2018年11月02日 1549号

【安倍政権が入管難民法「改正」案 人権無視の外国人労働者導入策】

臨時国会に提出

 安倍政権は、10月24日開会の臨時国会に外国人労働者の受け入れ拡大に向けた入管難民法「改正」案を提出する。

 安倍首相は今年2月の経済財政諮問会議で「外国人受け入れについて、早急に検討を進める必要がある」と発言。6月の経済財政諮問会議「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太の方針)を経て、7月には「外国人の受入れ環境の整備に関する業務の基本方針について」を閣議決定している。

 骨太の方針は、「中小・小規模事業者をはじめとした人手不足は深刻化」との問題意識の下、「移民政策とは異なるものとして、外国人材の受入れを拡大するため、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材に関し、就労を目的とした新たな在留資格を創設する」とした。「一定の専門性・技能」を有する者を対象と「限定」してはいるものの、実際の方針検討で議論となったのは、農業、建設業、宿泊業等、「非熟練労働」とされる業種ばかりだ。

 新たな制度は、「専門性・技能」の建前とは異なり、非熟練=単純労働の分野で正面から外国人労働者を受け入れるためのものである。

 法改定で設けられる在留資格は、一定の日本語能力と技能を条件に就労を認める「1号」と、さらに難しい日本語能力と熟練した技能が求められる「2号」とに分けられる。1号の在留期間は最長5年とし家族の帯同を認めない。2号は事実上の永住や家族の帯同が認められる。

 一方、低賃金、無権利状態で多くの人権侵害を生み批判が広がっている技能実習制度は、新制度創設後も存続することが前提だ。3年〜5年の技能実習を修了した者については、新たな在留資格で求められる技能水準等を備えるものとみなされる。

 この技能実習制度も家族の帯同を認めていない。5年間の技能実習修了者がさらに5年間新たな在留資格で在留する場合、10年間にわたって家族と生活することができない重大な人権侵害が生じる。


すでに「移民大国」

 日本における在留外国人数は、2017年末で256万人を超え、過去15年間で約80万人の増加。国籍・地域の数は195に上っている。

 日本で働く外国人は増え続け、経済協力開発機構(OECD)35か国の外国人移住者統計(2015年)で、日本への流入者は前年比5万5千人増の約39万人だ。前年の5位から韓国を抜いて4位となった。日本はすでに事実上の「移民大国」である。

 国連等では「通常の居住地以外の国に移動し、少なくとも12か月間当該国に居住する人」を「移民(migrant)」と定義する。いま排外主義の危険な台頭があるが、EU各国など多くの国では、受け入れた外国人労働者について、労働力としてだけでなく社会で生活する人≠ナあることに着目し、共生のためのさまざまな施策がとられてきた。

 ドイツでは、2005年「移住の調整と制限並びに欧州連合市民及び外国人の滞在と統合の規制のための法律」を施行。同法は、ドイツ語講習のコース(600時間)や法令、文化、歴史に関する知識習得のコースの国庫負担実施などの内容を定めている。

 隣国韓国でも、2004年に導入された雇用許可制(非熟練労働者受入れ制度)の下、韓国政府の出先機関が送り出し業務を行うことで民間業者の介入を防止し人権侵害を防ぐ一定の役割を果たしている。2007年「在韓外国人処遇基本法」が制定され、多くの不十分な点はありながらも均等待遇(不当な差別の禁止)がうたわれている。

 

奴隷的労働力確保が狙い

 これに対し、骨太の方針は新たな在留資格の創設も「移民政策とは異なる」ことをあえて強調する。自民党の労働力確保に関する特命委員会・木村義雄委員長は、「移民」について「入国の時から永住を許可されて入国する人」と独自の定義を示し、「移民政策」には踏み込まないとする。

 言い換えれば、人≠ナはなく、低賃金・無権利でモノ扱いできる労働力≠フみがほしい―つまり、現在の技能実習制度と同様の奴隷的な労働力を求めているのだ。

 安倍政権による人権無視のの外国人労働力導入政策を許してはならない。技能実習制度を廃止し、国際人権諸条約の規定に従った「人権保障にかなった外国人受け入れ制度と多文化の共生する社会を構築すること」(10/5日本弁護士連合会「宣言」)こそ必要だ。 
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