2018年12月28日 1557号

【原発賠償京都訴訟 控訴審/争点を明確にした弁論で圧倒/傍聴席は満席/原告意気高く】

 原発賠償京都訴訟の控訴審第1回口頭弁論が12月14日、大阪高等裁判所で開かれた。西日本の避難者集団訴訟では初めての控訴審となるため、マスコミの関心も高く、75席しか確保されなかった一般傍聴席の抽選に125人が臨んだ。

「命と向き合って判断を」

 冒頭、原告の共同代表の福島敦子さんが意見陳述。わずか5分という短い時間に原告一人ひとりの思いを込めた。原発事故をなかったものにしたいがために避難者を住宅から追い出し、小児甲状腺がんが多発しても放射能との因果関係を否定する政府の姿勢を批判し、避難の正当性を主張。最後に立ち上がって、「私たち原告一人一人の『命』と裁判官のみなさまの『命』と向き合って判断してほしい」と訴えた。

 控訴審のポイントは「避難の相当性」と「正当な賠償額」を認めさせることにある。

 まず高木弁護士が「原判決は公衆被曝限度(年1_シーベルト)を規定した国内法を無視しており誤りである」とし、「公衆被曝限度年1_シーベルトを超える地域から避難することは最も重要な社会規範である国内法に照らしても相当な行為である」と主張した。特に「原判決は土壌汚染を軽視し、内部被曝を無視している」と続け、内部被曝の身体への影響は外部被曝より大きいこと、チェルノブイリ法では土壌汚染度から被曝量が推計されていることを訴えた。

 これを受け鈴木弁護士は、「原判決は4万ベクレル/ u(放射線管理区域)という土壌汚染の意味を理解していない。管理区域以上の汚染地域から避難するのは社会通念上相当である」と避難の相当性を念押しした。そのうえで、原判決が避難の時期を2012年4月1日までとしたことに、理由とする子ども避難者数の減少傾向の誤りを指摘した。京都府においては4月1日以降も福島県内からの累計受け入れ避難者数は確実に増加していることを挙げた。

 井関弁護士は賠償額、賠償期間を取り上げた。「避難指示を受けた者の慰謝料は月額10万円に対し、区域外避難者の慰謝料は月額にすると1万2500円」。担当原告が心身に深刻な不調をきたしている例を紹介し原発事故被害の過酷さを訴えた。「交通事故で通院8か月の慰謝料が100万円を超えるのと比較しても30万円の慰謝料はあまりに低額である」。原判決はコミュニティ侵害を固有の損害とは認めず、慰謝料算定で考慮すれば足りるとしたが、この低額の慰謝料で考慮されたとは思えない。「自然、人間関係、文化など権利利益を包含するコミュニティが不可逆的に変容させられ、元には戻らなくなった。コミュニティは平穏生活権の基盤であり、何物にも代えがたい価値を持つ」と正当な評価を求めた。

「責任逃れするな」

 国側代理人は、群馬訴訟控訴審から各地の訴訟でくりかえしている「国に責任なし」を主張。「安全性には相対的安全性と絶対的安全性があり、原発の規制基準に求められていたのは相対的安全性であった」というのだ。聞き取れないほどの小さな声だった。

 聞き捨てならない言葉に「責任逃れの言い訳じゃないか。また事故が起きるじゃないか」。原告の一人がたまらず声を上げた。

 今回の口頭弁論は、原告側代理人の原判決批判が争点を明確に示し、被告の主張を圧倒した弁論になった。

 期日終了後の報告集会にも100人以上が参加。会場は満杯となった。原告一人ひとりが控訴審の感想とともに決意を語った。支援・激励に訪れた各地訴訟原告団(かながわ・愛知岐阜・関西・ひょうご)や原発被害者訴訟全国支援ネットワークから連帯のあいさつが続いた。

 記者会見を終えた原告5人も合流し、勝利判決を実現するまでがんばる決意を表明し、次回期日への支援をよびかけた。京都訴訟控訴審の闘いは、熱気あふれる中、意気高くスタートした。

   *  *  *

 第2回期日は来年3月13日(水)午前11時開廷。原発賠償京都訴訟団(原告団・弁護団・支援する会)は引き続き傍聴支援を呼びかけている。



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