2018年11月30日 1553号

【沖縄・辺野古新基地建設 資材搬入再開の暴挙 海外にも共感広げる玉城知事 国側が窮地に】

2か月半ぶりの搬入強行

 11月15日、沖縄防衛局はついに名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲートからの資材、石材などの搬入を再開した。翁長雄志(おながたけし)前知事の撤回表明以降、8月3日から搬入は止まっていた。10月30日の石井啓一国土交通大臣による埋め立て承認撤回の執行停止決定で11月1日から工事が再開されていたが、海上作業にとどまっていた。2か月半ぶりに陸上ゲートからダンプカーやミキサー車など3回にわたって101台入構。座り込む市民約70人は、県警機動隊のごぼう抜き強制排除で何度もゲート前から引きはがされた。

 辺野古沿岸域の海域では、「臨時制限区域」を示すオレンジ色の浮具フロートや油濁防止膜(オイルフェンス)を沖合に引き出す作業が連日続いている。抗議する市民のカヌーや抗議船を立ち入りさせないため海上保安庁のゴムボートが30隻以上も出動。海保の海猿≠スちがカヌーを転覆させ、抗議船に乗り込んではエンジンキーを抜き取る危険な行為が行われている。「臨時制限区域」とは、日米両政府の合意で辺野古沿岸域の一般人の常時立ち入りが禁止されている区域をさす。

 国は行政不服審査法に基づき私人≠ニして撤回執行停止を申し立てた。しかし、「臨時制限区域」では、私人の立ち入りは禁止され、入れるのは沖縄防衛局が認めた船舶だけ。区域内を使用しているのは間違いなく日本政府だ。埋め立てで新基地が建設されればそこは国有地になる。このどこが私人の立場なのか。

 さらにひどい政府のやり口がわかった。11月16日衆院安全保障委員会で共産党の赤嶺政賢議員が明らかにした。沖縄防衛局が申し立てた際に決裁押印した一人は、国土交通省から防衛省に出向していた幹部職員の遠藤仁彦次長であった。まさに裁判官が検察庁に出向して起訴状を書いていたのも同然だ。違法、無法きわまるアベ政治を許すことはできない。

 

訪米し、世界にも訴え

 玉城デニー沖縄県知事は、辺野古新基地反対を米政府や議会関係者、米国市民に伝えるため11月11日、訪米した。翁長前知事の初訪米が就任から約6か月後。玉城知事は約1か月後と異例の早さだ。

 訪米に呼応して11月7日、「玉城デニー知事を支持する世界のウチナーンチュによる声明」が、英語、スペイン語、ポルトガル語、日本語で発表された。900人以上の署名がすぐに集まった。世界に約42万人、北米には約10万5千人のウチナーンチュ(沖縄県出身者とその子孫)が生活している。明治以降、沖縄から多くのウチナーンチュが移民として海外に渡った。声明の発起人となったニューヨーク大学東アジア研究所の島袋まりあ教授は「『純粋日本人』どころか、『純粋沖縄人』という定義にも当てはまらない多くの海外のウチナーンチュが、多様性を持つデニーさんに勇気づけられている。私たち世界のウチナーンチュの力を引き出したのはデニーさんだ」と語った。

 米海兵隊員を父に、ウチナーンチュを母に持つ玉城デニー知事が「誰一人も取り残さない社会をめざす」としたメッセージは、多くのウチナーンチュに感動を与えた。多様性を大切にする玉城知事の誕生は、米国市民の間にも変化を起こしている。玉城知事の訴えで、これまで外国メディアに伝わりにくかった辺野古新基地建設の問題への共感が広がっており、米国議会や政府に沖縄県民の声を届けるチャンスも増える。

2月上旬にも県民投票

 沖縄県は11月9日、石井国交相に対し、埋め立て承認撤回の執行停止を取り消さなければ国地方係争処理委員会に審査を申し出ると事前通知した。国交相への文書で「(執行停止決定の)理由は明白に不合理で、違法性は明らかだ」と断じた。さらに「沖縄防衛局は行政不服審査法に基づいて執行停止を申し立てることはできない」「不適法な申し立てにより執行停止決定をする権限は国交相にはない」と指摘、決定を取り消すよう求めた。当然の主張だ。

 「辺野古沖の埋め立ての賛否を問う県民投票」は、2月上旬の3日または10日に実施される見通しだ。県内の石垣市、宜野湾市など6市がまだ県民投票実施について態度を保留しているが、県知事公室長などが各市を訪問し、協力を求める説明を続けている。

 辺野古埋め立てに使用される土砂を搬出する本部(もとぶ)町・塩川埠頭(ふとう)の修繕工事は早くても年明けになる。もし県民投票前に土砂投入されれば、県民の抗議が一層激しくなるのは必至だ。県民投票で、圧倒的な民意として改めて辺野古新基地反対が示されれば、県は沖縄防衛局に対し埋め立て承認の撤回を改めて行うことも可能となる。

 新基地建設で窮地に立たされているのは国の方だ。辺野古新基地は阻止できる。(N)
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