2018年11月02日 1549号

【未来への責任(260)今こそ日韓市民の連帯を(下)】

 ドイツで「記憶・責任・未来」財団設立法が実現した背景には、戦後のニュルンベルク裁判(戦争犯罪を裁く国際軍事裁判)の後続裁判の中で、強制労働を行った企業経営者の戦争犯罪も追及され、企業経営者が断罪されていたこと、また、ドイツの東西分断により先送りを許されてきた一般戦争犯罪について、統一実現後には決着しなければならなかったとの事情もあった。

 しかし、それだけではない。1998年の総選挙で社民党・緑の党が、選挙綱領で強制労働問題の解決を打ち出して選挙戦を闘い、政権の座についたことも大きい。かりに総選挙でキリスト教民主同盟が勝利し、その政権(ドイツ統一を主導)が続いていたら問題は未解決のままにされたかも知れない。戦後処理をどのように進めるかは、政権のあり様=その国の行方をも規定するような課題である。

 ドイツはベルリンの壁崩壊、東西ドイツ統一後の自らの方向性を定めていく上で、過去の強制労働問題を解決すべし、という結論を出した(東方進出のため)。

 ひるがえって、この日本はどうだろうか。冷戦が終結し、南北朝鮮が国連に同時加盟し、韓国が旧ソ連・中国と国交を結んでも、日本は北朝鮮とはいまだに国交さえ結ばず、対中国敵視をも続けている。明治150年といってもいまだ「脱亜」のままに、米国追従。これでは侵略・植民地支配の「反省」は口先だけで、被害者に謝罪・賠償して、その国との関係の修復・構築を図ろうという方向には向かっていない。

 4・27板門店(パンムンジョム)宣言、6・12米朝共同声明により、朝鮮半島―東アジアは今、大きな転換点にある。9・18〜20に訪朝した文在寅(ムンジェイン)大統領は、9月19日夜、「5・1競技場」を埋めた北朝鮮市民15万人を前に演説した。「両首脳は朝鮮半島でこれ以上戦争はなく、新たな平和の時代が開かれたことを8千万の民族と全世界に厳粛に宣言した。白頭(ペクトゥ)から漢拏(ハルラ)まで、美しいわが山河を、永久に核兵器と核脅威のない平和の地にし、子孫に残すことを確約した」。これに対し、競技場を埋めた市民から大喝采が起こった。

 韓国では、2011年8月30日の憲法裁判所の決定、2012年5月24日の大法院判決によって、「1965年体制」の“終わり”が始まった。朴槿恵(パククネ)政権の2015年12・28「慰安婦」合意によって逆流が起きたが、キャンドル革命がそれを押し戻した。大法院と朴政権・外交部と金(キム)&張(チャン)法律事務所の3者が結託して、5・24判決を覆そうとした目論見も明るみに出、頓挫しつつある。平和の流れがさらに確かなものになっていくならば、「安保」によって歴史問題、植民地主義清算を封じ込めるという「65年体制」は最終的に終わりを迎える。

 平和と過去清算の流れをより確実に、より大きな流れにしていくため、日韓市民連帯、東アジア平和連帯を築いていくことが、私たちに問われている。

(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク 矢野秀喜)

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