2018年11月30日 1553号

【みる…よむ…サナテレビ(501)/2018年11月10日配信 イラク平和テレビ局in Japan/電力大臣はどろぼうか/電気が来ない―イラク市民の怒り】

 イラクでは今、電気の供給が十分に行われず、各地で停電が続出している。市民生活にとっても経済にとっても大打撃だ。ところが政府は何の対策も取っていない。2018年8月、サナテレビはこの問題についてバグダッド市民にインタビューし、訴えを伝えた。

 イラクの電力不足は2003年の占領時からずっと続いている。実に15年間にわたって首都バグダッドでさえあちこちの家庭や地域で停電が頻発している。気温が50度を超える炎天下でクーラーが止まってしまい、耐えがたい生活が続いている。これが今年全土で起きた住民の抗議デモの大きな原因となっている。

 ある市民は「電気が来なければ、水の濾過(ろか)がされない。工場も動かないから失業者が出る。イラクの産業と経済全体にも非常に大きな悪影響を与えている」と批判する。

産油国なのになぜ

 イラクには発電するだけの資金がないのだろうか。2018年の国家予算は歳出約881億ドル(約10兆円)に上る。市民は「中東の近隣諸国、エジプト、シリア、ヨルダン、レバノン4か国の国家予算合計に匹敵する」と言う。世界有数の産油国であるイラク。資金がなくて電力供給ができないのではない。

 市民は「これまでの政府はどれも国の利益を守る政府ではありませんでした。残念ながら、特に首相と電力大臣には適任者がなかった」と厳しく指摘する。政府高官や政治家たちが電力にかかわる資金も着服していることで電気が市民に回ってこないのだ。

 市民はさらに、「何十億ドルもの国家予算はどこに行ったのでしょうか。電力大臣というのは泥棒ですか。あの政治家たちは国家機関の中にいる泥棒なのでしょうか。司法はどこにあるのですか。首相!」と腐敗政治家たち、特に直接の責任がある電力大臣と首相の責任を追及する。彼らは利権争いに没頭し、電気の供給さえまともにできない状況を放置している。

 日本政府はこのようなイラク政府に新たに3000億円のODA(政府開発援助)を提供しようとしている。日本の私たちとも大いに関係がある。イラク市民と連帯して、腐敗政権への援助をやめさせよう。

(イラク平和テレビ局 in Japan代表・森文洋)



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