2019年02月01日 1561号

【日韓青年が沖縄から学ぶ/過去・現在の戦争≠ニあすの平和(下)/社会を変える力はある】

 「日韓ユース参加団in沖縄」(1/10〜1/13)のプログラムは戦跡・基地などのフィールドワークとともにワークショップを通じて交流を深めるものだった。参加した10代〜30代の青年たちは、「平和ではない社会」を変革する共通の課題と連帯の力を確認し合った。

平和とは何か

 沖縄戦の歴史と辺野古新基地建設反対運動を学んだ2日目、夜の交流会は韓国側の企画・運営だ。「平和とは何か」。各自がポストイットに一言自分の答えを書き、模造紙に張り出し、意見交換する。

 「平和とは、周りが助け合えること」と書いた日本の青年は、二十歳の同僚がパワハラ、長時間労働の末、自死した事件を語った。「趣味の時間もなく、会話もない状況に追い込まれた。みんなが笑顔でいることが平和。小さなことが積み重なって平和ができると思う」。これを聞いた韓国の青年は「日常生活の中で一番平和をなくしていることは、労働者の搾取だと思う」と応じた。労働問題以外にも平和≠ナはない身の回りの現実に思いがいたる。

 「日本では政治に関心を持つ若者は多くない。政治を語れない、タブーがあった。韓国のろうそく革命には若い人の力が発揮された。どうしたらいいと思うか」。日本側から質問が出た。誰もが聞きたいことだった。

 「中学生の時、初めてデモに出た」と韓国の青年が語り始めた。「狂牛病輸入の問題を知ったから。輸入牛肉が給食に使われる。自分の生活とつながっていること、当事者であることがわかれば動かざるを得ない」と答えた。「狂牛病世代」と言うそうだ。別の韓国青年は「大統領打倒は勝利と言えるか」と切り出した。「大学では、タブーは変わっていない。今の学生はセウォル号犠牲者と同世代。友人が亡くなった罪悪感や責任感を感じている。こうした経験を今後の課題解決の力につなげることだ」

 政治の当事者であり、社会変革の担い手であることを青年たちが強く意識できる交流会だった。

練り上げた声明

 最終日、「平和をつくる日韓ユース共同声明」(骨子別掲)について討論した。学習・交流がベースとなり、原案への質問・意見が相次いだ。

 「日本の奨学金は学生ローンとなっているが、韓国ではどうか」「韓国では奨学金とは言わない。学費支援貸付金。問題は借金しなければならないほどの高額授業料にある」「朝鮮学校はそもそも制度の対象にもされていない」。そんな議論を経て文章は練りあがった。

 声明文は、「戦争がなくてもこの現実は本当に平和なのだろうか」と基地被害に苦しむ沖縄をとらえた。そして自分自身の問題に引き寄せた。「命と人権が脅かされ、平和でないのは私たち青年も同じだ」と続けている。行動方針も追加された。

 まとめた声明文を手に、記者会見に臨んだ。地元2紙の記者が来た。参加団と同世代だった。地元記者は「沖縄のイメージは変わったか」と質問した。韓国の青年は「一般的に沖縄はすばらしい観光地のイメージ。悲しい歴史は知らない。外国の沖縄ばかりでなく、済州(チェジュ)の歴史も知らない。知らせていかねばと思う」と応じた。

 「同世代の人に政治に関心を持ってもらうヒントはあったか」と本紙記者も聞いた。日本の青年は「変化を求めると(相手は)居心地の悪さを感じるだろう。だが、自分とのかかわりを考えてもらう以外ない」と答えた。韓国の青年は「政治の話をすると嫌な顔をされる。でも、話す以外ない」。働きかければ変化が生まれるとの確信と聞こえた。

 地元紙の記者は「自分の生まれ育った沖縄で歴史と現在をリンクして考えている。世界の未来を思う自分としても、大きな刺激を受けた」との感想をもった。

継承と発展を

 日韓青年の交流を促進した隠れたツールがあった。スマホの自動翻訳アプリだ。夜の交流会では、2〜3人のグループがあちこちで、スマホを前に「会話」をする光景があった。「言葉の壁」をたやすく超えていく。スマホは行動の連絡にも活用された。集合や出発時間の連絡はLINEで送られた。「青年文化」とでも呼びたくなる新たなコミュニケーションのあり様を感じた。

 そんな光景を目にしながら考えた。今回の企画の狙いである「次世代への継承」。闘いを受け継ぎ、広げるためにはどうするのか。青年たちは同世代の人びとに、政治の主人公としての、平和をつくる当事者としての役割を求めていくことを確認しあった。彼らが核となり、どんなコミュニケーション力を発揮し、どんな運動へと発展するのか。期待は高まる。(終)

平和をつくる日韓ユース共同声明(骨子)

 2019年は、大きく切り開かれた朝鮮半島、東アジアの平和への道を確立していく転換点の年だ。日本と韓国に住む私たちは沖縄に集った。沖縄戦の記憶と基地のある現実を直視し、「平和とは何か」の答えを見つけるためだ。

 沖縄戦が終わっても沖縄に平和は来なかった。平和は、戦争の悲惨さを記憶し伝えようとする人々と、基地はいらないと絶え間なく闘い続ける人々によってつくられているのだと学んだ。

 命と人権が脅かされ、平和でないのは私たち青年も同じだ。日韓青年は資本主義が生活の隅々まで支配した社会の中で、学び、考え、生きる力を奪われている。

 しかし、私たちの力は決して弱くない。私たちの想いと行動が社会に変化をつくり出しており、これからも闘い続けていくことで社会をより良い方向に変えることができると信じている。日韓の私たちが力を合わせて、戦争のない、貧困のない、差別のない、核・原発のない社会をつくっていこう。私たちの力で、東アジアの平和をつくろう!

行動方針

・9条改憲阻止、辺野古新基地建設中止、韓国星州(ソンジュ)ソソンリのTHAADミサイル配備撤回、チェジュ島新空軍基地建設反対。

・朝鮮戦争終結に向け各国政府に働きかけよう。

・チェジュ島カンジョン村での平和大行進に参加しよう。

・平和と民主主義を社会に貫くための青年要求を掲げよう。

・青年要求のために働く青年議員を各地で増やそう。

・7月27〜28日、2019ZENKOin東京に参加しよう

・5月3〜6日、日韓参加団inKOREAに参加しよう。

・包括的差別禁止法制定を実現させよう。

・全ての人に高等教育の無償化を実現しよう。



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