2018年12月21日 1556号

【みる…よむ…サナテレビ(502)/2018年12月8日配信 イラク平和テレビ局in Japan/深刻化する若者の失業/―惨状をもたらしたのは議会と政府だ―】

 イラクでは若者の失業が多く大きな社会問題になっている。将来に絶望して自暴自棄になる若者も出ているという。その原因は何か。そして解決できるのだろうか。2018年10月、サナテレビはこの問題についてバグダッド市民にインタビューを行った。

 市民たちは若者の深刻な失業の状態を次々に訴える。「失業した若者たちは、町に出て悪い行為に走り、家族と社会に暴言を吐くようになっている」。長い人生の出発点で、イラクの若者は生活の展望を奪われ、このような状況に追い込まれている。

 では、国民の生活に責任を持つべき政府は何をしているのだろうか。市民は「雇用の機会はあるのに、国は若者を助けたいと思っていないのが実態だ」と語る。「工場はあるのに閉鎖されたままです。大規模な生産設備があってすべての若者を雇い入れることができるのに、その設備は閉鎖されています」。若者の失業はイラク政府の政策によって意図的に作り出されているのである。

 高学歴の若者も失業に苦しんでいる。「若者が大学で勉強をして卒業しても失業している」状態だ。ある市民は「若者にとっては殴られているようなものだ」と言う。人生の最初から仕事が見つからない若者の受ける精神的ショックは想像に難くない。

 「何千何万もの若者が大学を卒業した後、明日の生活もままならない不安定な仕事にしかつけないでいる」「修士号や博士号といった高い学歴をもちながら失業している人たちが山ほどいる」。そうした姿は、政府が若者の失業問題に対していかに冷淡な態度を取っているかを示している。

 もちろん市民たちは黙ってはいない。バグダッド中心部のタハリール広場で「こんな若者の惨状を生み出したのは議会と政府だ」と声を上げ、「なぜこんな高い学歴を持つ若者がそれをいかせる仕事につけないのか」と問いただす。仕事を提供する代わりに2000ドルも3000ドルも賄賂を取る腐敗政治家たちに抗議を突きつけている。

 今、イラクでは、失業に反対し政府に雇用機会を要求して各地で抗議行動が展開されている。失業を許さない市民・労働者のこの闘いに連帯したい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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