2018年12月21日 1556号

【維新大阪市政の教育支配にNO 不起立処分取消へ人事委員会で証言 戦争への「調教教育」に加担せず 寄稿 教職員なかまユニオン 松田幹雄】

 12月6日、大阪市役所で市立中学校教員松田幹雄さんの「君が代」不起立処分取消請求にかかわる人事委員会口頭公開審理が行われた。請求から3年余、満席の傍聴者を背にした本人尋問では、維新市政・首切り条例下の「君が代」処分の不当性を暴き、子どもに国家への服従を強要する「調教教育]加担を拒否する不起立だったことを明快に主張した。証言を終えた松田さんに思いを寄せてもらった。

「調教教育」とは

 証人尋問に先立つ弁護団会議で、現在の「君が代」強制のあり方について私が「調教教育」と言っていることの意味を確認しました。

 なぜ「調教教育」なのか。それは、かつて天皇治世の永遠を願う歌として臣民に歌わせ、天皇のために命を捨てることを美徳と教えた教育の重要な柱であった「君が代」の歴史、その意味と変遷をきちんと説明しないまま生徒に起立・斉唱を強制する「教育」だからであり、強制によって式参列者全員が「起立・斉唱」する場面をつくりだすことで、生徒に国家を「崇高な存在」と「感得」させ無自覚に国に従おうとする意識を刷り込む「教育」だからです。

 そして、職務命令に従って起立・斉唱することは、自分の姿を通じて生徒に国旗国歌条例が目的とする「国を愛する態度」を強要する役割を担うことになる。少数であっても必ず存在する、「君が代」の歴史ゆえに歌うことに拒否感をもつ生徒をさらに追いつめる。それは、私自身の教育活動の中でつかんだ「自分の保身のために他の誰かに犠牲を強いることはしない」という信念に反する行為なので、起立・斉唱職務命令には従えない―こうした不起立の理由を確認して証言に臨みました。

戦争への強権は拒否

 証人尋問で、冠木(かぶき)克彦弁護士が2015年3月卒業式に至る過程をていねいに聞いてくれました。

 私は、まさに「調教教育」を命じている同年1月教育長通知を批判し見解を求めたにもかかわらず、校長・市教委はまったく答えなかったこと、生徒に「卒業式・入学式の国旗・国歌、『日の丸』・『君が代』」についての事実を説明するために学校で作成した学習資料の活用・配布を私の処分後に禁止したことを証言。また、校長は不起立によって卒業式が「混乱」し生徒に迷惑がかかることを理由に起立・斉唱を強制しようとしたが、まったく「混乱」はなく、私の不起立を見た生徒・保護者がいたかどうかも分からないものであったことなどを明らかにしました。

 市教委・校長は、「君が代」は「国歌」一般に、「君が代」不起立は「ルールを守らないこと」に話をすり替えます。「生徒のため」を口実に「調教教育」への加担を迫ります。しかし、その本質は、国家方針に逆らうと自分の身が危ないという保身ではないでしょうか。

 10月公開審理の証言で校長は「ルールが間違っていると考えていても、決められたルールには従うのが当然」と言いました。私は「本当にそうか」とすべての人に問いかけたいと思っています。戦争に向けた国づくりが強権によって進められている今日、日本社会に生きるすべての者が問われていると思うからです。

 今後、最終書面を提出し、裁決となります。戦争に向けた教育支配を許さないため闘い続けたいと思います。ご支援よろしくお願いします。

維新支配に異議 不起立処分撤回の闘い

 大阪市では2012年、維新・橋下市長が教職員に「君が代」起立・斉唱を義務付ける「国旗国歌条例」と同一職務命令違反3回で免職とする「職員基本条例」を制定。この年の「君が代」不起立処分を経て、翌年3月卒業式の後、市教委は「全教職員が起立・斉唱した」と発表した。

 松田さんは2015年3月の卒業式で不起立。5月の戒告処分に対し、7月大阪市人事委員会に処分取り消しの審査請求を行った。「君が代」処分と闘うグループZAZAに加わるとともに、市民とともにD-TaC(Democracy for Teachers and Children〜「君が代」処分撤回!松田さんとともに〜)を結成。「君が代」強制・「調教教育」に反対し子どもの人権を尊重した指導への転換を求めて市教委、学校要請行動や中学生ビラまきを継続してきた。

 大阪市では「君が代」処分者で初の定年退職を迎え再任用を希望し、2016年4月、多くの支援によって排除を許さず再任用実現。現在市立中学校に勤務し、教職員なかまユニオンの一員として維新の教育支配と闘っている。



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