2018年11月30日 1553号

【老朽化した東海第2運転延長の暴挙 地元自治体・住民と結び再稼働阻止へ】

 11月7日、原子力規制委員会は運転開始から40年経過、老朽化した東海第2原発(茨城県)の20年間運転延長を認めた。東海第2原発は事故を起こした福島第1原発と同じ沸騰水型で、東日本大震災で津波被害を受けたことも福島第1と共通する。このような原発の運転延長を認める規制委の実態は今や原子力復活委員会≠サのものだ。

運転延長すべて容認

 福島原発事故後、2012年に改定された原子炉等規制法で、原発の運転期間は原則40年とされ、ごく例外的に1回に限って20年間の延長を認めるとされた。当時、国会での法案審議で政府は運転延長を「きわめて例外的なケース」と説明、田中俊一規制委員長(当時)も「相当困難」だと述べていた。ところが実際には運転延長申請があった3原発4基について、すべて申請通り延長を認めている。何が例外の根拠なのかの説明も一切なく、原発に反対する多くの市民が危惧したとおりの「例外の原則化」だ。

 東日本大震災当時、東海第2原発も福島原発と同じように津波に襲われ、外部電源はすべて失われた。非常用ディーゼル発電機が津波を免れたため辛うじて福島のような全電源喪失にはならなかった。このとき東海第2原発に押し寄せた津波は5・4メートルだが、東海第2原発の防潮堤はもともと4・9メートルしかなかった。防潮堤を6・1メートルにかさ上げする工事が完了したのは東日本大震災のわずか2日前、2011年3月9日だ。

 「津波があと70センチ高かったら、あるいは来るのがあと2日早かったら、東海第2も終わっていた」。村上達也・東海村長(当時)が紙一重の危機だったと証言する東海第2原発。もちろん首都圏に最も近い原発なのに避難計画もない。こんな状況の原発さえ運転延長を容認するなら「何でもあり」と同じことだ。規制委は福島を忘れたのか。


原電支える東電

 東海第2は原発専門会社、日本原子力発電(日本原電)の原発であり東京電力のものではない。東電の保有する福島第1・第2、柏崎刈羽の各原発はすべて東北電力の営業区域にある。自社の営業区域内には原発を1基も置かず、すべて他社の営業区域に押しつけている。そんなモラルハザードも福島事故の原因だ。

 運転延長に必要な資金は、東海第2から電力を購入する東電と東北電力が負担することになる。だが、福島事故後の東電は賠償資金の貸付に当たる法人「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」が株式の半数を保有する事実上の国営企業だ。保有全原発が止まっているためまったく仕事をしていない日本原電に、国営企業・東電を通じて税金が垂れ流され、その救済のため危険性を無視して運転延長が決められる。運転延長で東海第2が再稼働すれば電力購入でさらに税金が投入される。危険と無駄を両輪に暴走を続ける原子力ムラに歯止めをかけなければ次の事故は避けられない。

地元の闘いに希望

 希望は地元にある。東海第2原発の立地自治体である東海村に水戸市、那珂(なか)市、常陸太田市、ひたちなか市、日立市を加えた周辺6市村が、原発運転への事前了解権を含む安全協定を日本原電との間で結んだことだ。

 日本では、地元や周辺自治体が原発運転を拒否できる制度は過去、ほとんどなかった。原発立地自治体は事前了解権を含む安全協定を電力会社との間で結んでも、国からの交付金や電力会社による多額の「寄附金」によって絡め取られ、事前了解権を行使できなかった。周辺自治体に対しては、電力会社は事前了解権を絶対に与えなかった。自治体が原発を拒否できない日本型システムの行き着いた先が福島事故だった。

 原発周辺自治体が、これだけ広範囲で事前了解権を手にしたのは画期的だ。東海村はじめ周辺自治体と住民が一体となった闘いの成果である。

 水戸市議会は今年6月、国や県に東海第2原発の再稼働を認めないよう求める意見書を可決した。那珂市長も再稼働反対を表明している。規制委や裁判所が役割を完全に放棄した今、周辺6自治体とその住民の闘いが東海第2原発の行方を決める。これら6自治体に福島の事実を伝えるとともに、反原発世論に従うよう要求し、再稼働を阻止しなければならない。

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