2018年12月07日 1554号

【ミリタリーウオッチング 戦争直結の軍事力強化を許すな 「専守防衛」と無縁なクロス・ドメイン防衛構想】

 「クロス・ドメイン」(領域横断)。今年の夏頃から「防衛」関連の報道で盛んに登場するようになった言葉だ。軍事上の概念では、陸・海・空ならびに宇宙空間・サイバー空間といった領域(ドメイン)のうち、複数の領域にまたがって攻撃ないし防衛を行うことを意味する。必ずしも厳密な規定はなく、あいまいな軍事用語でもある。

中国敵視の軍拡

 この用語は今年5月、自民党政務調査会が出した「新たな防衛計画の大綱及び中期防衛力整備計画の策定に向けた提言」に登場した。副題も「多次元横断(クロス・ドメイン)防衛構想の実現に向けて」となっている。新防衛大綱及び中期防衛力整備計画は12月末に政府発表される。そのキャッチフレーズとして、この用語が使われ出したことは間違いない。

 防衛省は、今年の防衛白書からこれまで使われていた「統合機動防衛力」という用語を消した。8月末には来年度の概算要求について「我が国の防衛と予算」と題する国民向けの説明書を出した。その冒頭「概算要求の考え方」のページには「我が国を取り巻く厳しい安全保障環境を踏まえれば、防衛力の『質』及び『量』を必要かつ十分に確保することが不可決。陸・海・空という従来の領域にとどまらず、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の活用が死活的に重要になっている。新たな領域を含め、領域横断(クロス・ドメイン)作戦を実現できる体制を構築することが必要」との記述がある。傍線部分はわざわざ赤字で目立つよう印字されている。軍事力の増強については、どちらかいうとさりげない表現で済ましていたこれまでとは明らかに異なる。

 この説明書の半分以上が「領域横断的(クロス・ドメイン)な防衛力の強化」関連に費やされている。「クロス・ドメイン」という目新しい用語でわかりにくくされているが、内容を見れば、安倍政権の狙いが主に中国を敵視した新たな軍拡にあることは明白だ。

先制攻撃用兵器を爆買い

 たとえば、【宇宙領域】ではXバンド防衛通信衛星の整備その他で535億円。【サイバー領域】では防衛隊の充実強化が主軸。【電磁波領域】ではF15戦闘機の電子戦能力増強などで540億円。【航空領域】ではF35Aの取得等で1391億円。相手の脅威圏外(攻撃射程の範囲外など)からF35で攻撃できるスタンド・オフ・ミサイル(JSM)の取得に73億円。滞空無人機グローバルホーク関連189億円、新早期警戒機E2Dの取得関連が809億円など。【海上領域】では護衛艦2隻の建造で995億円、潜水艦1隻建造で711億円。そして、【弾道ミサイル防衛】関連はイージス・アショアを含む4244億円などなど。

 これらすべてに共通するのは、驚くほど高額であることとともに、自衛隊創設以来、日本政府が「国是」のように繰り返してきた「専守防衛」とはおよそ無縁な先制攻撃用軍備であることだ。「クロス・ドメイン」とは、海外での戦争に直結する武力による威嚇と武力の行使に他ならない。

 今、これに断固たるSTOP!をかけていく闘いが問われている。

藤田 なぎ
平和と生活をむすぶ会

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