2019年01月04・11日 1558号

【見捨てられる原発事故被害者/支援打ち切りで苦しむ区域外避難者/国は住宅確保の責任を果たせ】

 原発事故避難者の生活再建にとって基本ともいえる安定した住宅の確保が、法制度の不作為によって個々人の努力に委ねられ、住宅支援の打ち切りが避難者をさらなる貧困、精神不安に追い込んでいる。

抽選で人生が

 避難指示区域外から都内に避難した母子家庭のAさんは、雇用促進住宅(2LDK)に入居した。福島県が間に入り、所有者にあたる厚生労働省と使用関係を結んだものだ。区域外避難者への住宅無償提供は2017年3月末で打ち切られたが、その際、月十数万円の家賃を払って雇用促進住宅に継続入居するか、福島県が提示した2年間の家賃補助を受けて民間賃貸住宅に引っ越すか、選択を迫られた。

 民間の家賃は2LDKで月約8万円。県から3万円の補助(2年目は2万円)を受けることにして引っ越した。月5万円の支出増となった家計を補うためパート時間を増やした。ところが、19年3月には民間家賃補助も打ち切られるため、さらに月2万円の負担増となる。Aさんは比較的家賃の低い近くの都営住宅に応募、抽選に当たり転居した。

 Aさんは怒る。「東京都は住宅無償提供が打ち切られる避難者向けに都営住宅300戸の優先入居を用意したが、当時私は応募できなかった。国家公務員宿舎や民間アパートの入居者は応募できたのに、『雇用促進住宅入居者は福島県の責任だから』と。私は選んで雇用促進住宅に入っていたのではない。とっくに都営に入れていたはずなのに、この2年間、引っ越し・子どもの転校と振り回されてきた」。周りには民間家賃補助が打ち切られたら一気に生活が困窮する家庭があり、心配だという。「私の場合たまたま当選して都営住宅に入居できたが、落ちた人はどうなるのだろう。避難者の人生が抽選に委ねられるなんて理不尽だ」

紋切り型対応

 都内の国家公務員宿舎に入居する区域外避難のBさんは、勤めていた会社が閉鎖され、転職を余儀なくされた。国家公務員宿舎は、入居時は東京都が間に入って内閣府と使用契約を交わし、打ち切り後は福島県が間に。2年間の継続入居(有償)が認められたものの、19年3月で終了する。

 Bさんは独身だが、中高年の定職探しは困難だった。精神的に変調をきたし、預金を切り崩して暮らしてきた。「民間アパートは10u、トイレだけのワンルームで築40年以上の木造でも都営住宅より家賃が高い。都営に入って何とか生活再建をと考えたが、応募資格がないと言われた。単身者は60歳以上か、障害者でないとだめ。そのことで精神面の病が悪化し、障害者手帳を取得した。それで応募資格もできた。皮肉なものだ」

 原発避難者の入居を想定していない公営住宅法の規則を紋切り型に適用し、世帯要件を理由に単身者を排除する例は多い。Bさんは都営住宅に応募したが3度落選し、現在も行き先が決まっていない。「このまま3月を迎えたら、どうなるのか。強制立ち退きさせられるのか」。不安を抱えたまま新年を迎える。

無策の責任とれ

 避難者十数万人、避難先も全国にまたがる福島原発事故災害では、仮設住宅(プレハブ)の建設が間に合わず、みなし仮設住宅として避難先の公営住宅や民間賃貸住宅が借り上げられ、割り当てられた。居住形態がさまざまであっても、避難者には等しく住宅の確保が保障されなければならない。ところが、無策のため、とりわけ現行制度の要件から外れる場合、避難者は「避難の権利」が奪われる事態となっている。

 渡辺博道復興大臣は国会で野党の追及を前に「相談拠点からの報告は聞いているが間接的なので、避難者から直接、話を聞きたい」と答えた(12/4)。加害者である国は法制度の無策の責任をきっちりとらなければならない。

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