2019年01月18日 1559号

【未来への責任(265)/新日鐵は企業行動規範を守れ】

 昨年10月30日に元徴用工被害者に対する韓国大法院判決が出されてから2か月余り経った。マスコミやネットは「嫌韓」ムードに溢れ、企業が太平洋戦争当時に行った強制労働の責任を問う声はかき消されている。安倍政権は判決翌日の10月31日から11月2日にかけて関係企業を集めて説明会を開催。そこで「絶対賠償に応じるな」「訴えられたら政府が訴訟費用を負担する」と言ったとも伝えられている。露骨な企業への締めつけである。

 一方、新日鐵住金は判決当日、「今後判決内容を精査し日本政府の対応状況等もふまえ適切に対応して参ります」とのコメントを発表した。しかし、判決後の対応が一向に示されないため11月12日、韓国から原告の代理人弁護士2人が「この事件の判決による損害賠償義務の履行方法」「賠償金の伝達式を含む被害者の権利回復のための後続措置」について協議を求める要請書を携えて東京・丸の内の新日鐵住金本社を訪れた。訪問日時は事前に伝えたが、なぜか常に担当者が不在。やむなく口頭とFAXで事前に日時を伝えた。

 判決が確定した以上その履行方法の協議に直接本社を訪れる代理人との話し合いを持つのは自然である。かりに要請を受けられないならその意思を事前に伝えるべきだが、連絡もなく当日になって拒否するのは社会常識を逸脱した態度と言わざるを得ない。当日は警備員に「コメント」を代読させ社員は顔を見せないという徹底ぶりである。

 12月5日に改めて申し入れた。12月24日までに判決に応じる意志がなければ、差し押さえの手続きに入ることを通告するものだった。それでも会社は自らの態度を表明しなかったことから、12月31日に債権保全のため差押申請書を韓国の裁判所に提出。同時に代理人弁護士は会社との交渉の余地を残しておくために「協議を通じて判決の履行、強制動員問題の円満な解決を望む。被害者の権利救済のため一日も早く協議に出ることを再度促す」とし「株式売却命令」は申請していないことも明らかにした。

 新日鐵住金は自らの「企業行動規範」を次のように定めている。「1.法令・規則を遵守し、高い倫理観をもって行動します」「8.各国・地域の法律を遵守し、各種の国際規範、文化、慣習等を尊重して事業を行います」。話し合いを求める原告らに自らの意思表示をすることもなく政府の陰に隠れてコソコソする姿に「高い倫理観」はない。「各国・地域の法律を遵守」する規範を守ろうとする意思のカケラすらも見いだせない。

 不誠実極まる新日鐵住金に対して、2月14日に院内集会、翌15日には東京総行動とリンクして新日鐵住金、三菱重工本社行動が計画されている(14時15分〜14時35分 新日鐵住金本社前)。大法院判決の日までに亡くなった3人の原告を偲んで唯一の原告生存者の李春植(イチュンシク)さんは「一人で判決を受けたことがとても辛くて悲しい」と語った。その言葉を胸に刻んで日本での企業・政府責任追及の行動を強めていきたい。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 中田光信)

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