店最大手・電通の出身。自民党ネットサポーターズクラブの代表として、ネトウヨの組織化に取り組んできた。自身もネトウヨ気質の持ち主で、福島瑞穂・社民党党首(当時)がネットの討論番組で発言していた際、「黙れ、ばばあ!」と書き込んでいた。

 大西英男(総務政務官)と長尾敬(内閣府政務官)のコンビも数々の暴言で知られる。「沖縄の世論は左翼勢力に乗っ取られている」と妄想を全開させた長尾。「マスコミを懲らしめよ」とぶち上げた大西。この2人を要職に起用したことをみても、安倍晋三首相が沖縄の民意を気にかけていないことがわかる。

 安倍首相と総裁選を争った石破茂の派閥からは山下貴司が法相のポストに起用された。山下は在ワシントン大使館で法律顧問をしていた際に、米国の裁判所で提起された戦後補償裁判を担当。「原告請求棄却」という日本政府にとっての勝訴に中心的な役割を果たしたという(10/2産経)。つまりはこれも論功行賞人事というわけだ。

   *  *  *

 これだけひどいメンツをよく集めたものだとため息が出る。安倍首相は「全員野球内閣」と命名したが、その実態は改憲最優先の「全員極右内閣」でしかない。当然、市民の反応は冷ややかで、恒例の支持率上昇効果もなかった。懲りない安倍首相にはこう言ってやりたい。「お前はもう死んでいる」と。  (M)



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