2019年01月04・11日 1558号

【グローバル資本の戦争と新自由主義を阻む 2019 民衆の国際連帯で東アジアの平和へ 排外主義許さず安倍に引導わたす】

 世界中で民主主義勢力が前進し、グローバル資本の戦争と新自由主義政策を押しとどめてきた2018年。東アジアでは朝鮮半島の緊張緩和が進み、日本でも沖縄知事選の勝利が安倍政権を追い詰めた。1年を振り返り、2019年の闘いの展望について、MDS(民主主義的社会主義運動)佐藤和義委員長が語った。(12月14日、まとめは編集部)

世界で変革の兆し

 2018年は大きな変化の年だった。いうまでもなく、東アジア情勢の大転換だ。

 韓国民衆のろうそく革命を背景に、南北・米朝首脳会談が開かれ、現実に南北間の軍事緊張が解けつつあるところまできた。日本では、沖縄県知事選で安倍が敗北したことが非常に大きい。

 1%の利益のためのグローバル資本主義の路線、戦争と搾取の路線が否定されてきている。アメリカの下院選挙では、民主党の中の左派とされるDSA(Democratic Socialists of America アメリカ民主主義的社会主義者)やサンダース派が大躍進した。彼らは社会主義の展望を示し、トランプの差別路線に具体的に対抗している。公的医療保険の要求、大学の無償化といった主張がはっきりと受け入れられた。社会主義の展望に賛同する青年たちが増えつつある。欧州では、マクロン(フランス大統領)、メイ(イギリス首相)、メルケル(ドイツ首相)も敗北した。

 東アジア情勢の変化と沖縄知事選勝利、トランプ敗北と流れは明らかに変わってきた。グローバル資本がやりたい放題にできなくなりつつあるのが2018年の特徴だ。

安倍改憲案提示できず

 安倍政権はどうか。出入国管理法や水道法ででたらめな改悪をした。入管法は安価な労働力が欲しい、水道法は公共部門から利益を上げたいというグローバル資本の希望に応えるものだ。水道は人びとに絶対不可欠なもので市場が確保されているから、労せずして儲かる。水道の民営化では、小泉政権下で新自由主義政策を推し進めた竹中たちのように、グローバル資本の手先が政策立案の場に潜り込んで意のままの法案を出させた。

 しかし、安倍の最大のねらいであった改憲案の提示はできなかった。安倍にとっては大きな打撃だ。

 安倍は、臨時国会で論議する状況をつくり、次の国会での改憲案発議をもくろんでいた。ところが、そのスタートの改憲案提示ができなかった。明らかに沖縄県知事選のパンチが効いている。自・公・維新ら改憲勢力が総力を挙げ、創価学会は本土から5千人とも7千人ともいわれる会員を動員したが勝てなかった。それどころか、玉城デニー候補に投票する者が続出するという反乱まで起きた。もちろん創価学会・公明党は与党であり続けたいから、自民党から離れることはないだろう。だが、安倍の強硬な改憲路線に乗っていていいのかという疑問が出てきた。安倍のテンポで進められたら困る―そうした分岐が生まれている。

 安倍は5月3日憲法記念日に日本会議主催の集会にビデオメッセージを送り、自民党総裁選や臨時国会冒頭でも改憲を言い続けてきた。しかし、朝日新聞の調査でも70%が臨時国会での改憲案提示に反対。この世論の前に改憲案提示を断念せざるを得なかった。

立ちはだかった沖縄

 根底には、東アジア情勢の変化がある。安倍は加計・森友であれ、共謀罪や戦争法であれ、まともな答弁を一切せず強行突破してきた。それでも選挙では議席を確保した。小選挙区制という選挙制度上の問題があるにしても、自民党が「勝った」といえるような選挙結果になった。「あんなおかしな人がまだ辞めないのか」と市民に嫌気や失望感があり大量の棄権となったのも事実だろう。

 だが、沖縄は突破した。

 菅官房長官とその手下が現地入りし、中小企業まで片っ端から電話をかけ、投票や名簿提出を依頼し集票しようとしたが勝てなかった。自・公・維新が推した佐喜真候補は「国との関係が分断された」と翁長前知事を批判し、新基地建設への態度を明確にしないまま、「振興策」を並べ立てた。沖縄県民はこのカネと脅しを跳ね返した。

 辺野古、高江、南西諸島での闘いと運動の積み重ねの上に、オール沖縄は民主主義否定の新基地建設強行路線と闘った。選挙戦では、これまで沖縄の民主勢力のうち弱い≠ニ言われてきた青年層が立ち上がった。翁長前知事の遺志を継ぐ玉城知事を誕生させ安倍を敗北させた。

 やろうとしてできなかったことはほかにもある。

 安倍が成長戦略と位置づけた原発輸出は全部ストップしている。ベトナム、リトアニア、台湾は頓挫。三菱重工はトルコから撤退。日立もイギリス断念かと報じられている。武器輸出もできない。「経済が得意」と言うが、実質GDP(国内総生産)はこの四半期マイナスとなった。しかもかなりのマイナスだ。「異次元の金融緩和」で経済成長と言っていたが何一つできていない。株価も下落傾向だ。

 明らかに安倍は行き詰まっている。

 韓国ではろうそく革命が朴槿恵(パククネ)前大統領を追い落とし、文在寅(ムンジェイン)政権を登場させた。その政策を規定し、トランプの戦争挑発をやめさせた。

 同様に、この日本で沖縄での闘いが安倍の前に大きく立ちはだかっている。

米国でも欧州でも

 全世界の支配者たちが同じ状況だ。トランプは中間選挙で敗北し、州知事でもかなり失っている。彼が掲げてきた移民や女性への差別政策は全く否定された。女性議員が下院で100人になり、先住民の議員が生まれ、社会主義を掲げた候補が2人通った。トランプは強がりを言っているが、政策を実行しづらくなっている。

 ヨーロッパでは、EU帝国≠フ旗手とされたマクロンが極端な格差拡大政策をとろうとしたが、民衆からの反撃で一部撤回に追い込まれた。メルケルは地方選で大敗し党首退任を表明。メイも辞任を公言した。辞めなければ事が収まらなくなっている。これまで政権を支えてきた支配層のグループが民主主義勢力の前に次々と敗北している。

 アメリカの下院選挙では、社会主義的な変革の展望を語り、その上で具体的政策を掲げた候補が成功した。アメリカでは、共和党だけでなく民主党指導部もグローバル資本の代弁者だ。そうした政治環境で、変革の展望を示し、労働者の権利、社会保障、教育を切り捨てる資本の政策を根本的に解決することを訴えたのだ。イギリスでも同じように労働党が進出している。

 1%どころか、「0・1%」と言った方がいいかもしれないほど極端なグローバル資本の支配。その利潤獲得の衝動に対抗する力があちこちで出てきている。しかも、選挙に勝利したり、政策をストップさせたりしている。非常に大きな展望だ。

 日本で同じように安倍打倒を実現することはできる。

排外主義は支配層の手口

 闘いの力で追い詰めようとしたときに、資本家たちが持ち出してくるのが排外主義による分断だ。

 アメリカでも、フランス、ドイツ、イギリスでもそうだ。今1%のための政権にいる者は、自分たちの主張する政策が市民から支持されるとは全く思っていない。そんなことは無理だとわかっている。だから、ウソでもどんな手段を使っても、その場しのぎでいいからと、政策を強行する。

 安倍は12月14日、辺野古新基地建設工事で埋め立て土砂の投入を強行した。辺野古、高江、南西諸島での闘いの積み重ねと知事選敗北。安倍は「沖縄では勝てない」と思い知らされ、「沖縄は捨てざるを得ない」と県民の「合意」獲得を諦めたのではないか。だから強行した。それは自ら墓穴を掘るものだ。

 原発・武器輸出も経済政策もうまくいかない。いま、新基地建設断念、あるいは改憲断念と言ったら、安倍はつぶれてしまう。だからやめられない。こぎ続けなければ倒れる自転車操業だ。

 闘いの前に強硬手段しかなくなった時、市民の不満をそらすために敵を作り出し分断する。支配層はそれが一番有効な武器だと知っている。

 安倍は、韓国最高裁の元徴用工判決を排外主義に利用している。安倍が事実をねじ曲げ誤った主張をするのは勝手だが、メディアまでこぞって排外主義をあおっている。

 個人の請求権は日韓請求権協定でもなくなっていないことは日本政府も認めてきた。条約で個人の請求権まで失われないというのは、国際法上も当然のことだ。日本のメディアはそれらに一切触れず、「韓国政府が一方的に約束を破った。不法国家だ。国際司法裁判所に訴える」と繰り返す。安倍による情報統制が貫徹している。

 戸別訪問や街頭で署名運動をしていると、「安倍は嫌いだが、韓国も嫌いだ」という声を聞く。排外主義による分断は支配層の手口だ。

分断許さぬ国際連帯

 このやり口に対抗するのに必要なことは、日韓市民の連帯強化だ。

 ただ仲よくするというのではなく、ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)が取り組んだスピーキングツアーのように、日韓の闘う民衆の連帯だ。安倍政権や韓国の軍部・資本、アメリカ軍産複合体といった好戦勢力の緊張激化の策動に対抗し、東アジアの平和構築という共通の課題で連帯を作っていく。ろうそく革命を実現した韓国民衆と知事選で安倍を敗北させた沖縄民衆の闘いをつなぎ、韓国のソソンリや済州(チェジュ)の基地反対の闘いと、辺野古新基地や南西諸島自衛隊配備強化反対の闘いを結ぶことで排外主義を打ち破れる。

 確信をもって言う。

 「一強」と言われてきた安倍政権も、沖縄では勝てなかった。彼らは実は少数派だ。

 これから社会保障費カットなど生活破壊がどんどん進んでいく。後期高齢者医療の自己負担を引き上げる、介護費用や生活保護費を削る。予算規模は大した額ではないのにケチなことをする。そのくせ軍事費は無茶苦茶に増額し軍備拡張する。1機150憶円もするF35Bをさらに何十機も買う。1機分だけで生活保護削減分が賄える。安倍政権発足以降、年間軍事費は約5400億円も増えた。元に戻すだけで全国の学校給食無償化も可能だ。消費税増税で生活を圧迫する一方、「緩和策」として自動車税軽減などまたぞろ資本が喜ぶことをする。

地方選・参院選で引導を

 社会保障費切り下げ、消費税増税と大軍拡をセットで行うというでたらめな政策と闘っていく。それが次の地方選であり、参院選だ。選挙を通じて市民に働きかけることができる。アメリカの民主党左派の候補者たちは資金はなかったが、全戸戸別訪問で一軒一軒ドアをたたき政策を訴え支持を集めた。そうやって排外主義と闘い、トランプ政権と闘った。われわれもすぐにできる必要な運動だ。

 メディアがどれほど排外主義をあおろうが、一歩一歩働きかけを積み重ねることで東アジアの平和構築に向け地域から変革できる。地方選はそのチャンスだ。

 MDSも可能なところで候補者を立て勝利を目指す。参院選で権力は連合や国民民主党を使って野党共闘を分断してくるだろうが、共闘から脱落させず、市民の力で野党共闘を成立させ、その候補者のために闘う。

 基本目標は民主主義的社会主義の実現だ。その展望を持って具体的政策を掲げ、民衆の国際連帯で排外主義と闘えばグローバル資本に対抗して勝つことができる。世界を見れば、沖縄を見れば、歴史は変わりつつある。命運が尽きようとしている安倍に引導を渡すのが、次の地方選、参院選だ。

 2018年、トランプが負け、マクロンが負け、メイもメルケルも負け、安倍も負けた。こんな年は、今までになかった。2019年は彼らの敗北を確定させ、表舞台から追放する年としなければならない。

















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