2018年11月30日 1553号

【福島原発刑事訴訟/第34回公判/ 被害者遺族が意見陳述/12月26日検察側論告求刑へ/母は東京電力に殺された】

 東京電力旧経営陣3人の放射能大量放出犯罪を裁く訴訟は11月14日、東京地裁で第34回公判があり、被害者の遺族5人が意見陳述した。

 勝俣恒久元会長、武黒一郎・武藤栄元副社長の3被告は、福島第一原発から4・5`の双葉病院と隣接する介護施設「ドーヴィル双葉」の患者・入所者44人を死亡させたなどとして業務上過失致死傷罪に問われている。

 意見陳述した5人のうち2人は自ら出廷した。

 ドーヴィル双葉に入っていた両親を亡くした女性は「私より安全な場所にいると思っていたのに、先に命を絶たれた。悔しくてならない。分かっていて対策せず爆発した。未必の故意ではないか。誰一人責任をとっていないのは許すことができない」、女性の息子は「高度な注意義務を負う立場の人が責任をとらないと教訓にならない。二度と同じ思いをする人がないよう、遺族には突然の死をつきつけられた現実があることを忘れないでほしい」と語った。

 残る3人は陳述書を被害者代理人の弁護士や検察官役の指定弁護士が読み上げた。

全責任は上層部に

 双葉病院に入院していた父(当時97)を亡くした女性は「父は寝たきりで、2時間ごとに体位交換が必要。バスで避難する際、カテーテルを抜かれて水分・栄養分を補給できなくなり、亡くなった。結婚前、夫を実家へ連れて行った際、父は『ここは原発があるからな』。私は聞き流した。原発を不安に思っていた父が原発事故で亡くなるとは想像もしていなかった」。

 統合失調症だった男性の遺族は同原発で働いていたことがある。「東電の最高責任者は原発の基本構造もなぜ危険なのかも理解せず、経営にあたっていたのか。絶対に手を抜いてはいけないところまでコストカットされたおそれがある。慢心があったとしか言いようがない」と断罪した。

 事故当日、母が入院する双葉病院に行こうとするも車が通れず断念した女性。「翌日避難命令が出た。歩いてでも会いに行かなかったのは罪深い」と自らを責める。1か月以上後に対面した遺体は「骨と皮だけでミイラのよう。被告の方は、この時の気持ちが分かりますか。経営破たんした企業の社長は『社員は悪くない。すべて私の責任。社員を責めないでください』。これくらいのことを言えないのか。素直に『全責任はわれわれ上層部にある』と認めてほしい」と求め、「母は東京電力に殺されたと思っている」と結んだ。

 報告集会で河合弘之弁護士は「勝俣被告は眉をピクリとも動かさなかった。彼の人間性に深い絶望感を覚えた」。海渡雄一弁護士からは「12月26日論告求刑、27日われわれ被害者参加代理人の陳述、来年3月12・13日最終弁論。判決は5月連休明けか」との見通しが示された。

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