2018年12月21日 1556号

【沖縄辺野古新基地建設/埋め立て土砂投入にNO/壮大な環境破壊 事業費10倍、2兆5千億円垂れ流し】

 辺野古新基地建設で政府は12月14日にも埋め立て土砂の投入を狙っている。違法に違法を重ね、市民に暴力をふるい、平然とウソまでつく。

強行譲らぬ安倍

 新基地建設ノーの民意を踏みにじり、安倍政権は辺野古新基地建設のための埋め立て土砂投入を強行しようとしている。

 沖縄防衛局は当初、埋め立て土砂の一部を沖縄県本部(もとぶ)町で採取し、本部港からの搬出を予定していた。しかし、台風被害により本部港を使用することができなくなると、名護市内の民間港である琉球セメントの桟橋から搬出するという奇策にでた。

 辺野古新基地建設工事で、沖縄防衛局はこれまでいくつもの違法行為を重ねてきたが、民間港からの土砂搬出を強行すればまたもや法を犯すこととなる。

 沖縄県公共用財産管理規則は、港を所有する琉球セメントがその施設を転貸することを禁じている。埋め立て土砂搬出に桟橋を使用しようとしているのが防衛局であれば、禁止されている転貸にあたる。一方、桟橋使用が琉球セメントであれば、琉球セメントは県赤土等流出防止条例が定める届出が必要となり、届け出以降45日が経過するまで事業実施ができない。県はこの間に流出防止対策を審査し必要な措置を命じることになる。

 事業主体が国なら転貸禁止に抵触し、琉球セメントであれば、無届けの事業実施で条例違反となる。

 12月3日、岩屋毅防衛大臣は玉城デニー知事に12月14日土砂投入を通知した。

 翌4日、岩屋毅防衛大臣は伊波洋一参院議員の質問に対し「積み込みは琉球セメントが行った」と答弁した(参院外交防衛委)。この答弁で、事業主体が琉球セメントであることが確定。琉球セメントが県に届け出なければならず、その後45日間は搬出することができない。岩屋は条例違反を知っていて土砂投入を通知したのだ。

 しかも、搬出しようとしているのは、環境保全図書等に記載された「沖縄産の黒石岩ズリ(破砕された岩石)」ではなく、赤土が大量に含まれた土砂だ。赤土は砕石と異なり粒子が細かく海への流出でサンゴの死滅など環境破壊の元凶となる。沖縄では農地から海への赤土流出対策に苦慮してきた。その赤土を国は投入しようとしている。基地建設のためなら環境破壊もお構いなしだ。

「早期返還」に寄与せず

 基地建設のためなら平然と違法行為に及ぶ安倍は、沖縄県との集中協議も形骸化させた。

 国は「一日も早い普天間基地の返還のため」として新基地建設の必要性を主張してきた。だが、新基地建設は「一日も早い返還」にはつながらない。県はこのことを集中協議で指摘してきた。

 まずは工期だ。公有水面埋立承認願書に国は、埋め立て工事に5年の工期を設定していた。しかし、その後表面化した「マヨネーズ状の軟弱地盤」改良に5年、埋立地への施設建設に3年かかると県は岩国基地建設時の実績から試算。基地が使用できるまで最短でも13年かかると指摘した。

 玉城知事は県・国の集中協議で「一日も早い普天間基地の危険除去が必要だが、辺野古移設ではさらに返還が遅れることが危惧される」と新基地建設からの撤退を説いた。この指摘に国はまともに弁明もせず「辺野古移設が唯一の選択肢」と繰り返すだけ。

 また、工事費の積算はでたらめだ。埋立承認撤回の不服審査で沖縄防衛局が国交相に提出した資料では、護岸7か所を建設しただけの現状で、契約金額は1426億円に上る。埋立承認願書の資金計画では78億円だった。すでに総事業費2405億円の6割を食いつぶしてしまっている。しかも、未着手の埋め立て工程からが最も費用がかかる。県は、現計画のままでも総事業費は10倍の2兆4千億円、さらに地盤改良、土砂の追加調達で1500億円が必要となり、総事業費は2兆5500億円に膨らむと試算している。埋め立て費用だけでも国の計画は破綻している。壮大な無駄遣いで環境破壊するのみだ。追加予算調達が滞れば、完成までの期間はさらに延びる。

海外派兵出撃拠点化も

 集中協議に真摯に臨んだ県に対して、木で鼻をくくったような回答。繰り返されてきた機動隊、海上保安庁による反対運動への暴力とリーダーの不当逮捕・長期拘禁。殺人鉄板、カミソリ刃付き有刺鉄線の設置。安倍は「沖縄の方々に寄り添う」と口にするだけで、その実、沖縄を敵視し差別している。

 ここまで強硬に建設しようとするのは、米軍のためだけではない。米国内では長年海兵隊不要論やグアム移転など地球規模での米軍再編が取りざたされてきた。日本政府の経費負担で建設するのならさせておこう≠ニいうのが米国のスタンスだ。

 辺野古新基地が必要なのは米軍よりむしろ安倍政権だ。自衛隊の南西諸島シフトを進める安倍は、将来、米軍・自衛隊の新基地共用など自衛隊基地としての使用を視野に入れている。戦争法や改憲、先制攻撃兵器の大量導入とセットになった自衛隊海外派兵出撃基地化の思惑すら透けて見える。現地への連帯とともに全国での辺野古新基地建設反対運動の一層の強化が必要だ。



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