2018年12月14日 1555号

【未来への責任(263)日本政府・企業は過去清算を果たせ】

 日韓条約・請求権協定は1951年10月から7次の交渉を経て締結まで14年かかった。1910年韓国併合以降の植民地支配が違法と主張する韓国側と、条約の締結で過去の法律が無効になると主張する日本政府との間に根本的な対立があったためだ。最終的に「もはや」無効であるという文言でどちらにも解釈できるように政治的決着が図られ、1965年にようやく締結にこぎつけた。

 請求権協定で定められた5億ドルの援助について日本政府は「独立祝い金」=経済援助であり植民地支配に対する賠償ではないと言い切った。一方、時の韓国軍事政権は国内的には「賠償金」であると説明しながら、そのほとんどを経済成長資金につぎ込んだ。

 しかし2002年に誕生した盧武鉉(ノムヒョン)文民政権は、日本の植民地支配における強制動員被害者、四・三事件の犠牲者や朝鮮戦争における老斤里(ノグンニ)などの民間人虐殺、独裁政権下での拷問死、「政治犯」でっち上げ事件など、以前権力者によって行われた不正をただす。被害者の名誉と権利の回復を図り、将来に向けて権力による人権侵害を許さない社会を作るために「過去事清算」を重点施策として推進した。

 このような流れの中で強制動員被害者が起こした情報公開裁判により日韓条約に関わる公文書が公開され、日韓両政府が植民地支配責任を曖昧にしたまま条約を締結した経過やその後の韓国政府による被害者への「補償」も不十分であることが明らかにされてきたのだ。文書公開を機に韓国政府は「韓日会談文書公開後続対策関連民官共同委員会」を設け、「韓日請求権協定は基本的に日本の植民地支配賠償を請求するためのものではなく、サンフランシスコ条約第4条に基づく韓日両国間の財政的・民事的債権債務関係を解決するためのものであった」とした。そして「強制動員被害者の痛みを治癒するため、道義的・援護的次元と国民統合の側面から、政府支援対策」が必要として、亡くなった被害者一人当たり2000万ウォンの慰労金の支給や生存者への医療援助など追加的施策を実施してきた。

 2012年には強制動員被害者の損害賠償請求権が消滅していないという大法院判決が下され、差し戻し審で被害者1人当たり1億ウォンの支払いを新日鉄住金に命じる判決が仮執行宣言付きで出された。4人の原告のうち3人が差し戻し審後に亡くなっている。また、11月29日に大法院判決が出された三菱重工広島工場で被爆した元徴用工の裁判は、2012年大法院判決の時にすでに原告5人全員が亡くなっていた。戦後73年、日韓条約締結から53年、残された被害者にもう時間はない。

 10月30日の大法院判決では「請求権協定で強制動員慰謝料請求権について明確に定めていない責任は協定を締結した当事者らが負担すべきであり、これを被害者らに転嫁してはならない」との2人の補充意見で結ばれている。当事者とは日韓両政府であり、次に「過去清算」を果たすべきは日本政府と強制連行した企業ではないか。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 中田光信)

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