2019年01月18日 1559号

【議会を変える市民と変える/東京都日野市議 有賀精一/湧水を乱開発から守る】

 読者の皆さんの町には湧水(ゆうすい)はありますか。

 日野市は湧水の宝庫です。多摩川と浅川が流れ、その周辺に河岸段丘が形成され、その崖線に沿った崖(はけ)から豊富な湧水が出ています。

 中でもとりわけ有名で「東京の名湧水57選」に指定されている黒川湧水群(東豊田緑地保全地域にあり、黒川清流公園となっている)で昨年7月、問題が起こりました。

 公園内の「わきみず池」周辺から白濁水が発生し、湧水群の一部が枯渇したのです。

 日野市・東京都・野村不動産3者による調査が行われ、9月初め、野村不動産のマンション建設のくい打ち工事現場で使われていた地盤安定化剤(ベントナイト)が白濁原因と判明しました。一部湧水枯渇の原因は不明で、市は継続調査としましたが、くい打ち工事の疑いが濃厚です。枯渇地点の湧水量は元に戻ったものの、湧水の水脈を傷つけたことは間違いありません。

 湧水汚染と破壊がなぜ起こってしまったのか。野村不動産と日野市の責任が厳しく問われなければなりません。

 9月議会で、市長自ら市の指導に問題があったことを謝罪し、年明け5日の市主催賀詞交歓会あいさつでも反省の弁がありました。

 私は過去5年間、ごみ処理広域化、三井不動産物流センター問題を通じて、市の姿勢を厳しく問うてきました。今回の湧水白濁・枯渇は大坪市政の根本姿勢に関わる問題であると思います。指導を怠り、企業による乱開発と自然破壊に手を貸しているのではないでしょうか。

 広大な多摩平のUR跡地にマンションを建てることに反対するつもりはありません。ただし、建設する以上、自然環境の悪化は絶対にあってはならないという毅然とした態度を貫き、企業を指導する、そんな日野市であってほしい。

 実は私自身、日野市の湧水については勉強不足でした。

 11月中旬、支援者の方に案内されて、黒川湧水群よりも水量が多いといわれる中央図書館下湧水群(これも「東京の名湧水57選」)とその先に連なる個人宅湧水を見学する機会を得ました。個人宅の敷地内にも許可を得て入れていただき、湧水利用の現場を拝見した次第です。湧水が地元の方たちに大事にされ、生活の中で活かされていることに感銘を受けました。

 マンション建設工事はストップしていますが、これからが重要です。「東京における自然の保護と回復に関する条例」に基づき、都内の貴重な自然環境として「保全地域」に指定されている黒川湧水群を保全し、乱開発への歯止めにしたいと思います。
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