2018年11月02日 1549号

【憲法破壊の戦争法3年/海外派兵体制へ大綱見直し/軍事介入狙う海外基地恒久化】

 「集団的自衛権行使」を容認し、「いつでも、どこへでも」派兵可能な道を開いた戦争法。強行成立から3年、自衛隊は「多国籍軍」参加などの実態作りを隠さなくなった。海外基地の恒久化など「国際紛争への軍事介入」に突き進んでいる。

シナイ半島へ派兵

 戦争法強行成立から3年。「多国籍軍に自衛隊派遣検討」(9/17東京など)のニュースが流れた。エジプト・シナイ半島で、イスラエル、エジプト両軍を監視する「多国籍軍・監視団」(MFO)に陸上自衛隊員を派遣するという。

 MFOは、中東戦争後のイスラエル・エジプト間の平和条約(79年)を受けて、82年に活動を始めた。現在、米英など12か国(約1200人)が停戦を監視しているが、地域は「イスラム国」(IS)とエジプト軍との戦闘が絶えない「戦場」となっている。日本政府は司令部要員数人を派遣する計画で、年内にも調査団を送る。これまで、日本は拠出金を出していたが、いよいよ軍人を送ることになる。

 この多国籍軍は国連PKO(平和維持活動)とは異なる。参加するには、これまでならイラク戦争のように特別措置法をつくることが必要だった。その制約を取り払ったのが戦争法だ。

 自衛隊は多国籍軍での軍事行動のノウハウを蓄積しようと活動領域を広げている。米軍をはじめ、多国間での軍事演習もその一つだ。毎年タイで実施される「コブラ・ゴールド」。今年は1月〜2月の1か月間、タイ以外に米、韓、中、インドネシアなど7か国とともに軍事演習をした。2月フランス、4月には英国とともに海軍との初の合同演習。5月には米比合同軍事演習に参加。5〜6月にかけ、ベトナムで「パシフィック・パートナーシップ」、8月にオーストラリア、カナダ、ニュージーランドと南太平洋で軍事演習。明らかに太平洋からインド洋にかけた「洋上軍事行動」を重ねている。


領域なき軍事力

 自衛隊の洋上軍事行動は、安倍の「自由で開かれたインド太平洋戦略」に沿ったものだ。いま「領域横断(クロス・ドメイン)防衛構想」が提唱されている。宇宙、サイバー、電磁波攻撃などこれまで「戦場」と想定していない領域を横断的に防衛するものと説明されているが、地理的領域の広がりも意味している。シナイ半島も当然、「クロス・ドメイン」の範囲なのだ。

 「クロス・ドメイン」は、年末に予定されている「防衛計画の大綱」(防衛大綱)の見直しや「中期防衛力整備計画」(中期防)策定に向けた提言骨子(3月自民党安全保障調査会)のキーワード。空母や長距離ミサイルなどの導入を正当化するものとして言い出した。

 今の防衛大綱は、2013年12月に安倍政権により策定された。「統合機動防衛力」の名のもとに、軍事費増額に転じるベースとなった。自衛隊の組織・規模・装備などの長期的目標を定める基本方針である防衛大綱をわずか5年で見直すのは、戦争法の成立で制約のなくなった海外派兵に向けた方針を書き込むためだ。「いつでも、どこへでも」軍隊を派遣できる体制。その柱が領域の制約を取り払う「クロス・ドメイン防衛構想」なのだ。

 

海外基地の恒久化

 軍隊の役割はグローバル資本の権益確保にある。戦争法は「海外派兵フリー」を手にするためだった。ODA(政府開発援助)と軍隊は車の両輪だ。今、グローバル資本の市場争奪戦の一つになっているアフリカ。安倍の言う「自由で開かれたインド太平洋」の西の端はアフリカなのだ。自衛隊唯一の海外基地があるのもアフリカ東部、ジブチ。防衛省はこの基地を恒久化する方針を固めた(10/5産経)。

 ジブチの基地は、9年前「海賊対処法」によりソマリア沖に派遣された部隊用の一時的なものとされていた。すでに海賊行為はほとんどなく、駐留する必要性はない。それを恒久化するのは、なんとしてもアフリカに基地を維持したい理由があるからだ。

 ジブチの基地では、16年から邦人輸送訓練を行っている。アルジェリア人質事件(13年)のような場合、自衛隊による救出作戦を想定しているのだ。政府はODAの拠点として活用する案を持っている。

 ジブチには、米仏独中などの軍も駐留する。中国軍の基地には長期駐留にたえるコンクリート製の建物ができている。アフリカへの直接投資は、日本と比べ中国は桁違いに多い。自衛隊基地の恒久化も、中国の経済構想「一帯一路」に対抗する安倍の「インド太平洋構想」を軍事面で支える一つなのだ。

 軍隊の駐留は、資本の権益を確保するための軍事介入を前提としている。海外派兵と海外軍事基地。“殺し、殺される”戦争国家づくりを加速する安倍政権を一刻も早く打倒しなければ、憲法はますます骨抜きにされてしまう。
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