2018年11月16日 1551号

【植民地主義の地金むき出し/ウソに満ちた日本政府の言い分】

 韓国大法院判決について安倍首相は「本件は、日韓請求権協定によって完全かつ最終的に解決している」と言い、「国際法に照らしてあり得ない判断」と突き放した。河野外相も「1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の法的基盤を根本から覆すもの」と断じ、韓国に対して「国際法違反の状態を是正」せよと威丈高に迫った。何と傲慢な物言いか。この国の支配層に潜む植民地主義の地金が表出したと言わざるを得ない。

 しかも、彼らの言っていることはほとんどウソである。

 第一に、「日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済み」は虚構でしかない。

 65年の日韓基本条約前文は「両国民間の関係の歴史的背景と、善隣関係及び主権の相互尊重の原則に基づく両国間の関係の正常化に対する相互の希望とを考慮し」、基本条約を締結するとしか規定していない。日本の植民地支配についての記述もなければ、それへの謝罪もない。同様に、請求権協定前文も「両国及びその国民の財産並びに両国及びその国民の間の請求権に関する問題を解決することを希望し」、協定を結ぶとしか規定していない。「請求権に関する問題」が生じた原因、理由については何も書かれていない。

 こんな条約・協定で、元徴用工の受けた肉体的精神的被害に対する賠償請求権が「解決済み」と見ることはできない。また、実際「解決済み」にならなかったことは、65年以降に在韓被爆者、サハリン残留者、日本軍「慰安婦」被害者などが被害回復を訴え、それに日本政府が対応せざるを得なかった事実から明らかである。

 第二に、国際法違反を続けているのは日本政府である。

 戦時中に日本が行った朝鮮人・中国人の強制連行・強制労働は強制労働禁止条約(1932年発効、同年日本批准)に違反する事案である。このことは99年3月にILO(国際労働機関)条約勧告適用専門家委員会が認定している。そして、専門家委員会は日本政府に対して繰り返し、被害者が満足するかたちで問題解決を図るよう促す意見書を出してきた。しかし、日本政府は「従う義務はない」と言って、これらの勧告を無視し被害者を放置している。日本政府のやっていることこそ国際法違反である。大法院判決は、人権を侵害された被害者を救済するものだ。

 第三に、この判決で日韓の友好協力関係の法的基盤が覆されるなどということはあり得ない。

 日韓は65年の基本条約・請求権協定等の締結をもって国交を正常化した。しかし、友好協力関係を維持、発展させることができたのは、95年の「村山談話」、98年の「日韓パートナーシップ宣言」、2010年の「菅談話」があったからである。これらの談話・宣言で、朝鮮植民地によって多大の損害と苦痛を与えたことを繰り返し反省し、謝罪してきたことが両国の友好をつなぎとめてきた。

 けれども、その謝罪は補償なき謝罪であった。その「欠落」を補うものが今回の判決である。判決が誠実に受けとめられ履行されるならば、日韓の信頼と友好協力関係はいっそう深まる。新日鐵住金は判決に従うべきである。それが未来を開く。

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