2018年12月14日 1555号

【原発避難者2団体が共同行動/ひとりも路頭に迷わせない/共同アピールに96団体678人賛同 福島県と支援継続を交渉】

 ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)と避難者の会(「避難の権利」を求める全国避難者の会)が主催して11月27日、福島市内で「原発避難者をひとりも路頭に迷わせない!原発避難者の住宅と人権保障を求める共同行動」が行われた。

 区域外避難者の住宅支援策の継続、強制避難区域の住宅無償提供の継続など8項目の要求を柱にした「共同アピール」には、呼びかけからわずか3週間で96団体・678人が賛同。午前中の福島県交渉の場で提出した。

国連の声明も軽視

 交渉では、「来年3月末で民間家賃補助が終了し国家公務員住宅の退去が強行されれば、路頭に迷う区域外避難者が出ることは明らか。支援の継続を」と訴えたが、県は「新たな支援策は考えていない。個別事情に基づき、個別に対応する」と繰り返す。しかし、国家公務員住宅入居者への戸別訪問は2割にすぎず、約2000の家賃補助受給世帯の生活実態意向調査は未実施のままだ。

 「避難指示が解除された区域の避難者も含め、来年4月以降、行き場のない世帯が出る。強制的な追い出しはするな」との要請に、否定はせず「寄り添って対応する」と返答。帰還困難区域の2020年3月住宅無償提供打ち切り撤回の要請には、沈黙した。個別相談では解決にならず、経済的支援が不可欠であることが明白になった。また、国連人権理事会特別報告者の「帰還政策見直し」声明に関して「様々な考え方があると受け止めている」とし、国際機関の指摘を軽んじる県の姿勢に批判の声が上がった。

「復興」せず多くが廃業

 午後の緊急集会には県内外から60人が参加し、共同行動の強化を確認した。ひだんれん幹事の村田弘さん(かながわ訴訟原告団長)は「被害者であるはずの福島県が加害者の国に抵抗しないのはおかしい。政策変更まで粘り強く闘う」と決意。避難者の会の大賀あや子さん(新潟に避難中)は「福島県内ですら権利が実現されておらず、福島県外の避難者はもっと困難であることを話して、共同アピールに名を連ねてもらった」と報告した。

 新潟に避難している佐藤直樹さんは「新潟県は独自に避難者に1万円を補助してきたが、福島県が支援策を打ち切ればそれも厳しくなる。帰還を迫られる」。山形に避難し、住宅追い出し訴訟の“被告”とされた武田徹さんは「残る者の実態調査をやらなければ何も解明しないはず。非暴力・不服従でがんばる」と語った。

 帰還困難区域からの参加もあった。浪江町津島の今野秀則さん(津島訴訟原告団長)は「一切を奪われ放浪の旅を強いられている。ふるさとに帰れず寂しいという住民から避難先の住宅を取り上げることまではよもやしないと考えていたが」と怒りをにじませ、「こういう場を設けてくれてありがたい。団結していこう」。避難指示解除から1年半たった川俣町山木屋の菅野清一さん(福島原発被害山木屋原告団長)は「50歳以上が8割を占め、子どもは15人で小中一貫校も閉鎖の事態に。150億円使って復興事業を起こしたが、多くが廃業した。首長が国を向いている下で、地方議会の役割、民主主義の根幹が問われている」と訴える。

 特別講演で、反貧困ネットワーク代表世話人の宇都宮健児さん(元日弁連会長)は住宅打ち切りと人権問題・貧困問題について展開。「国際基準から見れば日本はとんでもない国になっている。企業に都合がいいからと公営住宅の建設が減少し、都は20年間新設がない。他の国では家賃補助は当たり前。当事者のがんばりが大事で、4万社あったサラ金が2千社になったのは当事者の運動の成果だ。韓国の市民運動にも学びたい」と話した。

被害者分断を許さぬ

 最後に、ひだんれん共同代表の武藤類子さんが京都訴訟原告団共同代表・福島敦子さんからの連帯メッセージを読み上げ、「いろんな立場の人の共同行動の継続を」とまとめた。

 集会後は福島駅前でプラカードを掲げてスタンディングアピール。浪江から兵庫に避難中の菅野みずえさんもかけつけた。子ども脱被ばく裁判原告団長の今野寿美雄さんは「区域外避難者も区域内避難者も在住者も同じ被害者です。分断されずに声を上げてください」と通行人に呼びかけた。

 共同アピールは、1000人以上を目標に賛同人を広げ、12月7日内閣府・復興庁に提出される。



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