2018年12月21日 1556号

【ジュゴン訴訟控訴審に勝利し 工事を止めよう/ジュゴン保護キャンペーンセンターが集会/署名7625筆を環境省に提出】

 沖縄の真喜志好一さん、東恩納琢磨さんらと日米のNGOが米国防総省を相手取って2003年、サンフランシスコ連邦地裁に提訴した「ジュゴン訴訟」。曲折を経て今年8月、国防総省の主張を全面的に認める原告敗訴の判決が出され、原告側は9月24日、連邦高裁に控訴した。

 控訴審はどう進むのか、基地建設からジュゴンを守るためにできることは何か、を考えようとSDCC(ジュゴン保護キャンペーンセンター)は12月1日、都内で報告集会を開いた。政府・沖縄防衛局が埋め立て土砂の搬出を準備し、辺野古・大浦湾への投入を強行しようと急ぐ緊迫した情勢下、参加者はSDCC国際担当の吉川秀樹さんの話に真剣に耳を傾けた。

 「ジュゴン訴訟は15年にわたる国際連帯の闘い」と吉川さんは言う。文化的歴史的価値を持つ建造物などの保護を目的とする米NHPA(国家歴史保存法)は米国外の文化財にも適用される(同法402条)ことに着目し、日本の天然記念物である文化的歴史的存在としてのジュゴンの保全を求めた訴訟だ。NHPAが初めて米国外で、かつ動物に適用され、沖縄そして世界の米軍基地問題を米国の司法の場で争う前例を作った。

 原告の訴えはシンプルで、NHPA402条が定める「考慮の手続き」を国防総省は履行せよ、というもの。考慮の手続きとは、基地建設がジュゴンに影響を与えるかどうかを科学的調査や地元との協議などを踏まえて検証し、影響がある場合は緩和・回避の措置を講じることをさす。司法判断は08年1月原告勝訴、12年2月裁判休止、15年2月原告申し立て却下、17年8月地裁差し戻しと二転三転した末、今年8月1日の「国防総省が行った『考慮の手続き』は適切。『ジュゴンに悪影響なし』の結論は妥当」とする地裁判決に至る。

 判決の判断材料となったのは、国防総省が14年4月、連邦地裁に提出した報告文書だ。日本政府の環境アセス(12年12月)や仲井真元知事の埋め立て承認(13年12月)は盛り込まれているが、14年5〜7月にジュゴンの食(は)み跡が多数見つかったこと、工事の影響で行方不明のジュゴンがいることには触れていない。埋め立て承認が撤回されたのは、判決後の8月31日だった。

 だが、14年4月以降でただ一つ判決が言及していることがある。今年4月、翁長前知事が国防総省に「協議」を促した要請文だ。吉川さんは「14年4月以降の情報、承認撤回やジュゴンの危機的状況を控訴審に持ち込めるかが重要になってくる」と指摘し、米政府の独立行政機関である「海洋哺乳類委員会」「国家歴史保存諮問委員会」への働きかけ、米国の原告・弁護士への支援・連帯を強めようと呼びかけた。

海勢頭豊ライブも

 SDCC共同代表の海勢頭豊さんは「沖縄のジュゴン信仰はジュゴンのように無防備でおとなしく清(きよ)らな勇気を持つこと。“武”という字は戦(いくさ)を止めること。こういう歴史が表に出ては困るから明治政府は琉球処分をした」と話し、『辺野古旅情』など5曲を歌った。

 集会の前日、SDCCは政府交渉を実施。署名「沖縄のジュゴン、ノグチゲラ、ヤンバルクイナを守ろう」7625筆を環境省に提出した(累計1万9364筆)。

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