2018年11月30日 1553号

【未来への責任(262)遺骨問題解決のための国際シンポジウム】

 11月6日ソウルで、強制動員被害者遺骨問題解決のための国際シンポジウムが開かれた。主催は民族和解協力汎国民協議会など。シンポジウムは遺骨問題の解決を韓国と朝鮮民主主義人民共和国の統一課題にし、日本植民地支配の清算を共通の目標にしている。日本からの参加も多く、大きな盛り上がりを見せた。

 会場は、10月30日の新日鉄住金強制動員被害者の大法院判決を受けて熱気に包まれていた。遺骨問題は祖国に帰れなかった徴用工や軍人軍属など強制動員被害者の遺骨を探す取り組みである。判決批判キャンペーンが安倍総理を先頭に行われる日本の雰囲気とは全く違うし、植民地支配を断罪し、被害者の権利を回復した自信に満ち溢れている。

 判決以降、韓国KBSは4回にわたり強制動員遺骨問題を連続放送した。アメリカが太平洋ギルバート諸島タラワ島に集めた発掘遺骨のうちアジア系の遺骨を日本に返すのだが、同地域では韓国人1200人が戦死し、キムという名前の遺品も発掘されており、そのことをアメリカに訴えるべきだとの問題点が報道されていた。

 私の元にもKBS東京特派員からインタビュー取材の依頼があった。記者は「韓国で3回連続遺骨問題を報道したので、(みなさんが取り組む)日本政府との交渉をKBSが連続報道すれば韓国政府を動かす影響力が生まれると思う」と語った。そして11月3日、シベリアの日本人・朝鮮人混葬墓地が意図的に発掘されずに放置されていることが日本政府との交渉で明らかになった、と大々的に報道された。

 シンポジウムで北海道の殿平さんは、1945年玄界灘で遭難した厚労省所管の朝鮮人遺骨131体が埼玉県の金乗院から遭難現場の壱岐の天徳寺に移されたことを報告。沖縄・ガマフヤーの具志堅さんは本部町に埋められた朝鮮人を含む日本兵13体の遺骨発掘に日韓共同で取り組もうと提案した。韓国の遺族や日韓の支援者をニューギニアに案内してくださった岩手の岩渕さんからの報告も行われた。

 私は、イ・ヒジャ(太平洋戦争被害者補償推進協議会代表)さんら遺族とともに行った4回の厚労省交渉の経過を報告した。成立した戦没者遺骨収集推進法は対象から韓国人を排除したが抗議し、「韓国政府の具体的提案があれば検討する」との政府発言を引き出したこと。沖縄戦のDNA鑑定集団申請運動300人含め遺族の鑑定申請者が700人になったこと。歯だけを鑑定対象とした遺骨から、大腿骨なども認めさせ1万8000体の遺骨を厚労省に保管していること。日・朝・韓・米の首脳が遺骨の共同調査・共同発掘・共同鑑定を話し合うべきだとの提案は、即日報道された。イ・ヒジャさんは国際シンポジウムをこう締めくくった。「遺骨を家族の元に帰すために、日韓両国家が一生懸命努力している姿を見せることが被害者の慰めになる」

 12月、厚労省は沖縄県民被害者326人のDNA鑑定の結果を発表する。1人でも合致すれば世論は大きく動く。次はアジア太平洋地域の遺骨鑑定に発展する。2国間・多国間遺骨協定の締結に進まなければならない。

(戦没者遺骨を家族の元へ連絡会 上田慶司)

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