2018年11月30日 1553号

【千葉原発被害者訴訟控訴審/国の責任否定した地裁の誤り正す】

 原発損害賠償集団訴訟のこれまでの地裁判決で唯一国の責任を認めなかった福島原発千葉訴訟第1陣。控訴審第2回口頭弁論が11月16日、東京高裁で開かれた。裁判長が交代したためこの日が実質的なスタートとなり、傍聴席はほぼ埋まった。

 浪江町から千葉に避難した男性が意見陳述。「15歳から農業を営み、町会議員をやり、町のために働いてきた。東電からは40年間、原発は絶対安全安心と言われ続けてきた。一審で国の責任は否定され、私たちにきちんと向き合ってくれていたのかと悔しくてしょうがない」。「そもそも絶対安全性というものはない」と法廷で開き直る被告に、「今さらそれはないだろう」と怒りをにじませた。

 原告側弁護士は責任論と損害論の両面で主張を展開。国の地震調査研究推進本部「長期評価」(2002年)の科学性・信頼性を強調し、“避難基準20ミリシーベルト”論に立つ損害賠償額算定は法に基づかない政策的決定だと不当性を訴えた。また、一審判決を「現地検証もしないで判決文を書いた。話にならない」と批判し、「控訴審ではぜひ現地検証を」と求めた。

 裁判後の集会には、同じく控訴審を闘う群馬訴訟・生業(なりわい)訴訟の原告・弁護士や、来年2月20日に一審判決を控えたかながわ訴訟の原告・支援者ら約60人が参加した。

 弁護団の滝沢信事務局長が「国の主張は“原発は絶対安全ではない”“何もしなかったわけではない”“何をしたとしても津波には勝てなかった”の3点。言い方は微妙に変わってきた」と報告。藤岡拓郎弁護士は「津波評価で過去の地震だけ参考にすればいいと言っていたのが、将来想定される地震も見ていくとし、予見の可能性や科学的知見についてわれわれの説明に近づいている。押してきている。東電刑事裁判では非常に重要な新証言が出ており、民事でも今後強い味方になる」と述べた。福武公子弁護団長は「国連の特別報告官が日本政府に対し、年間1ミリシーベルトをなぜ20ミリシーベルトに変えたのか理由をちゃんと説明せよ、と迫り、子どもや妊婦への影響を考えた帰還政策の見直しを求めている」と有利な状況を指摘した。

 最後に原告の女性が発言。「高裁では、なんとしてもこの国にはまだ正義が残っていることを示してもらいたい」。次回期日は来年2月15日と決まった。

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